The Power of Love/Huey Lewis & The News
前回までのあらすじ
ラブコメ展開ナシ!!
女児……だな。うん。ただ、声を掛けて良いモノかはわからない。
ただ、このまま身動きが取れないままでも居られないので、顔を上げた時にパーツが何も無いとかマジでやめて欲しいとも思いつつ、意を決して話し掛けてみる。
「あ、あの……お嬢ちゃん、どうしたのかな?」
女の子はゆっくりと俺の方を見上げると、俺の恐怖心をよそに可愛らしい顔を覗かせた。
「くぅ足つかれた! あと、のどかわいた」
え? コレどうしたらイイの? 下手に何かを買い与えたら、所謂『声かけ事案』になったりするんじゃないだろうか……
不安でエリカの方を見るが、顔の前で手をブンブンと振るジェスチャーをして、本件とは無関係を決め込んでいる。
「お嬢ちゃん、お母さんかお父さんは?」
このコの家庭事情に配慮するほどの余裕など無く、とりあえず保護者の確認をしてみた。
「おじょちゃんじゃない! くぅだよ!!」
くぅ……ちゃん? 一瞬、金融会社のCMに出てきたチワワが頭を過ったが、恐らく別物だろう。
「そ、そうか、くぅちゃんか。……それで、お父さんかお母さんは?」
迷子だとしたら、警察に届けるべきだろうか? とはいえ、駅前の交番まではやや距離がある上、夜遅くに女児を連れて飲み屋の多い商店街を歩くのも気が引ける。
……それよりも、だ。
さっきから俺は、この女の子に見覚えがある気がしてならない。
遥か昔に会ったような……だとしても、こんな小さな女の子と何年も前に会っているハズがない。
「だから! くぅ、のどかわいたの!!」
それにしてもスンゲェ我が儘だなぁ。まぁ俺が子どもの頃にも、こういうコが……
あぁ! そうか!! このコ、子どもの頃のアキにソックリなんだ!!
もしかして……俺が電柱に頭を叩きつけた拍子にタイムスリップでもしてしまったのでは?
ラブコメ展開でもホラー展開でも無くて、SFとかそっち方面にテコ入れしたのか?
いや、でも自分で『くぅ』って名乗ってるよな。
だとしたら、このコは間違いなく芳田亜紀の何かだろう。
「あ、あの、くぅちゃん? ひょっとしてお母さんの名前って、アキさんじゃない?」
確信を持って少女に問いかける。
「ママ? ママのおなまえ、アキだよ! パパはしゃちよー」
そう言ってケラケラ笑っているが、パパが社長とか、そういう自慢要らねぇんすけど。
まぁ15年も経てば、同級生が玉の輿に乗るコトもあるだろう。
……に、しても、こんな小さな子どもを放っておいて、当のアキはどこに行ってやがるんだ!
とりあえず、保護者が同級生ってコトが判明したので、最悪イノベに丸投げすりゃ済むと思い、左右から車が来ないのを確認して、通りを渡った自販機で小さいペットボトルのジュースを買った。
「くぅちゃんのお母さんのコトは知ってるけど、ホントは知らない人からモノ貰っちゃダメだからね?」
念のため断り、というか言い訳をしつつジュースを手渡す。
アキの娘と思われる少女はペットボトルを受け取り、頑張って蓋を回そうとしているが、子どもの力ではなかなか開かないようだ。
「あ、ゴメンゴメン! 固いよね」
少女の目線までしゃがみ、両手を出してペットボトルを受け取ると、捻って蓋を開けて返す。
少女はそれを両手で持ち、コクコクと少しずつ飲むと、落ち着いてきたように見える。
プハーとため息混じりに大きく息を吐き出して、ガードレールに寄り掛かった。
疲れているというよりも、時間的に眠いのではなかろうか? 子どもの扱いに慣れていないので、こういう時は本当に困る。
色々と訊きたいコトもあるが、どうやって話を切り出そうか迷っていると、バタバタと遠くから走り寄る人影が見えた。
「ちょっとクレア! 勝手に一人で走ってっちゃダメでしょ!!」
保護者登場か……正直会いたくないが、このタイミングでここを離れると、怪しさ満載である。
「ハァ……ハァ……あの、スミマセン! そのコ、ウチの子どもです!! ハァ……ハァ……」
息を切らせてアキが駆け寄ってきた。
そりゃ幼い自分の子どもが、誰かも解らない大人と一緒に居れば不安になるのは当然だ。
「いえ、大丈夫ですよ。こちらこそスミマセン、喉が渇いたって言ってたんで、心配で勝手にジュース買い与えてしまいました」
言ってて気付いたが、アレルギーとかあったらどうしよう……
「あ、あの! アレルギーとか大丈夫ですかね? 俺、子ども慣れしてなくて……」
アキが息切れした呼吸を整えている間、不安で仕方なかった。
「いや、平気です……ハァ、ハァ……ゴメンなさい。ジュース代お支払いします!!」
あのアキが、常識的な話をしているなぁと、感慨深く聞き入ってしまった。
「あ、いや全然! たいしたコト無いですから」
イノベに即バレしたコトを考えても、素性がバレる前にさっさと退散した方が良さそうだ。
「じゃあ、僕らはコレで……」
ペコりと頭を下げて立ち去ろうとしたのだが、お互いにお辞儀をした時にアキと目が合ってしまった時に、マズいという表情を浮かべてしまったのが間違いだった。
「あれ? 間違ってたらゴメンなさい……スエじゃない?」
ほらバレたよ……
どう返答してイイか頭を働かせているウチに、しばらくアキと見つめ合ってしまっていた。
大人になっても相変わらず可愛い……というか、美人になったなぁなどと感心している場合じゃないのに。




