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会場のアナウンスが鳴り恵たち参列者は、彼の菩提寺の住職さまを合掌と共にお迎えした。


恵たちが座っている横を、高いキレイな【おりん】の音色と共に、お線香の匂いが続いた。


恵は合掌をとくアナウンスと共に、正面のご住職さまたちを見守る。


年配のご住職様が正面に座り、若い副住職様がお線香やお焼香などの補佐的な動きをし、祭壇の向かって左側の席についた。


式は滞りなく進み、ご住職さまが彼の戒名のご説明をされている。

そして……



「お若い方の、この様な場では少々説法をしておりましたので……少しお耳を拝借します。」


と、ご丁寧に頭を深々と下げられた。

それに沿って副住職とご遺族の方々も頭を下げていた。


「彼のように若くして亡くなられるのは痛ましいです。今宵の通夜というのは【故人の冥福を祈り別れを惜しむ時】となっております。


そして、どの様な時でもお経を読むと言うことは、亡くなられた方に向かい【私たちの事は心配いらないよ】と伝えること。


そして、【故人がお集まりの方々の幸せを願っている】という一説があります。


我々は生きている時に、本当の幸せになる道を無意識に選んでおります。その道が蛇の道でも必要な道なのです。


神や仏の教えも幸せになる為の言葉を残しております。


この後、最後のお焼香をなされると思います。彼の冥福を祈りながら、御身ずからも幸せになるから安心せよ。という気持ちで行ってください。」



ご住職さまの合図でアナウンスがなり、恵たちは合掌と共にお見送りをした。


(私が……幸せになる? いいの? )


恵は合掌をとくアナウンスがなるまで、和尚様の言葉を思い出し、理解しようとしていた。


(彼に、安心してもらう……か……)


その後、喪主のお父さんが式最後の挨拶で、参列した皆さんに向けて生前のお礼を話された。そんな姿に会場内が涙で溢れた。


「……明日……荼毘に付し姿も無くなる息子ですが、どうか……皆々様の思い出の一時にでも加えて頂けたら……図々しいと……健に怒られそうですが……彼が存在していた事をたまに思い出してあげてください。


そして……彼が迎えられなかった明日を……大事に生きてください。


……健が出来なかった……これからの楽しいこと辛いことを精一杯……楽しんで挑んでください。


……今日は……息子……健の為に足を運んで頂きありがとうございました。」


会場のあちらこちらですすり泣く声が聞こえる……


『まだ、若いのにね……』とか『明くん……健くんと仲良かったし辛いでしょうね……』などと。


会館のアナウンスが式の終わりを告げスタッフに促されご遺族、親戚の方々と前の方からお焼香をあげていた。

 

お焼香が終わり、彼のご家族にお見送りをされ会館を出ていた数人の同級生たちが、帰らず話をしているのが見えた。


恵がいた席は後方だった為、お焼香は最後の方に案内された。少し時間があったので、涙もなんとか落ち着けた。

係の方の指示で、3ヶ所あるうちの比較的空いている1つに案内された。その列に続きお焼香と『健くん、ありがとう頑張るね』と想いを込めた。


お焼香後そのまま彼のお兄さん、ご両親と挨拶をし帰ろうとした時、彼のお母さんから呼び止められた。


「恵ちゃん……コレ……貰ってあげて……。あの子の……ごめん、ごめんなさいね。……健もあなたに……持っていてほしいと思うから……」


彼のお母さんが手にしていたのは、剣道の鍔だった。それは、間違いなく高校時代に彼が使っていたツバで……


「……コレは……たしかお兄さんから頂いたって言ってて……」


ツバを前にして、手を出すことが出来なかった。


(私に頂く権利があるのだろうか……)


ツバを見つめていたまま固まって悩んでいると……彼のお父さんもお兄さんも『是非に……』とおっしゃって頂いて……


「……ありがとうございます」


と大事に譲り受けて会館を後にした。


外には大内先輩や水戸先輩をはじめ、当時の剣道部のメンバーが集まっていた。先輩方に供花のお礼を含めご挨拶や近辺報告をして別れた。


その後数名のクラスメイトが声をかけてくれた。今だに地区の違う実家にいる恵は、当然みんなと会う機会が少なくソコは仕方ないとしても……卒業後まったく集まりに参加しない付き合いが悪いと怒られた。


最近まで無意識に記憶を封印していたのだから仕方ない。






今日は特別な日なので……

連投できるように頑張ります。


いつも読んで頂きありがとうございます。

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