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みそギ!~三十路で始めるギター教室~  作者: ボラ塚鬼丸
teenage riot編
42/175

Sweet Child O' Mine/Guns N' Roses

 イマイとアキが付き合い始めたという噂は、瞬く間に全校を駆け抜けた。


 誰もが認める美男美女であるため、イマイに想いを寄せる後輩の女子生徒や、密かにアキを狙っていた3年の男子生徒など、あからさまにショックを受ける者も少なからず居たようだ。


 中学2年生という学年も、間もなく終わろうかという時期だが、イマイはこれまで以上に絶好調の様子である。


 元からクラスの人気者だったのだが、コトある毎に俺にイタズラを仕掛けて、いつも周囲を爆笑させていた。


 ある日の給食で、俺は牛乳をストローで吸い込んで大声を上げた。


「うわ! 何だ? コレ……ムチャクチャ甘ぇ!!」


 周りを見回すと、イマイとその周辺がクスクス笑っていて、傍らにガムシロップの容器が5つほどと、ご丁寧にスポイトが転がっている。


「盛りやがったなテメェ! 身体に蟻がタカるレベルで甘ぇだろ!!」


「アハハ!! でもホントに蟻がタカったら、胸元ハダけたイタリア人みたいで格好良いじゃん」


 一瞬、真っ白いカッターシャツから、セクシーに胸毛が飛び出した男前を想像した。


「そんな都合良く分布されねぇから!」


 そういう問題でも無いんだろうが、素足にタッセルローファーやモカシンで、ミラノ辺りを歩くイタリア人のイメージを払拭しようとして、おかしな返しになってしまった。


「じゃあ胸元にだけ塗ってみたらイイじゃん」


「クヌギかよ……そういうプレイに目覚めても怖ぇわ!」


 給食中、俺とイマイのやり取りにクラスが夢中だった。


 普段から、イマイやイノベとふざけるコトはあったが、こんなにも注目されるのは初めてで、俺は何だか照れ臭くなり激甘の牛乳を一気に飲み干して、空のパックを頭上高く掲げると、クラスは歓声に包まれ一笑い起きる。


 イジられるのは慣れていないっていうのに……


 また別の日には、朝登校して下駄箱を開くと、当時流行っていたナイキのエアマックス95のカラーリングが施された上履きが入っていた。


 取り出して、不思議そうにそれを眺めていると、イマイが後ろから声を掛けてきた。


「おや? スエノさん! エアマックスを上履きにするなんてオシャレっすね」


「お前か……俺がエアマックス狩りに遭ったら教室入れなくなるだろ!」


「ハハハ! スエの上履きが高値で転売されちゃう」


 悪びれもせずヘラヘラしやがって。


「彼女出来て調子乗ってんじゃねぇよ!」


 昇降口に居合わせたクラスメイトが、朝からテンション高めで笑っていた。


 そんなコトがあった翌週、俺は仕方なく派手なグラデーションの上履きを履いて、次の授業の準備で体育のジャージに着替えていた。


「ハマー! もう着替えたのか? ブラザー!!」


 背後から声を掛けてきたのはイマイだったが、ハマーって誰だ?


「今度は何だよ……っつーかハマーって誰?」


「え? ジャージの胸元に書いてあるじゃん!」


 そう言ってイマイが俺を指差した先を見ると、体育着の刺繍が削り取られており、『末』の字の払いと『野』の字のマと縦線だけが残されており、外国人が作った印鑑みたいになっていた。


「マジかお前……もう俺、宮城リョータみたいな髪型にしないと名前負けするじゃねぇか!!」


 授業前のバタバタした教室に笑いが起きた。


 イタズラにも程があるだろ……俺のコトをイジりまくるイマイには慣れてきたが、毎回それに律儀に返してしまう自分も情けない。


 とは言え、この頃の俺は親友と呼べる友人達と一番関わっており、楽しかったのは間違いない。


 その後しばらくは『ハマー』と呼ばれ、クラスでも盛り上がっていたが、進級に伴いクラス替えの時期になった。


 3年生に上がると、残念ながらイマイとイノベ、アキとは別のクラスになってしまったのだが、ここからの数ヶ月が、まさか俺の人生に大きな影を落とすコトになろうとは……

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