Wake Me Up When September Ends/Green Day
ずっと続いている胃痛と吐き気は、一晩中起きていたという身体的なモノなのか、学校のコトを考えていたからという精神的なモノかは解らないが、とりあえず寝ずに考えた結論としては、
『戦地に乗り込んで友人を助ける』
という一つの選択肢だった。
まだ登校する時間には余裕があるので、状況確認のためイノベにメールを打つ。
『今日の時間割ってどんな感じ?』
学校に潜入してイマイの誤解を解くには、万全の準備が必要である。
イマイのクラスに飛び込んで、もしも移動教室だったら振り上げた拳の落とし所を失うハメになるからだ。
俺にとって地獄にも似たその場所では、やはり綿密な計画を立てる必要があるのだ。
プランAは、給食の時間に放送室を占拠して、校舎全体に訴えかけるというモノだが、なかなかにガードが固そうなイメージ。
プランBは、体育や理科などで教室を離れているなら、そこに突っ込み勢いで何とかする予定である。
もちろんノープランではあるが、状況次第ではイノベの助けを借りても良い。
そんな思いを張り巡らせていると、イノベからメールの返信が来た。
『年末行事の都合らしくて、前倒しで球技大会を3~4時間目にやるってさ。もしかして来るの?』
来るのかと問われると正直困るし、まさかの学年全体行事という俺のプランに無かったパターン。
『調子良かったら行くかも』
と、イノベにはメールで返信しておいて、球技大会に特攻した際のイメージを膨らませる。
まずはイノベを見付けて計画を話し、そこからイマイを探しだして、疑惑を、晴ら、し、て……
完徹で頭を使い過ぎたためか、急に猛烈な睡魔に襲われてしまい、気絶にも似た寝落ちを炸裂させた。
「うぉ! 寝てた!!」
どれくらい眠ってしまったのか、飛び起きて時計を見ると昼前の11時。しっかりと4時間ほどの睡眠を取ってしまった。
夕方になっているという最悪な事態は免れたが、急いで用意してギリギリ間に合うぐらいだろう。
意を決して約2ヶ月ぶりぐらいで制服に袖を通すと、悪霊にでも憑依されているが如く心地が悪い。
学校ではちょうど球技大会の真っ只中だろうが、終わるまでには辿り着きたい。
玄関を出て通学路を進むと足が重く、まるで泥沼を歩いているような感覚に陥る。
吐き気や胃痛と格闘しながら、やっとの思いで学校に到着すると、授業中だからか昇降口はシーンと静まり返っていた。
校庭から、ソフトボールに興じる同級生の声が聞こえて身体が硬直し、下駄箱から落書きだらけの上履きを出すと汗が噴き出してきた。
いつの間にか、こんなにも臆病者になってしまっていた自分に驚きながらも、誰かに見つからないよう教室を目指す。
3年生の教室が並ぶ廊下は無音だが、自分の心臓がうるさいぐらいに鼓動が速くなっていた。
誰も居ない自分のクラスに入ると、胃液が食道まで込み上げる。
しばらく来ないウチに、他人の家どころか掃き溜めのような居心地の悪さを感じながら、自分の席に座ってみた。
もう此処には戻って来ないという決意を固めて立ち上がり、ロッカーのジャージを取り出す。
全身に纏わり付いていた制服を脱ぎ、悪意をそのまま形にしたようなジャージに着替えると、制服の比ではないぐらいの着心地の悪さだった。
切り抜かれたジャージの股間から、家にある一番派手なトランクスが丸見えである。
上は上で、こちらも雑に切り取られた乳首周りから中に着た白いTシャツが覗いている。
随分とみすぼらしい格好ではあるが、これが今の俺の戦闘服なのだ。
窓から校庭を見下ろすと、ちょうど試合が終わったところのようだ。時間的に最終試合だと思うので、ゲリラ的に突撃するなら今しかない。
俺は両手で頬をバチンと叩き、校庭に向かうため教室を出た。




