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星からおちたこども  作者: あるぱかぱかす
10/13

10 ソリのれんしゅう

 つぎの日、セナが学校から帰ると、庭で「キャン」というモカのなきごえがした。セナは玄関ではなく、庭にまわってみた。


「なにをしているの?」


 おもわず、セナはたずねてしまう。

 というのも、三太がセナがむかしつかっていた雪遊び用のソリにのっていて、そのひもをモカがいっしょうけんめいくわえてひっぱっているのだ。

 モカのあたまにはつのがはえていた。


 ……いえ、よく見るとトナカイのつのがはえたぼうしをかぶっていた。

 そういえばなん年かまえ、ママがクリスマスのころ、「かわいい!」といって、モカにかぶせて写真をとっていた。それをおしいれから三太がみつけてきたのだろう。ソリにしても、どこかにしまってあったものをひっぱりだしてきたのだ。

 

「ソリのれんしゅうだよ。とにかく、れんしゅうしとかなきゃ」

「そう、なんだ……。でも、モカはトナカイじゃないよ?」

「しってる……」


 三太はしゅん、としてかたをおとした。

 モカもくわえていたひもをはなし、もうしわけなさそうにしている。

 三太は羽のようにかるいけれど、モカはチワワなので、ソリがおもすぎたのだ。いっしょうけんめいひっぱろうとはしていたが、ぴくりともうごかなかった。


「三太、ミルクのむ?」


 セナはかわいそうになって、そうさそった。

 きょうは、ママが三太の分までおやつを用意してくれてあった。


「マドレーヌがあるの。いっしょに食べよう?」

「うん……」


 おちこんだ三太はとぼとぼとセナのうしろをついてきた。モカがそのあとをちょこちょこついてくる。


 ミルクとマドレーヌをリビングのテーブルにだして、おちこんでいる三太といっしょに食べた。


 クリスマスまではもう、あとすこしだ。

 三太もあせっているのだろう。

(今夜のながれぼしさがしをがんばろう)と、セナはあらためて思った。


 きのうとおなじようにして、夜十時にはパパとママと星見ヶ丘にむかう。


 ながれぼしをさがしているあいだに、セナはパパやママといろいろなはなしをした。


「三太は、サンタクロースをしんじていないひとには見えないんだって。パパもママもサンタクロースをしんじていないの?」


 二人はこまったように目を合わせる。

 そして、パパがいった。


「むかしはね、しんじていたんだ。でもね、おとなは見えないものをしんじなくなってしまうんだよ。サンタさんはすがたを見せてはくれない。だから、だんだん、パパとママはしんじなくなってしまった。そうしたら、サンタさんもきてくれなくなるんだ」

「でも、ママは毎年、サンタさんに手紙をおくってくれるよね。しんじていないのに、おくっているの?」


 ママはしんそここまったようにした。


「ママもね……、どこかにはいるのかもしれない、とはおもっているの。手紙はね、きちんとだしているのよ。でもそれが、ほんとうのサンタさんかはわからないなあ、とおもっていたの、ほんとうは……」

「そうなの……」


 セナは三太をぎゅっとだきしめた。

 ぽかぽかとあたたかくて、ふかふかとやわらかい。


「でもね、でもね、三太はちゃんとここにいるの。しんじて」


 パパとママは「もちろん」といって、セナを三太ごとだきしめてくれた。


「あとね、パパ。わたし、あやまらないといけないことがあるの……」


 セナはとうとうがまんできなくなってそういった。


「うん? なんだい?」

「アイスクリーム……。ほんとうは、パパのかんちがいじゃないの。三太が食べちゃったの。ごめんなさい……」

「ごめんなさい」


 セナがあやまると、三太もぺこり、とあやまった。


「ああ、そうだったのか。三太はアイスクリームを食べるの?」

「うん。でもほんとうは食べなくてもだいじょうぶなんだって。毎日、いっぱいのミルクがあればいいんだって。でもあまいものもすきなの」

「そうか。うん、いいよ。正直にいってくれてありがとう。つぎからは食べていいか、きいてくれるかい?」

「うん」


 三太はまじめなかおで、こくり、とうなずいた。

 パパが目をこする。


「……あれ? 今、いっしゅん、セナのひざのうえに赤いぼしうしをかぶった小さなこどもがいたような……」

「それ、三太だよ!」

「そ、そうかあ……。ほんとにいるんだ……」


 今は見えないようだった。

 いっしゅんでも見えてくれるとセナもうれしかった。


 その日の夜もほしはながれなかった。







 けれど、パパとママも少しずつかわっているようだった。

 ときどき、赤いふくをきたこどもが、家のなかをはしりまわっているのがぼんやり見えるときがあるのだ。

 モカがいるとおもってはなしかけたら、モカはそこにいない、かわりに三太がいて……、ということもなんどかあった。


 セナのはなしをしんじるうちに、三太のけはいをかんじるようになってきていたのだ。


 毎晩、ほしをさがすのはたのしくもあった。

 おしごとがいそがしいパパとママとゆっくりおはなしをする時間が、しらずしらずのうちにへっていたのだった。


 ひとりで過ごすことがおおくなっていたセナは、ひさしぶりにパパとママとゆっくりおはなしできて、それもうれしかった。


 ながれぼしをさがすのにも、三人ともより力が入っていった。

 しかし、三日たっても四日たっても、ひとつもながれぼしを見つけられなかった。


 三太は日に日にげんきをなくしていく。

 ソリのれんしゅうもしているけれど、サンタクロースのもとでのしゅぎょうではないからか、モカがトナカイではないからか、ふわりともうきあがらない。


 さらに五日目は天気がわるくて、ほしさえ見えなくなってしまった。


「きょうは中止だね」


 パパがざんねんそうにいった。

 とうとう六日目には雪がふってきてしまった。


 まどをあけて、パパとママ、セナとモカと三太でちらちらふるこな雪を見る。

 とうぜん空はまっくらで、ほしのひとつも見えなかった。


「明日はクリスマスイブだね」


 そうパパがいった。


 そう、もう、クリスマスがきてしまう。

 セナはあの手紙に書いたことにサンタクロースが気づいてくれるよう、おねがいするしかなかった。



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