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第十一話 勇者の力

 召喚魔法とそれにまつわる話を聞き終え、次はいよいよ勇者が扱う力についての説明に入る事となった。その力があればこそ、信也達は魔族と戦いうる存在となるのである。


「さて……今までに語ってきた話と矛盾するように聞こえるやもしれぬが、お主達が得た力とは魔力。それも並の魔族を遥かに凌駕する膨大な魔力。それがお主達、勇者が得た力だ」


 信也達に魔力があるというのは、いままでの話の前提であった、人族には魔力が無いから、魔法は使えないという話。それを根底から否定するような話である。


「絶大な魔力を誇る魔帝を討ち果すために作られた召喚魔法。その召喚魔法を通して呼び出された者は、膨大な魔力をその身に宿しているのだそうだ。もちろん初代様も、魔帝をも超える魔力をその身に宿していたらしい」


 召喚魔法で呼ばれて魔力が宿るのか、魔力があるから呼び出されたのかは、クラークの話からは分からない。前の勇者が魔法を使えたというのも、本人の才能だった可能性だって考えられる。


 しかしクラークは裏切りの魔族の子孫との交流がある。であるならば、勇者には魔力がある筈だというのは、単なる希望や予想なんかではなく、信也達にも魔力が宿っているという確証があるのだろう。


「昨日の模擬戦や、今日の訓練で身体が軽く感じたり、力が湧いてくるような事はなかったか? それは魔力を無意識に使っておるという事だ。魔力を自在に扱えるようになれば、身体能力のさらなる向上だけではなく、魔族のように魔法を自在に使う事も出来るようになるであろう」


 信也達としても、態度には出していなかったが、ファンタジーな世界に来たからには、魔法の一つや二つ、使ってみたいという気持ちくらいは持ち合わせている。


 しかし、人族は魔力が無いと説明を受けて、仕方がないと諦めたところであったのだ。ここにきて魔力を持っていると告げられた信也達からすれば、歓迎すべき話である。


「って事は私達、訓練すれば魔法が使えるようになるって事よね!」

「おおー、夢が広がるねぇ。どんな魔法が使えるんだろうねー」

「いや、でも待ってください。それだと先代の勇者も含めて、僕達は魔族って事になるのでは? 魔力の有無が人族か魔族かを分けるんじゃないんですか?」


 人族は魔力が無い。魔族は魔力がある。現状では両種族の違いは、これだけしか説明されていないのだから、魔力を持っていると言われては、そう思いたくもなるのも無理は無い。しかし嶺二のそんな疑問は即座に否定される事になる。


「ん? いや、それは無いな。魔族と人族の違いは見た目ですぐ分かるものなのだ。なんせ魔族には魔力器と呼ばれる角が、頭から生えておるからな」


 クラークが語るには、魔族は額か側頭部に角が生えているかどうかで判別が出来るらしい。


 そして角が大きかったり、角の数が多かったりするとその分魔力も強大になるそうで、今攻めて来ている魔族達も一目見れば、隠してさえいなければ遠目からでも、魔族かどうかくらいは判別できるのだそうだ。


 そして信也達には当たり前だが、角なんて物は一切生えていない。であるならば、信也達は魔族ではないという事になる。


「そ、それくらいの事は初日教えて欲しかったな……」

「むしろ魔族がどんな見た目をしておるかくらいは、シュタインあたりが初日に雑談がてら説明しておるものだと思っておったぞ? 生真面目な奴らしくもない」

「あっ、それはきっと召喚された初日で、混乱気味だった俺達に配慮してくれたんじゃないかと思います……」


 あの時の事を思い返せば、初日は食堂で持て成すつもりであったのは間違いないだろう。しかしあの時は信也達としても、いきなりの事態でピリピリしていた自覚があるのだ。もし持て成されたところで、楽しく歓談していたかどうかは怪しいものだ。


「そうか? それならまあよいか、奴は他国の将であるから、儂が罰する事が出来るわけでもなし」

「そんな事より、魔法を使えるようになるにはどうしたら良いんですか!」


 何やらオーレルのためにも話題を逸した方が良い気がした信也は、魔法の使い方を聞いてみる事にした。魔力があると言われたところで、この三日間で魔力なんてモノをちゃんと感じ取った事は無いのだ。訓練方法などを教えて貰わねば、魔法なんて当然使える筈もない。


「……それは儂には分からん」


 場の空気を変えようとして咄嗟に飛び出した質問であったが、クラークはばつが悪そうな顔で分からないと言い切った。


「え? 分からない? これだけ勿体ぶって話しておいて? まさか……嘘ですよね?」

「…………人族は魔力が無いと言っただろう? つまり魔力の扱い方はもちろん、魔法の練習方法すら誰も知らんのだ」


 それまでは常に自信を漲らせた表情で語っていたクラークが、今は気まずそうに信也達から視線を外し、どこか遠くを見ようとしている。練習方法が分からないのに魔力があると告げられても、いったいどうやって使えというのだろうか。


「さっき話してた、魔族の子孫の人は頼れないんですか? その人って当然魔族なんでしょうし、魔法の使い方くらい知ってますよね?」

「ぬうっ、確かにあやつなら魔力の扱い方も当然知っておるな。しかしあやつはあの地より離れる気は無いであろうし……いや、練習法を文で尋ねるくらいはできるか?」


 先程話題に出たばかりの人物に頼れないのかと尋ねてみれば、答えを聞く限りどうやら全くその発想は無かったようだ。最終的にはその手紙頼りという事にはなるのだろうが、半年近くは返信が届かないと言われている以上、信也は他に何か方法は無いかと尋ねてみる事にした。


「ではクラークさんの国に、魔法の練習方法が書いてある本とかは無いんですか? 前の勇者も魔法が使えたんなら、何か書き遺しているかもしれないですよね?」

「初代様の遺した書物か……一応、新しく勇者が召喚された時の為にと、歴代の王に代々伝えられてきた書物がいくつかあるにはある。しかし儂は読んだ事がなくてな、魔法に関する記述があるかどうかは分からぬぞ」


 不確かな話ではあるが、信也達にとってはその本が直近での頼りという事になる。しかしその本に魔法の手掛かりが書いていなかった場合、自分達の訓練期間内に魔法の練習方法は分からないという事になってしまう。ならば今からでも自分達で思い付いた事を一つずつ試していくしかない。


「当面は自力で覚えろって事になるのか……」

「んー、案外マンガとかにありがちな感じで、パッと使えるようになったりするかもねー」

「そう簡単にいけば良いんだけどな、これは明日の訓練中にでも皆で考えようか」

「せっかく夢のある話なんだから、皆で頑張って魔法を使えるようになるわよ!」

「オレもたまには真面目に考えてみるな! 期待はすんなよ!」


 少なくとも魔力が身体能力に影響しているのは間違いない。ならば身体を動かしている時に魔力を感じ取れる可能性もあるだろう。魔法自体の練習方法が分からなくとも、今はそれを頼りに手探りでやっていくしかない。


「って事で、何か良い考えを期待してるぞ嶺二!」

「はぁ……こういう時はすぐに僕に話を振るよな、まあやってみないと分からないけど任せてくれよ。色々と考えてみるさ」

「さっすが嶺二! 頼りにしてるよー」

「あなた達もちゃんと考えなさいよ?」


 どこか楽しげに魔法の練習方法についての話をしている様子を見て、クラークはホッとしたような顔になっている。魔法に関して力になれない事を気にしていたのだろう。


「さて、これで儂から話せる事は以上だ。もう夜も遅くなってしまったが、今夜はゆっくりと休むがよい。儂は急ぎ追加で文を書かねばならんので、これで失礼するぞ」


 そう言い残すと席を立ったクラークは食堂から出ていった。どうやら早速手紙で魔法の練習方法について問い合わせてくれるようであった。


「あっ、もう外も真っ暗だな」

「うーん、終わってみれば色んな話が聞けたね。昼間の訓練よりむしろこっちの方が疲れたかもー」


 夕暮れ頃に始まった食事会であったが、外は既に明かりの見えない暗闇になっている。今日一日で聞けるのかと思っていた事を一気に聞けたのは良かったが、おかげで誰もが昼間よりもどっと疲れたような顔つきになっている。


 しかし、元の世界に帰るための希望が見えてきたのだから、そう思えばこの疲れも心地良いものであった。それに魔法が使えるかもしれないと聞いて、これからの訓練が今日以上に楽しみに思えるようになったくらいである。


 明日も早朝から出発だと前もって聞かされている信也達は、今日はもう休もうという話になり、屋敷の人に案内してもらって各々の部屋へと移った後、明日からも続いていく旅路に思いを馳せながら休みに着くのであった。

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