世界はそれを愛と呼ぶんだぜ/サンボマスター
「いやぁマジで15年……振り? ぐらいだよな! こんなトコでスエに会えると思ってなかったわ」
イノベの言う通り、中学三年の途中から学校には通わず、連絡はあったが会うコトもせずに今日に至っている。
お陰で思い出したくもない、ツラい過去の記憶を掘り起こされてしまった……
「そっちも元気そうで何よりだよ。あのイノベが今や住職とはね……立派なモンだ」
片や俺はといえば、うだつの上がらない派遣労働者なのになぁ……という皮肉は飲み込んだ。
ここまでネジ曲がってしまった俺は、かつての友人と今さら何を話したらイイっていうんだろう?
「まさかスエと酒飲める日が来るとはね。挨拶回りが終わったら戻ってくるよ! 積もる話もあるから」
そう言い残して座敷の奥へお酌をしに行ったが、正直戻って来られても困る。
俺の方は、お前と祝うべき感動の再会などあり得ないのだから。
「あぁ、飲み過ぎたかも。ちょっと夜風にでも当たってくるわ」
リトルデイトの4人には申し訳程度の断りを入れておき、このままバックれてしまおうと外に出る。
昼間はやや賑わっている寺町であるが、夜は街頭が灯るだけで人通りもほとんど無い。
「はぁ……キツい……」
ため息を吐きながら、頭をゴツゴツと軽く電柱に打ち付ける。
「あら、若手だった頃の藤原喜明のトレーニング?」
振り返ると、声の主はエリカだった。
「そんなウィキペディアにも載っていないようなエピソードを! ……いや頭突きのための額の強化じゃなくて、ちょっと中の居心地が……ね」
「へぇ~奇遇ね。私も知らない人がたくさん居るのは苦手なのよ」
初めて会った男の家で、朝まで呑んだくれてたヤツらの言葉とは思えない。
「いや、俺だってちょっと前までは知らない人だろうよ」
「んー、アミオは大丈夫そうだと思ったから。ズケズケとモノを言う感じじゃないし、酔って絡んでくるコトもなさそうだし」
ズケズケと言ってくれるじゃないか! まぁ確かにエリカは他の3人に比べれば、常識的な気がしないでもない。
「っつって俺のコト『アミオ』って呼び捨てなの、エリカだけだからね?」
「そうね……でも、本名じゃないでしょ?」
「知ってたのかよ! じゃあ親が付けてくれた名前で呼んでくれっての」
皆さんお忘れだと思いますが、俺の名前は末野綱男なんですよ。
全員から『マツノアミオ』として認識されていると思ってたんだけど、エリカは解ってたのね。
「つな…やっぱヤダ! ……だって、恥ずかしいじゃない」
何コレ? このコ急に照れてるんですけど!!
ってそういえば俺、風呂上がりのエリカとか目撃してるの思い出した。(4話参照)
もしかしたら、どこだか知らないけどエリカの地元の風習で、聖闘士星矢のシャイナさんみたいに裸を見られた相手と結婚するか殺すかみたいな決まり事があるのでは……
っつーかコレはアレか? ここ最近ずっとツラい展開だったから、俺に対するご褒美回ってヤツなのか?
「っていうか、あのさ……さっきから、ずっとアミオに、訊きたかったコトがあるんだけど……イイ?」
確かに破天荒なメンバーとバンドをやってるとは言うものの、一般的に見てもエリカは可愛い方だと……思う。
こんなオッサンと二十歳そこそこの女子大生とか、まぁ無くはないよな……などと、持っている少ない都条例の引き出しを脳内で漁る。
ここに来て急なラブコメ展開とか、PV伸び悩んでテコ入れを覚悟したのか?
モジモジしながら、俺の方を見たり見なかったり……ああ、もどかしい!!
「お、おう、どうした? 何でも言ってくれよ」
女性慣れしてないので、こんな時にどんな顔をしてイイか解らず、俺は夜空を見上げてばかりいた。
「じゃあ、訊くね? ……あの、
さっきから……
後ろに居る、その子…………誰?」
怖い! 怖い怖い怖い!!
ホラー展開にシフトチェンジとかマジでやめてくれ!!
ただ、そう言われて気にならないハズがなく、恐る恐るゆっくり振り返ると、足元に小さな影が見えた。
「うぉおおぉ!! な、何?! 誰?」
暗がりでハッキリとは見えないが、そこには年の頃なら4~5歳ぐらいの女の子が立っていた。




