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9/11

永久コンボと10割コンボは多少差はあれど終着点は同じ


――俺が言うのも少しおかしいかもしれないが、今でも根強いファンの居る格闘ゲームジャンルの醍醐味の一つは何といっても多彩なキャラクターだと思う。

 

 昔ながらの己の拳一つで敵と戦うキャラクター、刀や槍などの武器を使うキャラクター、超能力や特殊能力を操るキャラクターなど多数にわたる。


 更には、『格闘』なのに銃火器を扱うキャラだって今では珍しくはないらしい。

 ……余談だが『らしい』ってのは殆どは友人から得た情報やゲーム雑誌などのを立ち読みして得た知識だからだと言っておこう。


 そんな色々と個性豊かなキャラクターの中から俺が選ぶのは……。


「うーん、そうだな……それじゃこいつらにするか」

 

 ボタンを押すとピロリと音が鳴る。

 すると画面には軍服を着た筋骨隆々の男三人が並ぶ。昔のゲームなだけあって、最新ゲームと比べるとだいぶ荒いグラフィックだが、細かい所まで作り込まれていて、これはこれで味がある。


 ――ちなみに俺が軍人キャラクターをチョイスした理由は、特にそういった軍人好きのマニアって訳ではなく、見た目的に強そうな雰囲気が溢れていたからだ。

 たぶん他のジャンルのゲームでも屈強そうな男性キャラクターを好んで使っているせいで、このキャラクター達に魅かれたのかもしれない。

 一応断っておくが変な意味では決してないから安心してくれ。いたってノーマルだ。


 「なるほど、それを選びますか、良いセンスですね。では私はこのキャラで行きます」


 宮古が選んだのは先ほど見たこのゲームの主人公らしき学生のキャラクターを選択した。

 ……しかし軍人を見ていいセンスとはいまいち宮古の感覚が分からないぞ。


 

 ――そして両者キャラクター選択を終え、次に舞台となるステージを選択していよいよ戦闘開始となった。


 画面にはお互いに向かい合う二人のキャラクター。ステージの賑やかさとBGMが今から始まろうとする試合を盛り上げるなか、ついにラウンドコールが鳴る。

 

 

 ……さて、試合が始まったのはいいが、当然ながら俺はいまいちこの格闘ゲームの戦略ってのを知らない。

 そりゃシンプルに考えれば相手に近づいてパンチなりキックなり、攻撃を出すボタンを押せばいいんだろうが、おそらくそんな単純な話じゃない。

 俺も今まで、他のジャンルのゲームではあるが、そのゲームにおいて勝負のセオリーがあるってことぐらいは理解してるつもりだ。

 

 ならばここは、一旦距離をあけて宮古の出かたを見てから考えるとするか。


 俺はひとまず自分のキャラクターを後退させる。……画面の一番端まで下がればひとまず安全だろう。さて、宮古はどう動く? 

 

 俺は操作レバーをしっかりと握り、少し前かがみの姿勢で臨戦態勢をとる。さあどこからでも来い! ……まぁ生き込んではいるが、実際に戦うのはゲームキャラクターであって俺自身じゃない。もちろん分かっちゃいるが居るだろう? ゲームとかやってる時に一緒に体ごと動かす人とか。そんな感じだと思ってくれ。


「…………」

  


 …………あれ、どうしたんだ? 

 

 生き込む俺の意志とは裏腹に、宮古の方は全くその場から動く気配が感じられない。

 もしかして俺が分かってないだけで、宮古は何かしらの駆け引きを仕掛けてるのか? 

 

 ――横に座る宮古をチラっと覗いてみるが、相変わらず涼しい表情のままだ。いったい何を考えてるのかわからない。……いや、待てよ。


 その時俺は、勝負を始める前のやり取りを思い出し、一つ一つ洗い出してみた。


 一つ、宮古はグレイ君人形に微塵の興味も無い。

 二つ、俺にとってあまりにも有利な勝利条件。

 三つ、そもそも人形は秋奈さんに半ば強引に押し付けられた。

 四つ、試合が始まっても動かない宮古。


 これらの情報から推理し、導き出される答えは……

 

 ――はじめからこの勝負に勝つ気はない? 


 ……試合前にまさかとは思ったが、この状況から見るにおそらく間違いないだろう。

 欲しくも無いストラップ人形を貰っても一応は付けておくような性格の宮古だ。これは俺に人形を譲る形だけの勝負なんだ。


 そう確信すると、猫のように背中を丸め、戦闘態勢を維持していた体制をなおす。

  

「悪いな、気を使わせて。さっさと終わらせるからさ」

 

 俺は宮古にそう言い、手っ取り早く試合を終わらせるため画面端まで下がっていた自分のキャラクターを操作し、相手キャラクターに近づいた。

 

 今日がゲームセンターの休業日なのを知らずに来たが、思わぬ出会いに感謝だな。明日は同じグレイ君ファンの友人に自慢してやろう! きっとすごく驚くだろうな。


 そんな妄想を膨らませながら距離を詰めた時、状況は一変した。



 『バシン!』っと音が一瞬鳴ると同時に宮古が操作する学ランのキャラクターに光が灯った様に見えた。――そんな状況を脳が理解するのと同時に学生服の少年が目の前から消えた! 


 ――いや、消えたのではない。跳んだのだ。その場から、俺の使う軍人へ向かって。

 その後は何が起こったのか……今の俺には理解する知識も時間も余裕も無かった。


 一呼吸を置く間、気が付くと画面に大きくWONの文字が表示される。


 その画面には高らかに腕を振り上げている少年の足元でのんびり寝ている軍人の姿があった。……いや、これは寝ているのではない。そう、これは……



「そうそう、これはどうみてもOKされて……って、ええええ!? ちょッ、倒れてる? なんで!? 今何が起こった?」

 

 当惑し思わず宮古の方を振り向くが当の宮古は俺の「この状況を説明してくれ!」オーラ全開の視線を気にするようすも無い。なんか無視されてるみたいで少々悲しい


「まだ一人落ちただけで試合は終わってませんよ。人形が欲しいのでしたら集中した方が良いと思います」


「――! お、おう……」


 つい釣られて返事をしてしまったが、気のせいか? 宮古のやつ、ゲーム開始前より活き活きしてるように見えるぞ。いやまさかな、わざと負ける試合でそんな事ある訳ないよな。気のせい、気のせい。はははは

ちょっとした手違い、ミス、言わば事故だよな。

 

 ……ですよね? ミヤコサン?


 9話 END


 10話 『得意分野になるとめっちゃ早口言葉になる人いるよね。とても親近感わきます』へ続く

  

10秒未満で倒しきる10割コンが50個ぐらいはあったはず

あれは修羅の国でした

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