JET BOY,JET GIRL/MELONMAN
「くぅぅ……まさか俺だけ別のクラスって」
ここはイマイだけが別で、愛しの彼女と離ればなれ……って流れじゃねぇのか。
「まぁスエは面白いから大丈夫だよ」
勝手なコト言いやがって! 俺のコトを一番オモチャにしてたのはお前じゃないか!!
「寂しくなったらウチのクラス遊びに来いよ」
こんな時だけはイノベも優しくしてくれる。泣いてしまいそうだ。
そんな寂しがりな俺も、一学期は元々同じクラスだったヤツらとそれなりに楽しく過ごし、二学期を迎えて久々の登校。
そんな中、夏休み中に明らかに調子に乗ったであろう輩が、ブリーチした髪を不自然なくらい黒々と染めて登校してきた。
正直、コイツのコトは顔も名前も思い出せない。と、言うより、俺の脳内がフィルターを掛けて、思い出させないようにしていると言った方が正しいだろう。
ソイツは一学期と比べて周囲への対応も横柄になり、同じくイキがったヤツらとつるんで高圧的な態度を取っていた。
そんなある日の給食で、俺は牛乳を盛大に吹き出した。
「うわ! 何だ? コレ……ムチャクチャ辛ぇ!!」
一杯完食で認定証が貰える、地獄ラーメンや激辛カレーのような刺激が口内に走った。
「ギャハハハハ! 相変わらずリアクションがイイなぁスエノ!!」
教室の片隅で、目付きの悪い連中が俺を見て笑っており、傍らには空になったタバスコのビンが転がっていた。
「いや、コレ、出口ブッ壊れちゃうヤツだから」
俺の返しでクラスは一笑い起きていたが、限度を知らないイジり……というかセンスが無いと、こんなにもキツイものか。
俺は牛乳を飲み干すコトなく、残りを排水口に流し、水道で口を濯いで教室に戻った。
翌日、登校して下駄箱を開くと俺の上履きはカタカナで『ナイキ』やら『エアマックス』やら、油性マジックでメチャメチャな落書きが施されており、見るも無惨な姿に成り果てていた。
「おー、みんな見ろよ! スエノの上履きがオシャレになってるぜ!!」
振り返ると、不快な笑みを貼り付けたソイツが立っていた。
「うわぁ……コレ、範馬刃牙の家じゃねぇかよ」
腹の底から込み上げる怒りを抑えつつ、俺は愛想笑いで返してしまう。
やはり俺の返しで、その場に居合わせたクラスメイトからは一笑い起きていたが、しばらくコレを履き続けなきゃならないと思うと憂鬱でしかなかった。
コレはもう、イタズラというより嫌がらせだ。面白くないし、何より相手の迷惑を考えないのはセンスが悪すぎる。
そして極めつけは、体育の準備でジャージに着替えようとした時に起きた。
「お! 変態が着替えるぞ!!」
当然声の主はソイツだったのだが、変態とはどういうコトだ?
俺は、嫌な予感しかしないがジャージを広げると、上は乳首のところをハサミで雑に切り取られ、下は股関の部分がくり抜かれていた。
「さっさと着替えないと授業に遅れるぞ! 変態!! ハハハハ」
着れるかよこんなモン……精一杯の強がりで、何とか声を張った。
「カ、カウボーイが、履くヤツ……かよ」
周囲を見渡すと誰も笑っておらず、関わり合いにならないよう、皆そそくさとその場を後にする。
俺は誰も居なくなった教室で立ち尽くし、仕方がないので保健室に向かった。もう、体調不良で授業を休む以外の術が無かったのだ。
外から聞こえる授業の声を聞いて、今日はバスケットボールだったのかと考えながら、チャイムが鳴るのを待った。
みんなが着替えた頃合いを見計らって教室に戻ると、俺の机には
一輪挿しの花瓶が置かれていた。
教室では、俺に対する罵詈雑言が放たれていたように思うが、もう耳がそれを拒絶していて何も届いていなかった。
机の横に掛けられたカバンを持って廊下に飛び出すと、授業に遅れそうになっていたイマイと擦れ違う。
「スエノ早退?」
俺は振り返りもせず、学校を飛び出して自宅への道を最短距離で走った。
ベビーカーを押したお母さんや、年配者が多めの真昼の街を駆け抜け、自宅が見える通りに出たところで、俺は酔っ払いでもないのに吐いた。




