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あの日は……


始業式とホームルームに授業が少し入っていて、期末テスト後と数日の秋休み明けで、少しリフレッシュも出来たお陰もあって、気持ちも軽かったはずだった。


放課後、武道館に集まった部員たちと秋から冬にかけての大会の話しや、11月の昇段審査へ向けて楽しく話しをしていた。


目前に迫っている昇段審査には学科と実技、形がある。高校生が受けられる段は決まっていて、日々の稽古でそれなりに頑張っていれば合格できる範囲だ。


実技は数秒間で試合をする形式だが、基本が出来ていて受験する段に相当する剣道が出来ているかが重要視され、試合の勝敗は関係ない。学科はネットでも調べれば出てくるので、事前の対策は取れる。


剣道形は1級と初段で大きく異なる。段が上がるほど1本目から7本目と形の数は増えるが、基本的には3段の人も7段の人も一緒に練習が可能なのだ。


通常の稽古後に形の練習をするようになるので、この時期の放課後は慌ただしい。


新人戦、交流試合、年明けすぐには勝ち抜き戦の大会もある。

試合会場によっては泊まりになる可能性もある。


明日からの部活は、とりあえず通常通りの活動になるが、少しずつ稽古の内容が変わっていく事を部員一同で把握していく。この日は始業式という事もあり、稽古はないので顧問のいない和やかなミーティングといったところだった。


他愛もない話しをしていたそんな中、久しぶりに武道館に顔を出した彼に注目が集まり嫌な雰囲気になった。


それを感じなかったのか、陽気に武道館に入ってくるなり悪びれることもなく……


「お~みんな~久しぶり~元気だったか?」


なんて、よく言える。


恵たちはすぐに返事が出来なかった。

恵も他の部員たちも呆然とした。


さんざん勝手に休んで、何いってんの?と怒りさえあった。


血を吐きそうな辛い稽古を乗り越えてきた部員には、あの陽気な態度はシラケた。


他の部員の手前もあり部長の恵が彼の前に出て強めに、彼が靴を脱ぎ剣道場に入る前に制止させ……


「……ねぇ。 自分が何したのか分かってんの?経験者だし少しぐらい稽古をサボってバイトをしてたって、私たちには負けないと思ってるだろうけど……

私たちだって、それなりに時間つくってヤりたい事とか遊びたい事とか我慢してるんだよ!? 」


今まで、まともに会えなくて話せなくて……頼りたいのに力になって欲しいのに……一緒にいて欲しかった気持ちが怒りへ向いてしまっていた。


一方的に恵だけが、正論で捲し立てた。

内容事態は間違ってはいない。


裏切られたような悲しさだけが溢れてきた。


少しの沈黙の後、彼はそのまま何も言わず武道館を出ていってしまった。


あの時は、それまで仲良かったし何とかなるだろうと安易に思っていた。

どこかで話せるだろうと……


けど、次の日からまた彼とは会わなくなってしまった……

だからって恵から連絡もしずらい……



彼との問題も解決できないまま、相変わらず顧問との方も歩み寄ることが出来なかった。


その後も齋藤先生とは幾度となく話し合いが行われたが、稽古の激しさは変わらなかったし、試合で結果を出せる人も居なかった。

団体戦は決勝リーグには上がれないし、個人戦も2回戦敗退がいいところだった。稽古が足りないと思っているのか、本当に先生が何を考えているのか分からなかった。



なんか、もう……どうでも良かった。

生徒と先生との間を取り持つのも、彼の事も……


だから……何か……疲れた……




……恵は先生に抗うのを辞めた。




ありがとうございました。

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