9 星見ヶ丘へ
翌日の夜、パパはまるでキャンプにいくみたいにうきうきして、車にいろいろなものをつみこんでいた。
おりたためるイスや、望遠鏡。あたたかいブランケットに、ランタン。おりたたみのテーブルやテントまでつみこもうとしてママにあきれられていた。
ママはあたたかいハーブティーをいれた水筒をみっつ、用意してくれた。
あとはふかふかのダウンジャケットに毛糸のぼうしと耳あて、マフラーにてぶくろをきせられた。セナはまるでだるまさんのように、まんまるになった。車のなかではあついくらいだ。
「だめよ。それくらいしなきゃ、かぜをひいちゃうわ」
ママとパパもおなじようなかっこうで、まるでだるまさんの親子のようだった。
モカもあたたかいふくをきせられていた。三太はもともとあたたかそうな赤いふくをきていてだいふくもちのようにまるかった。
やくそくどおり、夜の十時に車で星見ヶ丘へ向かって出発した。
車で十五分くらいのぼったところに、ひらけた公園のようなところがあった。
ドライブで昼間にとおりかかったことはあるが、夜にくるのはセナははじめてだった。
駐車場もあって、トイレもある。
「夜景がきれいなところなのよ」
ママがいうとおり、車をおりてみると、下のほうにきらきらとしたまちのあかりが見えて、とてもきれいだった。
見上げると、たしかに広い空に星がきらめいて見えた。
「ふたご座流星群の極大はもうすぎたけど、二十日くらいまではながれぼしがながれやすいんだ。ひとつくらいは見つかるんじゃないかな?」
パパはいそいそと望遠鏡を準備しながらそういった。
「極大」というのは、いちばんながれぼしがよく見える日のことだそうだ。
三太はどうやらその日におちてきてしまったらしい。
パパが星がすきだなんて、セナははじめてしった。
おしいれに望遠鏡が入っていることさえしらなかった。
おりたたみのイスをみっつならべて、ブランケットにくるまり、三人と三太とモカと夜空を見上げた。ブランケットのなかに三太をだきしめていると、ゆたんぽのようにぽかぽかとあたたかい。三太はブランケットからあたまだけだして、いっしょに空を見上げた。
ママのつくってくれたハーブティーをときどきのみながらさがしたが、なかなかほしはながれない。
しまいにはセナはうとうとしてきてしまった。
「セナ、車でねてるかい?」
パパにそういわれだが、「ううん」とセナはくびをふって、いっしょうけんめいながれぼしをさがした。半分、うとうとしながら。
セナがつぎにはっとしてめざめたのは、ゆれる車のなかだった。
ブランケットをかけられて、後部ざせきにねかされている。あしもとにはモカがねていて、セナといっしょに三太もすうすうねていた。
「パパ?」
「ああ、おきた? セナ」
「ながれぼしは?」
「残念ながら、今日はだめだね。また明日こよう。セナ、ねてていいよ」
「うん……」
かなしいきもちで、セナはねむりにおちる。
(三太、ごめんね……。ぜったい、明日はみつけてあげるからね……)