森探検? (1)
「ご馳走さまでした!」
ようやく昼ご飯が終わり、みんなのお腹も満腹になったのか各々が休憩しだした。
今日のご飯は今までで初めてと言って良いほど豪華で、いつものパンとスープの他に、お肉や野菜の料理があった。
まあ、ご飯の話は置いといて、
突然だが、ここで僕(?)の友達を紹介しよう!
紹介すると言っても正直、 僕もこの友達(?)について詳しくは知らないので昼ご飯中の会話で分かった事だけを言おう。
1、ミナ:コイツは僕の家に一番最初に来た女の子で、しっかり者のお姉さんって感じの奴だ。
2、ラック:今、この家にいるメンバーの中で僕を除くと唯一の男子で髪は金髪と茶色が混ざった髪色で、目は緑色。とにかく、明るい奴だ。
3、サク:ラックと一緒にこの家に来た女の子で紺色のショートカットの髪型だ。昼ご飯中もほとんど喋る事なく黙々とご飯を食べていた。ミナもラックも、それについて何も言わない事から、多分、元々無口な性格なんだと思う。
コイツらはみんな僕と同じ6歳で、性格も見た目もバラバラだ。
「ほら、みんな! そんな休んでないで! 今日は森まで行くんでしょ。」
みんなが、居間で、ダラーとしていると、いきなり母親が大きな声でそう言った。
「あ、そうだった。早く、準備しなきゃ!」
と、ミナが。
「へっ、俺はとっくのとうに出来てたぜ!」
そしてラックが自慢気に言った。サクはラックの近くにヒョコッと座っている。
「え、森に行くのみんな。」
へぇー、みんな、森に行くのか。森ならこっから30分ぐらいかな? 少し遠い気もするが……
「ほら、リンマ君も準備しなさい!」
「え?」
「え?ってリンマ君。そもそも森に行きたいって言ったのはリンマ君でしょ? 早く準備しちゃいなさい。」
「そうだぜ、リンマ! お前が行きたいって言ったんだろ、早く準備して行こうぜ!」
いや、森に行きたいだなんて言ってませんけど。
「はい、これ魔法陣。」
そう言って渡されたのは魔法陣10枚ほどと、毛糸で作られた紐だ。よく見ると、その魔法陣には毛糸の太さと同じぐらいの穴が空いている。
「ねえ、お母さん。この紐って何?」
「この紐? あぁ、それはねこうやって……」
母親は紐を持つと、僕の腰に巻いた。そして、魔法陣の穴を紐に通し、紐の端と端をキュッと玉結びした。
「こうすれば、魔法を使いたい時に、使いたい魔法陣を引っ張れば、すぐに使う事が出来るでしょ?」
「うん……。」
この紐の意味は分かったけど、一番肝心なのは……
「なんで、森で魔法を使う必要があるの?」
森に行くだけなのに、火初級魔法をいるんだ?
「それは森に魔物が出るからに決まってるでしょう?」
「え!? 森に魔物なんて出るの!? いや、その前に魔物って……?」
「リンマ君、そんなことも知らないの? 魔物ってのは家畜は植物、人を食べる、特殊な動物みたいなものよ。」
「人を食べるの!?」
「そうよ。だから魔法陣が必要なのよ。分かったら、さっさと準備しちゃいなさい。」
「……はい。」
なんだかよく分からないが、危険なのが襲ってくる危険があるのだろう。
僕は魔物の事を考えるのをやめて、森に行く準備をした。
……てか、そもそも、なんで僕が森に行くのさ……まあ、文句を言ってもどうしようもないか。
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玄関を開け、外に出る前に母親に挨拶をしておく。
「お母さん。行ってきます。」
「うん、気をつけなさいよ。」
僕は魔法陣やらの準備を終えるとミナ、ラック、サクと四人で家を出て森に向かって歩いた。
魔法陣を持ったのは僕とミナだけで、ラックとサクは魔法が使えないらしい。
が、ミナは3年ほど前から魔法を使えたらしい。母親曰く、ミナの魔法は既に大人レベルで、数年の逸材だとかなんとか。
「ねえ、ラック。」
「ん、どうした? リンマ。」
「いや……森までどれぐらい歩くの? 家からしか森を見たことが無くてさ。」
「は? 先々週に行ったばっかだろう?」
「えぇ!? あ……いや……寝込んでた時に忘れちゃって……。」
「あぁ、そういう事か……大変だったな。ここから森までは30分ぐらいだし、途中に崖とかもあるわけじゃねえから、すぐに着くと思うぜ。」
ラックは優しく教えてくれた。最初はただの明るい奴だと思ってたが、案外優しいところがあるのかもしれない。
他にも聞きたい事は山ほどあるので、ラックに聞こうとしたら、
「ほら、ラック! サクにも話しかけてあげなさいよ! 寂しがってるでしょ!」
ミナが急に怒った口調でラックに言った。
「ちょ……やめて、ミナ。私、寂しがってなんかないから……。」
サクは顔を真っ赤にしてる。
あれ……サクってラックの事、好きなの?
「え、なんで、サクが寂しがんだ?」
鈍感なラックはなんの事だかよく分かってないらしい。頭の上にハテナマークを乗せている。
「あ……まさか……。」
ようやく気づいたらしいラックはサクに近づき何かを言おうとした。
「い、いや、違うの、ラック! わ、私は別にラックの事を好きなんて……」
サクはさっきにも増して顔を真っ赤にしてる。さっきまで、あんなに無表情だったのに……ほんとにラックの事が好きなんだな。
それを見て、ミナはニヤニヤしてる。
少し性格の悪い事だと思うが、僕も少しニヤッとしちゃってる。恥ずかしがってるサクが可愛いのだ。なんか、恋する乙女って感じがして、見てるこっちまで恥ずかしくなってしまう。
「魔法を使えない同士、仲良くしたかったのかぁ! 良いぜ! そうだよな、ミナは元々使えてたから良いけど、リンマまで使えるようになるんだもんな! 俺たちは魔法を使えないって事で、仲良くしようぜ!」
「……」
「……」
「……」
ラック以外のみんなが言葉を失った。
嘘だろラック。ここはサクに「俺もお前の事、好きだぜ!」とか言うところだろ。
ミナなんか頭を抱えてる。
そしてサクはと言うと、今までに無いくらい顔を真っ赤にして、震えてる。……泣いてるのか?
サクの姿を見た、ラックは自分が泣かせたと思いオドオドし始めた。
「え、ど、どうした、サク。俺と仲良くしたいんじゃなかったのか……グハッ! なんでいきなり叩くんだよ!」
「うるさい! もうラックなんて知らない!」
サクは怒って先に行ってしまった。
「え、ちょ、なんでサクが怒るんだよ……。」
訳が分からず泣きそうになったラックを肩を僕とミナでそっと叩いてあげた。
「もう、いいから行こうよ、ラック。しょうがない。ラックは悪くないよ。」
「ええ、そうよ、悪いのはあなたの鈍感さ。落ち込まないんで。」
「お、おう。」
ラックはまたもや、頭にハテナマークを浮かべてた。
ラックも、もう少し成長したらわかるんじゃないかな。
「って、ここが森……?」
顔をあげると、既に森に着いていた。
「あ、ほんとだ! もう着いたんだ! ほら、ラックも、落ち込んでないで、森に着いたわよ。」
「え、あぁ、森に着いたのか。」
みんな、森、森と言ってるが、ここは本当に森なのだろうか。だって、僕の記憶の中にある森は木が生い茂ってるイメージしかない。
なのに、ここの森は木が生い茂ってるだけじゃなく、赤や青、黄、緑、橙色をした小さな蛍のような光がそこら中をフワフワと飛んでいる。いや、浮かんでいるのか?
それに、森を包む独特な匂い。聞きなれない動物達の鳴き声。五感すべてが神秘的な森の雰囲気に心を奪われる。
とにかく、こんな森を見るのは初めてだ。
「やっぱりここは……。」
魔法を見た時もそうだったが僕は、改めてここが僕の知らない世界、いや、異世界だと言うことを実感した。