表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/34

フィーミアの正体

「さあフィーミアに会わせよう」 


 ヨハネが指をパチンと鳴らすと、目の前の壁が急に透明になり、手を拘束され首輪をつけられたフィーミアが現れる。


「ローラン様!何もされていませんか?」

「フィーミア、私は平気よ!」

「良かったです。この時を待っていました」

 フィーミアがヨハネを睨みつける。

「ここで暴れる気か」

「お前を殺すために私は存在する」

「ジェスターからお前の話を聞いた。こちらが何の対策もしていないと?」

 ヨハネは指を鳴らす。

「ウォーレン、出番だ」


 隣の壁も透明になり、旅団の一員、怪力のウォーレンが首を回しながら立っていた。

「待ちくたびれたぜ。暴れていいんだな?」

 異様に発達した上腕二頭筋を見せながらウォーレンが聞く。

「強化ガラス壁でこの空間を覆った。思う存分やってくれ」

「フィーミア、あんなのに勝てるわけないわ!あなただけでも逃がしてもらえるようヨハネに頼んだから、負けを認めて!」

 フィーミアはにっこりと笑う。

「ローラン様にお仕えできて幸せでした。あと、願わくばもう少しお側に居たかったです」

「フィーミア!」

「お元気で」

 あんな筋肉隆々の獣みたいな男にフィーミアみたいなか弱い女の子が勝てるわけない。


「その潔さ、嫌いじゃないな」

 そう言うより早くウォーレンが全力で拳を繰り出す。フィーミアは辛うじて避けたが、頬が切れて血が流れた。

「身体強化した俺の攻撃を避けるなんて流石だな。だがいつまで持つか」

 繰り出され続ける拳をなんとか避け続けるフィーミアだが、じりじりと押されている。ついにパンチが顔面に入り、フィーミアは見えない壁に激突して床に転がった。

 ローラの悲鳴が響く中、フィーミアはすぐに立ち上がり目にも止まらぬ速さでウォーレンに近づくと、隠しもっていたナイフで右腕を切りつけ、鳩尾に蹴りを入れる。

「なかなかいい蹴りだ」

 血を吐き出しながらウォーレンはニヤリとする。

 ぱっと飛びのいたフィーミアは、ウォーレンの方に右手を上げると、掌から赤いレーザービームを出した。ウォーレンも避けようとするが左足をかすり、肉が焼け焦げる。ビームが当たった床も同じく焼け焦げ、煙が上がった。 


 え?


 ローラは心臓が止まるかと思うほど驚いて声が出ない。


「飛び道具なんて汚いな」

「か弱い女子なもので」

 そう言うなり、掌からビームを連射する。ウォーレンは防御に徹するしかない。

「だから最新型は嫌いなんだ」

 そう呟いたヨハネは、ロザリオのルビーのボタンを押す。

 首輪から電流を流されたフィーミアは苦痛に顔を歪め、片膝をつく。


「卑怯者!」とローラは叫んだ。


 ウォーレンがすかさずパンチを打ってくるが、フィーミアは人間離れしたスピードで避けた。

「ウォーレン、これを使え」

 ヨハネが三又槍を放った。武器を受け取ったウォーレンがフィーミアに向けて研ぎ澄まされた切っ先を振り下ろすと、槍から電撃が発せられ、命中した。

 フィーミアの体から焦げた臭いがして、煙が上がる。フィーミアの持っていたナイフがローラの足元に転がってきた。

「フィーミア!」

 ローラが駆け寄ろうとしたが、ヨハネに腕を掴まれた。

ウォーレンは倒れているフィーミアに三又槍を突き刺す。上体ががくんと揺れ、フィーミアが口から血を吐いた。


「やめて!」


 悲鳴に近い叫び声をローラは上げた。


「ローラン、よく見ろ。フィーミアはこれでも人間か?」

 ローラの腕を引っ張りながらヨハネはフィーミアに近寄る。ヨハネは躊躇いなくフィーミアの身体から三又槍を引き抜き、切っ先で表皮を抉る。

「ヒューマノイドだ。名前は聞いたことがあるだろう」

フィーミアの体内から金属の部品が見えた。


「もう、やめて……」


やれやれとヨハネが頭を振る。

「俺は最新型がやっぱり嫌いだ。人と見分けがつかないからな」

 傍にいたウォーレンがフィーミアが上げた右手を踏みつけた。

「まだ動くみたいだぜ」

 三又槍を振り上げたヨハネにローラが言い放つ。


「やめなさいよ!」


「何?」


 ヨハネは突然の衝撃に震え、目を見開きローラを見つめた。ウォーレンも状況が理解出来ず、一瞬、フリーズしたが、すぐにローラの襟元を引っ掴むと、強引に引き倒す。ローラは強かに身体を打って転ばされた。

「てめぇ!何してやがる!」

ウォーレンの凶暴で背筋が凍るような怒鳴り声がラボに響き渡るが、ローラ怯まない。

 それどころか、ローラは嗤っていた。


「ようやく一矢報いたわ」


 上体を起こしたローラの両手は血で汚れていたが、気にする様子はない。顔面蒼白で震えているヨハネに言う。

「いい表情ね。実験体が反撃するとは思ってなかった?油断しきってバカみたい」

  ウォーレンが殴りかかろうとローラに向かって来るが、ローラは睨みつけた。

「実験体を傷物にしてもいいの?」

「ウォーレン……やめろ」

 そう言ったヨハネは吐血し、片膝をついた。脇腹にはナイフが深々と突き刺さり、白い白衣がみるみる赤に染まっていく。

「お前じゃなければいいんだな!」

 ウォーレンは転がっていた三股槍を掴むと電撃をもう一度、フィーミアに食らわせた。

「あぁ!」

 ローラはフィーミアに駆け寄る。顔の皮膚が半分焼け、金属のフォルムが剥き出しになっている。

「私は平気です。だから……泣かないで」

「痛みがないわけじゃないんでしょう?より人間に近づけるために作られているのだから」

「ローラン様と……過ごせて……幸せでした」

「必ずあなたを救うわ」


 フィーミアは薄れゆく視界の中で、あるデータを引き出した。

 データはローラがフランシスとのお茶会を終えて戻った時に遡る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ