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22 過去へ



おじいさんの所で受け取った、箱の中に入っていた紙に書かれていたのは……


"あなたが過去に戻りたいと願った日"


恵には身に覚えもなにも最近まで封印していた、あの後悔した日で、恵が高校2年生の2学期始業式の日付だった。


「ん……私、卒業生だけど……このまま入ったら不審者になるよね? 先生たちの車もあるし~誰か知っている先生残ってないかな? 」


恵は、しばらく正門の外で中の様子を伺いながらウロウロしていた。過去に戻されているらしいが、あまり実感できていない。


ただ、あからさまにおじいさんの所の室内から、母校の正門に移動させられているのには理解できた。出来たが……


恵の母校の大河原高校は、男女共学で1クラス40人。学年ごとに7クラスに分かれていて、部活動も盛んな学校だった。

恵のいる正門から校舎までの間に、来賓や先生方が停める駐車場や植木、花壇があり誰かわからないメガネのおじさんの銅像もいる。

正門から目の前の校舎には正面玄関口が見え、そのもっと右側が生徒の昇降口だった。昇降口からさらに奥にいくと駐輪場がある。

生徒の昇降口から短い渡り廊下を通ると、木造の2階建ての建物があり、茶道部や家庭部などの文化部の為の和室と部室がある。その建物の1階には購買と食堂、自動販売機が数台あり、お昼は生徒たちで賑やかだった。


「母校なんて卒業以来だし……久しぶりすぎる……」


正門から左側がをのぞけばプールと更衣室が見え、その奥には見えないがテニスのコートが4面ある。


恵は正門の右の門柱に隠れるように、キョロキョロとブツブツ呟いていた。


「ねぇ、行かないの? 」

「ひゃっ! 」


突然に声をかけられ、変な声とあからさまにビクッと肩が上下したが、すぐに声の主に振り返ることが出来ない。


(私~やっぱり怒られるかも……)


恵は覚悟を決め、声のした方へ恐る恐る振り返ると……


(えっ? んっ? 私に話しかけたのって……龍!? てか言葉話してるの? しかも浮いてるし~ )


その声の主をマジマジと見つめていた恵は、目の前の光景を処理するのに必死だ。龍の他に人影は無い。キャパオーバー気味の恵は心の声がもれ……


「わ~龍って初めて見た!本当に浮いてるんだ~すごーい!! 」


プカプカと浮かぶその龍は2メートルくらいで、両手には鋭そうな爪が見えたが、見た目にもわかる白くモフモフな感じが、ネコ好きの恵には怖いという感じより可愛くみえていた。


「……その時計……見てごらんよ……」


龍はジト目で恵の胸元を指差してきた。

はっとした恵は首から下げていた懐中時計を手に取り、確認するかのように龍へ見せた。


「えっ? これ? さっき、おじいさんからお借りしたの。お守りだからって」

「だから~それの裏見てみて! 」

「は、はい」


恵がお借りした懐中時計は、先程と同じようにスズランが刻印されていて、所々キラキラ輝いていた。恵が言われたとおり裏を確認すると……


「あっ。いた、いました」

「はぁ……僕はリューズ。君の案内人というか、サポートする為に……?……あっそうそう! 君も浮いてるし~ちなみに周りの人からは見えてないから。てか、まだ行かないの? 」


懐中時計の龍は、いかにも厳つい龍が彫刻されている。掛け軸やアニメでよく登場するような。長い体が絡まらないように器用に空を多い尽くす感じの、あの龍だ。しかし目の前のモフモフ感のある龍とは違う。


(是非モフモフしたい……モフモフ……)


恵は両手で懐中時計を胸元で握りしめキラキラとした目で龍を見ていた。


「……ハァー。場所移動しないと時間に遅れるけど!? 」


恵は、龍の盛大なため息でまじまじと観すぎたと反省した。

そして時間があることを忘れていた恵は、慌てて腕時計を確認する。


(あっ、しまった! 私の時計壊れてたんだ! )


「今って、何時か分かりますか? 」

「何時って君さ~マスターから時計借りてるよね? 」

「あっ……そうでした」


呆れながらもリューズと名乗るその龍は、プカプカと恵の周りを浮遊している。同行者というか、補佐的にお手伝いをしてくれるというリューズに頷き、懐中時計を開き時間を確認する。


時計は15時を少し過ぎた時刻をさしていた。予定の時間までは約1時間の余裕があった。


恵の時計もあったが、いつの間にか止まっていて今は動いていない。

朝早くから行動し歩き回っている時には、お昼を知らせるチャイムは聞こえなかった。あの時はまだ午前中だったのは間違いない。しかし、時計台が見えて歩いておじいさんと話してから今までに、どのくらいの時間が経過したのか検討が付かなかった。


「良かった~まだ時間あった……焦った。でも武道館に行かなきゃね。えっと……リューズさんも……行きますよね? 」

「もちろん、僕は君をサポートする為にいるからね」

「あの……リューズさん。 私……」

「リューズでいいし、敬語も無しで」

「あっ、はい。ありがとう……えっと、私は加藤恵です。今日は、宜しくお願いします」



ありがとうございました

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