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第一話 異世界召喚

 先程までの強烈な眩しさに、両手も使いながら目をギュッと閉じていた信也は、フワッとした浮遊感を感じた後から、自分達の周囲がやたらと騒がしい事に気が付いた。


 先程まで眩しかった光ももう感じないようなので、恐る恐るゆっくりと目を開け……あまりの出来事に呆然としてしまった。


「…………え? なんだこれ?」


 目を開けた先に見えるのは、先程までいたはずの見慣れた教室とは違い、まったく見覚えの無い石造りで殺風景な広めの部屋であった。


 あまりの光景に、すぐにはまともな反応が出て来ない信也達の少し離れた前の方では、西洋の鎧のような物を着込んだ男が二人で言い争いをしていた。


「だから儀式は成功しているだろうが! こうして勇者様方である人族が五人も召喚されたというのに、貴殿は一体何が不満なのだ!」

「不満も何も、伝説において召喚されたのはタイラー王ただ一人であろうが! 五人も召喚されたなどとあっては、どんな不具合が起こっているのかも分からんだろう、人族連合軍の旗頭になぞできようものかよ!」


 『五人も』との言葉から、自分達について口論しているのは間違い無いんだろうと信也は確信しつつも、同時に聞こえてきた『召喚』という言葉が、否応無しに不安を感じさせた。


「信也……これってドッキリとかじゃ無さそうだよね?」


 信也は聞き慣れた声に隣を見ると、夕梨が一見いつも通りの無表情に近い表情ながらも、よく見ればわかる程度に不安をにじませていた。

 意味が分からない状況に、自分も不安である中で、夕梨にどう声をかけようかと悩み始めた信也は、背後から聞こえてきた親友達の声に振り向いた。


「なにこれ、どこここ、なになになに!?」

「落ち着けって、祥子! 多分無闇に騒いだら、こういう時はヤバいぞ!」

「ヤバいって何が!? 私達殺されちゃうの!?」


 振り向いてみると祥子がパニックになっており、直人が落ち着けようとしているが、こんな状況での落ち着け方は分からない様で、むしろ不安を煽ってしまったようだった。


「落ち着いて祥子、恐らく今すぐどうこうされるような雰囲気じゃないと思うよ、勘だけどねー」

「そうだな、拉致された目的とかは分からないけども、危害を加えてやろうって感じじゃ無さそうな気がする」


 信也と夕梨も、祥子を落ち着けようと揃って声をかけた。パニックに陥っている親友の姿を見て、逆に冷静にならねばと落ち着けたようである。二人の落ち着いた声を聞いた祥子は、釣られるように見る見るうちに落ち着きを取り戻していった。


「う……うん、もう大丈夫、落ち着いたよ。 夕梨と信也、それとオマケで直人も、ありがとね」

「あー……怒鳴ってすまなかったな、次からは気をつける」

「大丈夫だよ、直人が不器用なのも、声が大きいのも昔からだしね」


 落ち着きを取り戻した祥子が、申し訳無さそうに謝る直人に優しく声をかけるが、その様子を見ていた夕梨がまだ許すのは早いと声を出した。


「ホントだよー、直人ってば身体だけじゃなくて、声もすごくでっかいんだから気をつけなよ?」

「いや本当にすまんって」


 夕梨からの一言で、直人は大柄な身体を小さく丸めるようにして、ひたすらに謝り倒しており、そのなんとも言えない様を見た祥子が笑顔を取り戻していた。


 祥子はもう大丈夫そうだと思った信也は、夕梨がまだ直人を注意しているのを横目に改めて前を向いた。


 目の前で拉致犯なのだろう二人の男が、相変わらず自分達の事を放置して口論を続けている状況に、他に誰か居ないのかと改めて自分達の居る部屋を見渡したのだが、バスケットコート位ありそうな石造りの部屋には他に誰も居らず、どうしようかと立ち尽くした。


 そんな中でも静かに一人で何かを考えていた嶺二が、今のままだと何も分からないと頭を振り、あえて部屋全体に聞こえるように大きく声を張り上げた。  


「とにかく状況が分からないと、何も判断がつかないな……すいませんが、なにがどうなってるのか、僕達に教えて頂けると助かるんですが!」


 嶺二の声に反応したからか、口論をしていた男の一人がハッとした後に口論を止め、信也達に笑顔で近付いて来て自己紹介を始めた。 


「おっと、これは大変失礼を致しました勇者様方。お初にお目にかかります、フラクト王国が上級大将、オーレル・シュタインと申します。宜しければオーレルとお呼びくださいませ」

「ゆっ、勇者様? 俺達がですか? 意味がわからないんですが……」


 オーレルと名乗った男を改めて見てみれば、銀髪碧眼で長い髪を括って後ろに流しており、傷一つついていない綺麗な銀色に輝く鎧を着込んだ様子は、如何にもマンガに出てくる騎士のようであり、それでいて紳士然とした風貌でもある。


 更には上級大将などと名乗った事からも、よく分からないながらも、偉い人なんだろうと言うことは理解が出来る。


 そんな偉いだろう人から勇者様と呼ばれた事に、余計に意味がわからないと信也は困惑しながらも返事を返した。


「あぁ、確かに召喚された勇者様はこちらの事情が分からないのでしたな、御説明させて頂きますので、先ずは食堂へ移動しましょう」


 こちらへどうぞと先導しながら、オーレルが信也達の正面奥にあった大きな扉へと歩いていく。口論をしていたもう一人の男も、渋々とオーレルに付いていくようだった。


「これは付いて行かなくちゃならないよな」

「ただの夢を見ているって訳じゃ無さそうだしな、先ずは話を聞いてみよう」


 信也と嶺二は頷き合うと、扉の前で待っているオーレル達の方へと向かって歩き出した。

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