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フランシスとのお茶会

 翌朝も晴天で城に差し込む日差しが眩しいが気持ちよかった。ローラは昨日買ってきたワッフルを籠に入れるとフィーミアに声をかける。

「お茶会へ行ってくるね」

「いってらっしゃいませ。用事があり着いていけず申し訳ありません」

「どうせ部屋へは入れないし、王宮の護衛騎士と行くから平気よ」

「ありがとうございます。あの……」

「大丈夫よ。行って来る」

 そう言って部屋を出たローラは慣れた様子でフランシスの部屋を護衛騎士と目指す。  

アラン王子の花嫁候補が第二王子の部屋に通っているなんて普通は王宮の噂になりそうだが、当てつけに選ばれた候補ということで特に話題に上ることはない。アラン王子のお相手はジュリア様だというのが専らの噂だ。

 いいのか悪いのか。

 ローラはふと顔をあげ、光が入る窓から外を見た。

 アランとジュリア様?

 仲睦まじげに談笑しながら園庭に向かい歩く二人の姿が目に入る。

 心臓が波打ち、顔が自然と引きつるのを感じた。

 私には会いに来ないのに。本当に私のことを嫌いになったの?

 ローラはとぼとぼと歩き、扉の前まで来るといつものようにノックする。

「待ってたよ♪」と勢いよく扉を開けたフランシスが、顔を顰めた。

「どうかした?」

「なんでもないです」

 ローラの手を引き部屋に招き入れたフランシスが聞く。

「なんでもないって顔じゃないけど?」

「そんなことないですよ」

「じゃあ、なんで泣きそうな顔してるの」

 顔を赤らめたローラはフランシスの手を振りほどき、背を向ける。

「泣いてないですって」

「そんな顔、反則だろ」

 背中から抱きしめられたローラはびっくっと震え、さらに赤くなった。

「フランシス!」

「泣き止んだら離れるよ」

「もう!」

 フランシスから離れたローラは涙をさっと拭き、前を向く。

「ならいいんだけど。お茶会を始めましょうか」

 ローラはいつもの窓際の椅子に腰かけた。

「もうすぐ収花祭なのに、私は選ばれないかも」

「えらく弱気だね。らしくない」

 フランシスはカップにお茶を注ぎながら言う。

「さっきアランとジュリア様が楽しそうに歩いているところを見ちゃって」

 注がれたお茶をローラは一口、飲んだ。

「たまたまだろ。他の候補と話すことだってあるさ」

「私はもう二か月も会ってないのに?」

「じゃあ、そう言ったら?」

 ローラは無意識に首元に手を当てる。遠慮なくそう言えたらどんなに楽だろう。正直、アランのことがよく分からない。

「本当に兄上のこと愛してるの?」

 胸をグサリと刺すような言葉にローラは黙ってしまう。

「この沈黙が答えじゃない?」

「少し静かにしてもらえません?」

 フランシスも黙り込む。気まずい空気が二人に流れた。

「生意気な口をきいてすみません」

「いいんじゃない。それだけ心を許してるってことだよね」

 笑顔のフランシスにローラは少しほっとした。

「そうだ。下町に行ったお土産にワッフルを買ってきたんだった」

 長テーブルに置いたままのかごからワッフルを取り出す。

「わぁ。わざわざ買ってきてくれたんだ。ここのワッフル、好きなんだよね」

「良かったです」

「お土産と言えば、僕も買ってきたんだよ」

 そう言ってフランシスはハート形の小瓶を取り出した。

「薔薇の花びら入りハチミツだよ」

 蓋の部分もハートのクリスタルになっていてキラキラと輝いている。

「ピンク色で可愛い!」

「しかも、好きな人に飲ませると好きになってもらえるとか♪」

「本当に?」

 思わずローラは瓶を手に取ってまじまじと見つめた。

「下町の女の子たちの間で流行ってるみたいだよ」

「フランシス、ありがとう!」

 笑顔を見せたローラに、フランシスは胸が轟く。思わず胸の部分のシャツをつかんだ。

「ごめんね」

 ぼそっと小声でフランシスは呟く。

「え?」

「ううん、それよりワッフル食べていい?」

「もちろん。チョコソースかけたら美味しそうだと思って、持ってきたんだ」

「ナイス」

 フランシスはチョコがけワッフルを口に運び、とても楽しんでいるように見えた。本当は胸が張り裂けそうに苦しかった。


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