母のメッセージ
ノックの音で読書を中断された私は、しぶしぶ本に栞をはさみ、ドアを開ける。
「これからシルビアと出かけるけど、ローラは」
最後まで聞かず「留守番してるね」と早口でパパに言うと、続きが読みたい一心で本に戻る。ドアを閉める時にパパの困ったような笑みがチラッと見えたけど、早く本が読みたい。
ベッドにうつ伏せになり時間も忘れた。
宇宙船の中には入れず、四人はとりあえず村に残って、死者を埋葬する仕事を手伝っていた。
孤児が集まるサリオット村の人々は、死者を弔う職業柄、帝国内で差別され、疎まれており、辺境の地で細々と生活してる。
その上、アトランティス王国との戦争に勝つために帝国は、村にウィルス兵器を撒いた。
人を人とも思わない所業。
ウィルス兵器から村人を守るために、四人は自分たちの血を……呪いを分け与えた。永遠に近い命を得たサリオット村の人々は、やがて女王スカーレットが率いるローズ王国の民となる。
ママはこの物語を通して何が言いたいんだろう?
人間の身の毛がよだつような残酷さ?他を貶めて、優位に立とうとする卑劣さ?
読むのがだんだん辛くなってきた。
虐げられる人々、実験体にされ続けたスカーレットの残酷な運命。
何度、本を閉じようと思っただろう。
それでも読み進めたのは、この本の意図を知りたかったから。
『次に皇帝に見つかったら、生きては戻れない。
だから、今までの出来事をあなたに遺すことにしたの。
残酷な現実を突きつけるのは、私も辛い。あなたに過酷な運命を残して逝くのも。
何もしてあげられなくてごめんね。あなたが産まれて、私はこれ以上ないくらい幸せにしてもらったのに。私は何もしてあげられない。
それどころか、負の遺産を残してしまう。私の呪いはあなたが受け継いでしまった。
それと同時に『魅了』の能力も。
ただ一つ幸運なのは、呪いを受け継ぐか選べること。
人間として死ぬか、化け物として生きるかは、あなたの自由。
どんな選択をしようと、あなたを尊重するわ。
もし、魅了の力が必要になったら、この本の最後のページを破り、中に隠してある小瓶の中身を、私の血を飲んで。
幸運を祈ります』




