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今日は3月15日の日曜日、時刻は間もなく13時を過ぎようとしていた。


あの日の留守電の主、三浦との約束の日だ。恵は車に乗り込みナビシステムと格闘している。


今日の行き先は、初めて行く所なので車のナビ設定は必須。ルートが検索されここから目的地までに20分くらいと表示された。三浦との待ち合わせ時間は13時半、出発するには丁度いい時間だった。


恵は重い気持ちのまま家を出た。


たまに行くアウトレットのお店なら次の交差点を右に曲がるのに、今日のナビは真っすぐ北に向かうようにアナウンスが鳴った。

この先は住宅街を抜けて山沿いに向かうルートで、道幅も少し狭くなるらしい。

 

連絡があったあの日から三浦から聞いた彼の病状を思い出しては……


"何かの間違いで、勘違いであってほしい"


と何度も願い迎えてしまった今日。


恵は待ち合わせ場所に三浦がいない事を願いながら目的地に向かっていた。


国道から商業施設とは反対の住宅街を抜けて向かうルートが示されている。国道にも県道にも看板があり、大体の位置的な感覚はあったが詳しくは知らない。


日曜日のお昼過ぎでも大きな渋滞も何も問題もなくスムーズにナビの指示が続く。恵はその指示を間違うことなく冷静に運転をしているように見える。が、内心は落ち着かず手汗がひどい。


恵が向かっている、三浦に指定された病院は、誰でもどんな症状でも通える所では無い。


県内外でも有名な病院で、受診するには医師からの紹介状と事前に受診予約する事が必要になる。特定の病名の方々のみが利用出来る特別な施設。


県立がんセンター


幸いな事に、恵の身内はまだお世話になった事が無い病院だった。


住宅がまばらになって来た頃、最終的な看板が恵にも見えナビも所要時間を告げ終了した。


看板に書かれている矢印の指示に従い、病院の敷地内へと進む。木々の間を緩やかに蛇行している坂道を上がっていく。


まだ木の影になっている所や除雪した雪を集めた名残の所には、溶けていない雪が少し残ってはいたが、途中すれ違う車も何も走行に問題もなく坂道を登り切った。


病棟と駐車場へと分かれている案内を確認し、駐車場への矢印の方へ進むと、木々は無くなり視界が広がる。そのスペースには日曜日だからなのか数台しか止まってはいなかった。


前回の電話で指定された場所を思い出しながら辺りを見回す。


「時計が設置してある花壇……」


その近くに約束の主、三浦が待っている。車は紫のミニバンとも呼ばれる7人乗りの国産ファミリーカー。


(花壇……時計……紫……)


条件を復唱しながらゆっくりと進む。

数台の車と少し離れている所にそれらしき場所と車があった。


そのままゆっくり近付くと、運転席の後ろのスライドドアを開けたままスマホをいじっている人が見えた。片足が無造作に投げ出されていて、恵の車の音に顔を上げた三浦が、いた。


事前に恵の車の特徴を伝えていた為すぐに気が付いて、身軽に車外に出ると大きく手を振ってくれた。


(あっ。三浦君だ……)


恵も車内から手を振り替えし、1つスペースを開けて車を停める。

三浦は恵が降りる前に、運転席の側まで来てニコニコしている。


恵は窓越しに見える三浦と無事に合流出来たのは良かったが、なんだか複雑な気分だった。


久しぶりに再会した電話の主、三浦学は高校卒業以来あまり変わっていないように見え、雰囲気は当時のままで懐かしくて嬉しかった。まだ大学3年生の三浦は、同級生なのに学生というフィルターがあってか若く見えて羨ましかった。


「ご無沙汰してます」


恵は開口一番、社会人として笑顔で挨拶をしてみせると、三浦は戸惑いながらも……


「お~……お疲れ様です…? 」


と、挨拶をしてくれて何故に疑問系になったのか可笑しくて二人してクスクス笑ってしまった。


その後は、久しぶりなんて感じないくらいに普通に話せた。この気さくな感じで部活の時でもムードメーカーだった事を思い出す。



三浦が腕時計で時間を確認した。


そろそろ移動するのかと恵も思っていると……


「部長……今日は、ありがとう。電話で話した通りアイツは余命を宣告されている。それを知っても、こうやって一緒にお見舞いに付き合ってくれて本当に感謝してる。……行こう、か。」


そのまま歩き出しそうな三浦に……


「わ、私さ……会っても、良いのかな? 」


ここまで来て今さらだと思ったが、さっきまでずっと悩んでいた事だった。


(彼とは一時的に仲は良かった。一時的に……)


三浦は驚いていたがニカッと笑って……


「俺には……部長しか会わせたいと思うヤツ浮かばない。部長には申し訳ないとは思ったけど……だから大丈夫」


突然、三浦から改まって感謝と謝罪を告げられた。けれど恵は、戸惑うしかなかった。



(余命……あの日……決定的な行動をしたのは私だ……部長だった私の方が責任はある……。 

それに、私は……避けられてたはず……彼は私に会いたいの? )



恵は今から向かう病院を見上げた。


小高い丘の上にある県立がんセンター。建物は5階建ての白が基調で出来ていた。病院の回りは、裏手は山になっていて木々がまだ寒そうに見える。広い駐車場では、数台ごとに仕切る役割をもつ花壇がキレイに整備されていて、葉牡丹が規則正しく並んでいるのが奥まで見渡せた。正面玄関からタクシー乗り場までに屋根やベンチが設営されていたが、休日だからか待機している車も待っている人もいなかった。


「さぁ~行こうか。こっちから入れるから……」


三浦が今から向かう方向を親指で示した。


彼に面会する為には、通常使用する一般の入り口は開いていない。それとは別の休日用の出入口で受付が必要だからと三浦の案内で歩き出す。






ありがとうございました。

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