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星からおちたこども  作者: あるぱかぱかす
4/13

4 いたずらサンタ

 学校にいっているあいだも、セナは三太のことが気になって、ずっとそわそわしていた。

 給食はだいすきなプリンがでたけれど、よくあじがわからなかった。


(そういえば、三太はおなかがすいていないかしら)


 朝ごはんも昼ごはんもぬきになってしまう。

 そうすると、もう気になってしかたがなかった。


染夜そめやさん。どうしましたか? ぐあいがわるい?」


 あまり給食を食べられなかったセナに、早川先生は心配そうにそういった。


「午前中もうわのそらでしたね。だいじょうですか? 熱はない?」

「は、はい。だいじょうぶです」


 午後もずうっと三太のことをかんがえていた。

 おわりのチャイムがなると、セナはいちもくさんに家に帰った。


 パパとママはおしごとにいっている。

 二年生までは学童がくどうというところで、ママがおしごとをおえるまでみんなでまっていたが、三年生は「くじ引きでまけたわ」とママがいって、学童にもいけなくなった。学童にいきたいこどもがおおくて、三年生はくじ引きになったのだそうだ。

 だから、セナは家のカギをいつもくびからさげていて、学校がおわったら、ひとりで先に家に帰るようになった。


 モカとあそんだり、本をよんだりしていればだいじょうぶだったけど、すこしだけさみしいな、と思うときもあった。


 ただ、今日ばかりは、早く帰れてよかったと思う。


「ただいまー」


 玄関のカギをあけて、家に入って、すぐに二階へいく。


 部屋をあけて、いちばんにベッドを見ると、ふとんがめくられ、くまさんのぬいぐるみがかなしそうにゆかにたおれている。


「三太?」


 こえをかけても、そこに三太はいなかった。


(ど、どうしよう。ママに見つかっちゃったのかな? それで、すてられちゃったのかな?)


 セナはおろおろとして、とりあえず家じゅう、さがしてみることにした。


 まずは、二階のすべての部屋のドアをあけてみたけれど、三太はいない。

 つぎにかいだんをおりて、リビングへ。

 そこで、セナはあぜんとして足をとめた。


「さ、三太……」

「おかえりー」


 そこにはテレビをつけて、ソファーにモカとすわる三太がいた。

 おおきなアイスのボックスをかかえ、スプーンでちょくせつ食べている。


「な、なにしてるの?」

「おいしいね、これ」


 かおじゅうベトベトにして、バニラアイスクリームを食べながら、三太はにっこりわらった。


 セナは力がぬけてしまい、へなへなとそのばにすわりこむ。

 三太はきょとん、としたまるい目でセナをふしぎそうに見た。


「どうしたの?」

「だ、だって、これ……」


 リビングはひどいありさまだった。

 観葉植物かんようしょくぶつはたおれ、はちうえの土がこぼれてしまっているし、おいてあったしんぶんやざっしがビリビリのじょうたいで、テーブルの上やゆかの上にちらばっている。

 あちこちに土によごれたあしあとがついていて、それはろうかまでつづいていた。その先にあるトイレのドアはひらいていて、トイレットペーパーがいっこまるまるひきだされている。

 どういうわけかトイレットペーパーでぐるぐるになった三太はたのしそうにアイスクリームであちこちをべたべたにしていた。


「それ、パパのだいこうぶつで、かってに食べるとおこられるのに……」


 セナのパパはアイスクリームがだいすきだった。

 冬でもおおきなボックスに入ったバニラアイスクリームを冷凍庫れいとうこにいれていて、少しずつ、おふろあがりに食べるのを楽しみにしているのだ。


 三太からとりあげると、はんぶんくらいなくなってしまっていた。

 セナは、ぴょんぴょんととびはねてバニラアイスクリームに手をのばしてくる三太をかわし、おちていたふたをさがしてしめて、冷凍庫れいとうこにもどした。


 まるできげんのわるいモカがあばれまわったあとのようだった。

 ママが帰ってくるまでに、かたづけないといけない、とセナはトイレットペーパーを回収かいしゅうし、ぞうきんであちこちふきだした。


「どうしよう。まにあうかな」


 いっしょうけんめいそうじをするが、そのあとを三太がよごれた足で走りまわるので、ぜんぜんきれいにならない。


「さ、三太! ちょっと、じっとして!」


 やっとそれに気づいて、三太の足をまずふく。

 モカがもういっぴき、ふえたみたいだ、とセナはためいきをついた。

 モカよりもききわけがなくて、モカよりもひどくあばれてしまう。

 いそいでそうじしていたが、とちゅうでママが帰ってきてしまった。


「ただいまー。あら。これはどういうこと?」

「ま、ママ……! あの、これは」

「また、モカね! だめじゃない、モカ!」


 ママはモカをだきあげて、「めっ!」とおこっている。

 モカはわるくないのにおこられて、ふまんそうな顔をしている。


(ご、ごめんね、モカ!)


 しかし、ママは三太にはなにもいわない。

 すぐあしもとに三太がいるのに。まるで見えないみたいだった。


(あれ……? ママ、三太、見えないの?)


「ママ……、あの、あしもと……」

「え? あしもと? あら、いやだ、なにこのあしあと。いやね、どろだらけじゃない!」


 くるん、とママの足のうしろにまわった三太を、やはり見えていないようだ。

 ママはモカをだきながら、ふしぎそうにする。


「どうしたのかしらね? たしかに朝、ケージに入れたと思うのだけど。ドアがゆるんでたのかしら?」

「ママ……?」

「うん? セナ、そうじしてくれてたのね、ありがとう。宿題はやったの?」

「う、ううん、まだ……」

「じゃあ、あとはママがやるから先に宿題やってしまいなさい。おやつは食べた?」

「ううん、まだ」

「じゃあ、戸棚とだなにクッキーがあるからそれを食べていていいわよ。ママ、ここをかたづけてからお夕飯をつくるから少しおそくなるけど」

「うん、だいじょうぶ。ありがとう、ママ」


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