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12 別れ


彼との最後のお別れの日……



日曜日の18時から始まる通夜に参列する為に恵は家を出る。

初めて行く場所だったが、会館が県道沿いにあるのでナビ設定は不要だった。

冠婚葬祭をキャッチフレーズにした会館は、看板もテレビCMも有名で1度も利用した事が無くても、口ずさめるくらい耳覚えしている。


母親に見繕ってもらった喪服を着て、ジャケットは鞄と助席に置いた。どうしても肩の感じが慣れなくて運転が不安だったからだ。


程なくして着いた敷地に車を停め、ジャケットを羽織り入口を目指して歩いた。彼の地元の会館には、すでにたくさんの人が集まっていた。

年配の人は彼の親戚や、近所の人なのかな?と想像できるが、

歳が近そうな人はきっと彼の友人たちで、恵のように平日の告別式に参列が厳しく通夜のみ参加する人たちなのだろうと想像した。なんとなく見知った顔もいたが、名前とかまでは思い出せなかった。


会場に近づくにつれて足が前に進みづらくなった。


(あの階段を上がると入れる……のか……)


恵は低い2段の階段を上がり入口の自動ドアが開く。右手に受付があり左側にはソファーや自販機が見える。正面の入口の扉の所には、彼のお父さんが会葬者の方と話しているのが見えた。


恵は入口から受付の列に並び順番を待った。もちろん【一般】と案内されている方の列に。


恵は並びながらも、前の人たちの動きを見ていた。両親から説明をされていても、初めては中々ハードルが高い。


カウンターにノートとペンが数種類置いてあった。


(ペンはどれを使っても良かったはず……)


受付の方にお悔やみを伝えながら香典袋を渡し、ノートに名前と住所の記入後に返礼品を受け取る。


(本当にみんな同じ流れ……)


恵の前の人が終わり、真新しいふくさを持ち一歩前に進む、カウンターに3名の年配方々の中に彼のお兄さんの姿が見えた。


「この度は、ご愁傷さまでした……」


ふくさから香典袋を出し、受付の方に両手で渡す。


「本日は、お忙しい中お越しいただきまして、ありがとうございます」


受付の方に『こちらに』とノートに目を移すと、先程までいた方の住所や氏名が記載されていた。恵も同じように下の空白の欄にペンで記入する。


恵が記入を終え頭を上げると彼のお兄さんが手で【こっち】と指をさして合図をしてくれた。


慌てて受付の方に会釈をして、彼のお兄さんの示した方に歩く。


お兄さんは、受付をしていた他の方々に声をかけ、返礼品を1つ持つと恵と合流した。わざわざ受付を抜けてまで丁寧に挨拶をしに来てくれた。


「今日は、ありがとう。こっち……」


そのまま一緒に祭壇まで付き添い、恵がお焼香を済ませるとご両親の所まで案内してくれた。恵との挨拶をした後は、喪主のお父さんとお兄さんは所定の位置に戻ってしまったが、お母さんがそのまま恵と話を続けてくれた。


彼のお母さんから『あの子の顔見た? 見れる? 』と聞かれ対面をさせて頂いた。

白い棺の中の彼は、入院中と同じように穏やかに眠っているようだった。ビニール越しの彼は酸素マスクや点滴が無いだけで不思議と怖くはなかった。


(……本当に眠っているだけ、みたい……)


彼のお母さんは、棺の扉を丁寧にしめ祭壇の慰霊の写真を見つめた。その写真は成人式の時に、ご自宅の玄関先で撮ったモノだと教えて頂いた。

地区が違かった恵は、初めて彼のスーツ姿を見た。紺のジャケットに紫のストライプ柄のネクタイをしていてカッコよかった。


(……まだこの頃は元気そうにみえるなぁ……)


「スーツ姿の健くんを初めてみました」


と彼のお母さんに伝えると、恵が地区が違うことを知らなかったらしく驚かれた。


「……じゃ、こっちこっち」


と促され彼のお母さんの後について行く。会場の入り口側に彼の生前の思い出の品々がたくさんあった。剣道用具一式やアルバムがありその中で慰霊の写真の全身版を見せて頂いた。

写真の中の彼は、たくさんの友達と肩を組んで楽しそうだった。


(一緒にいたかったな……)


なんて、勝手な事を思ってしまった。


(そんな権利ないのに……)


その後、彼のお母さんと別れ一般席に案内された。そこには、すでに三浦と他の部活のメンバーが揃っていた。そこで部員とも久しぶりの再会となった。


部員の皆と席に座り会場を見渡す。祭壇の回りには沢山のお花や果物などがあり、その一つに目が止まった。


【大河原高校 剣道部OB一同】


三浦に確認すると、どうやら大内先輩たちが代表して供花を準備してくれていたらしい。


(本来なら、私たちがしないといけなかったのでは……)


会場を見渡すと1つ上の学年だった水戸先輩と目が合って……小さく手を振って頂いたので、恵は手を上げてペコリと頭を下げた。先輩たちとも久しぶりに会ったが、席を立つのはためらった。


そうして式が始まるまで、一向に落ち着かず時間だけが過ぎていった。会場のモニターでは生前の彼の写真が写し出されていた。そのスライドに目が離せなかった。


恵の知らない幼少時代から成人式までの写真で、スポーツ少年剣道クラブの頃の写真には、彼のお兄さんと2人で撮ったものや三浦や大内先輩が写っているものもあった。そして、恵も写っていたあの集合写真も映し出された。


最後の方に元気そうな闘病中の写真も何枚かあった。顔色は、あまり良くはないが、懐かしい彼の笑顔の数々に目を奪われた。


何枚もの写真が繰り返し写し出されているモニターと祭壇を見て、もう彼はいないんだと実感させられた。



修正をしてたら遅くなりました。

すみません。


ありがとうございました。

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