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星からおちたこども  作者: あるぱかぱかす
3/13

3 わかりにくいことはかじょう書きにしてみましょう

 朝食を食べたあと、部屋にもどるとリュックサックがごそごそうごいていた。

 口をとじてしまっていたので、なかのこどもがでたくてあばれているのだ。

 セナはあわててかけよって、そっとリュックサックの口をあける。


 すると、なかからぴょこり、と赤いぼうしをかぶったあたまがとびでてきた。


「とじこめるなんて、ひどいよ」


 さっきまでぽろぽろないていたのに、今は、ぷんぷんとおこっていた。


「ねえ、あなた、だれ? なんでうちの庭にいたの?」


 セナはそっと手をのばして、リュックサックから赤いふくのこどもをだしてあげた。

 ちょこん、とすわった赤いふくのこどもはまだぷりぷりとおこっていた。


「さんた。ほしから、おちたの」

「サンタ……? え、ほんとうにサンタクロースなの?」


 そちらのほうがひっかかってしまい、セナは後半をよくきいていなかった。


「まだ、サンタクロースじゃない。ただの、さんた」

「えぇと?」

「すうじの『三』にももたろうの『太』といえば、ニホンジンにはわかるっていわれた。なまえ」

「あっ」


 こどもはずっと、じぶんのなまえをいっていたのだ。


「三太くん、っていうの?」

「そう。ほんとのなまえはちがうけど。みならいだから三太」


 三太のはなしはわかりづらいな、とセナはすこしこまってしまう。


「みならい?」

「うん。サンタクロースのみらないなの。みらないのしけんにやっとうかって、ふたご座流星群ざりゅうせいぐんにのってきたの。ほんとうはサンタクロースのところまでいけるはずだった。でも、ほしからおちちゃったの」

「ふたござりゅうせいぐん……」


 いろいろな情報がいちどに入ってきて、セナはよくわからなくなってしまった。

 

『ふくざつなもんだいをとくときにたいせつなのは、まずなにがもんだいなのか、せいりすることです』


 担任の早川先生がまえにそういっていたことを思いだした。

 

『ながい文章だいだったら、まず一文ずつかんがえましょう。かじょう書きにするとわかりやすくなります』


 かじょう書き、とセナはつぶやいた。

 そう、ひとつひとつ、せいりしてみよう。


「あなたのなまえは三太?」

「うん」

「サンタクロースのみならいなの?」

「そう」

「ふたござりゅうせいぐん、というほしにのってやってきた?」

「ちょっとちがう。ふたご座流星群、というのはほしのなまえじゃなくて、ながれぼしがたくさんふることをいう。ちいさなほしがたくさんふりそそぐの」

「ながれぼし、なんだ」

「そう」

「ながれぼし、ってのれるの?」

「うん。ぼくらはのれる。とおくのほしからここまではこんでくれるの。サンタのほしからここまで流星群にのってやってくる。地球にくるためのおもな流星群は一年で三回。しぶんぎ流星群とペルセウス座流星群とふたご座流星群。ぼくのほしはそちらの方角なの。ふたご座のほうから地球にむかってのってきて、ファエトンでふたご座流星群にのりかえる」

「ま、まってまって!」


 ゆだんすると、三太はよくわからないことをどんどんいいはじめてしまう。


「ふたご座流星群が今年のさいしゅう便びんだった。おちちゃったぼくは、クリスマスにまにあわなくなっちゃう……」


 まって、といったセナのこえがきこえなかったのように、三太はきゅうにかなしそうにめそめそとなきだす。

 セナはこまってしまって、そのあたまをそっとなでた。


「ええと、サンタクロースのみならいはとおくのほしからやってきて、サンタクロースのところにいくのにながれぼしにのってくるのね?」

「うん……」

「でも、三太はサンタクロースに会うまえに、この庭におちてきちゃったの?」

「そう……。どうしよう。どうしたらいいんだろう?」


 セナはノートをとりだして、かじょう書きに書き出した。


 ・なまえは三太。

 ・サンタクロースのみならい。

 ・とおいほしからながれぼしにのってやってきた。

 ・とちゅうで、セナのいえの庭におちてしまった。

 ・どうやってサンタクロースのところにいったらいいか、わからない。


 先生のいうとおりだ。

 かじょう書きにすると、少しわかった気がする。

 とりあえず、わからなかったところは書かなかった。


「三太はサンタクロースのところでなにをするの?」

「もちろん、しごとだよ。みならいだから、まずはいっしょにいて、しごとをおぼえるの」


 パパやママとおさんぽにいっしょにいって、しなければいけないことをおぼえるのと同じかな、とセナは思った。


(こんなにちいさいのに、おしごとをするんだ。たいへんだな)


「いちにんまえになったらおおきくなれるの。それまでは、このおおきさなの」

「えっ、そうなの?」

「そうなの。地球のひととにせたすがたなの。ほんとうはもっとちがうの」

「ほんとう……」


 セナはあわてて書きくわえる。


 ・三太にはほんとうのなまえがある。

 ・しごとをおぼえないとおおきくなれない?


 さいごに書いたことはよくわからなかった。

 セナはしごとをおぼえなくても、たぶん、おおきくなっている。

 ごはんをたくさん食べればおおきくなる、と学校で習った。ひとは勉強しなくてもしごとをしなくても、たくさんごはんを食べればおおきくなれるのだ。

 でも、三太はちがうらしい。


「サンタクロースも宇宙人うちゅうじんなの……?」

「うちゅうじん? そうだね。地球いがいからきてるから、宇宙人というのはまちがいじゃない」


 しょうげきだった。

 セナはぱくぱくと口をあけたりひらいたりしながら、三太を見る。


「じゃないと、一日でプレゼントをくばったり、空をとんだり、できるはずがないでしょう?」

「た、たしかに……」


 みょうになっとくしてしまった。


(そうか……、サンタクロースって、宇宙人だったのか……)


「セナー! なにしてるの!? ちこくするわよー!」


 そのとき、ママのおおきなこえがして、セナはあわてて「はーい!」とへんじをした。

 ランドセルをもって、マフラーとてぶくろをする。


 そのままへやをでようとして、三太のことを思いだした。


「ごめん、ちょっとここに入っていてね。でてきちゃだめだよ?」


 だきあげて、クローゼットのなかにいれる。

 ぱたん、ととびらをとじると、なかから三太がびっくりしたようにドンドン、とたたいた。


「とじこめないでって、いったのに!」

「ごめん、学校いかなきゃいけないの」

「やだやだ! くらいの、やだ!」


 セナはこまってしまう。

 そっと、とびらをあけると、なみだをぽろぽろこぼして、三太がないていた。

 だきあげて、よしよし、とあたまをなでる。


「ごめんごめん。じゃあ、ベッドのなかにいて? おふとんかぶって、ママがきてもへんじしちゃ、だめよ?」

「うん」


 セナは三太をベッドに入れて、そっとふとんをかけた。ちょっとふっくらしているけど、くまさんのぬいぐるみをそのふくらみのところにおいてみる。

 そうすれば、めだたないようなかんじがする。


「学校おわったら、すぐ帰ってくるから」


 セナはもう一度そういって、あわてて部屋をとびだした。


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