僕って誰?
意識が覚醒する。パチっと目を開けると、自分が今寝ていたベッドの左側のある窓から太陽の眩しい光が差し込んでいた。
「んっ……はあ。」
体を起こし伸ばした後、目をこする。
寝すぎたのか少しだるい。
なんとなく長い夢を見てた気がするが全く思い出せない。はて、どんな夢だっただろうか……まあ、いいか。
てか、お腹空いたなぁ、カップラーメンでも作るか……え、カップラーメン? なんだっけそれ?
いや、その前に僕って昨日まで何し……ん、?? あれ? ……ここってどこだ? そして……
「僕って誰だ?」
いやいや! え? 僕って誰?
ベッドから飛び出し、まず周りを確認した。ここはどっかの一室らしく壁は木でできている。この部屋にあるのは僕が寝ていたベッドと勉強机、大きな本棚だけで、部屋の大きさにこの家具の少なさは少々物足りない。
あと立ってみて分かった事だが、なにか自分の視線の位置に違和感を感じる。少し低いというかなんと言うか……こんな物って大きかった? みたいな。ベッドだってこんなに大きく感じたのは子供の時以来だ。
子供……? あ、そうか! 僕は子供になったのか! ……ん? じゃあ僕は大人だったのか? そう言われてみれば大人だった気もするが自分が何歳だったのか思い出せない。てか自分の名前も出身も顔も……なにも思い出せない。 思い出そうとしても頭の中に靄がかかったみたいで分からない。ああ、これって確か記憶喪失って言うんだっけ? ほとんど何も分からないけど自分がこんな小さくないという事は分かる。
ふむ……もう何がなんだか分からん。
そう部屋の真ん中で思っていると、
「はーいリンマくーん、入るからねー。」
誰かがドアを開けて入ってきた。
「うわぁ!」
入ってきたのは金髪の美人な女性だった。明らかに自分より背が高く、自分の体が子供だということに確信がいった。そしてその女性は僕が驚いたことに何故か悲しんでいた。
「うぅ……リンマくん、そんなに驚かなくたっていいじゃない……もう、お母さん泣いちゃうから。」
僕のお母さん? いや、僕の母親はこんな人じゃなかった気が……うーん、おし、聞いてみるか。
「あの、あなたは誰ですか?」
そう言うと
「えぇ!? 酷いわ……酷いわリンマ君! 私の事を忘れたって言うの!?」
僕の母親を名乗るその女性は僕の肩を両手で掴み早口で聞いてきた。
「あ……いや、そういう訳じゃ……。」
この人からは何かめんどくさそうな匂いがする。ここは口裏を合わせるのがいいか。
「ふふ、冗談よ。リンマくんは3日も寝込んでたから記憶が混濁してるのよ。今日はもう寝なさい。」
すると女性は優しく笑うと僕を抱っこしてベッドに寝かせた。驚いたのは演技だったらしい。それよりも今、気になるのは……
「あの……僕って3日も寝込んでたの?」
「ええ、そうよ。覚えてないの? すごい熱で倒れたのよ。」
そうだったのか……でも、これは寝過ぎたからという理由で記憶混濁してるわけではない気がする。まあ、何も分からないこの状況で、あれこれを考えてもね。一旦寝るか。体もだるいし。
「じゃあ、お母さん。おやすみなさい。」
「うん、おやすみ。」
案の定この後、寝ても僕の記憶が整理されたり戻ったりする事はなかった。