恋の1000000$マン/すかんち
『ブチッ!』
目を閉じて熱唱していた恋愛ソングが、二番に差し掛かろうというところで突然無音になった。
異変に気付いて画面を見ると、ディスプレイが真っ暗になっていたので、カラオケの機械が不具合を起こしたのかと思ったが、イノベが鬼の形相で電源を落としていた。
「マジで気持ち悪ぃ……カラオケでこんなにもキモいと思ったの初めてだわ」
「な、何だとコノヤロー!」
気持ち良く歌ってたところを強制終了された上に、ここまで面と向かってディスられたコトに戸惑いながら、俺はイノベを睨み付けた。
「あのさ、男二人でカラオケ居る時点で普通に気持ち悪いのに、何でそこまで感情乗せてアイドルソング歌えるんだよ! 停止ボタンじゃなく電源切った俺の気持ちも考えろよ!!」
「え……ダメだった? 他の曲にすれば良かった?」
威圧的な態度を取ったにも関わらず、トーンダウンするどころか怒りがヒートアップしてるコトに面食らって、普通に聞き返してしまった。
「そういう問題じゃねぇよ! お前が熱唱してる間、ドアのガラスから何人かに覗かれて笑われたんだぞ? 死ぬほど恥ずかしかったわ!!」
「あ、うん。それはゴメン」
これから始まる計画に対し、気合いを入れようと思ったのだが、ベクトルがあらぬ方向に向いてしまったようだ。
それにしても俺の歌、気持ち悪ぃのかよ……そっちの方がショックだわ。
「おっす! お待たせ!! って、何で二人ともお通夜みたいになって……あれ? 他に誰も来てないの?」
何も知らないイマイが、屈託の無い笑顔で元気良く登場したが、俺もイノベもどんよりとした空気を纏い、無言で迎え入れた。
「お、おう。ちょっと今後の生き方について考えてたトコだよ」
あんなにも不快になるなら、俺はもう人前で歌うコトをやめておこう。
「それよりイマイ! 今日はお前の人生の分岐点になるから、しっかりやれよ?」
「分岐点? 何で?」
俺はこの後、他のクラスメイトはアキしか来ないコトと、タイミングを見計らって二人だけにするから、キッチリ告白するように伝えた。
「え! こ、告白って……」
「お前、アキのコト好きなんだろ? 違うならゴメン、別のヤツの告白手伝うから」
「いや、そうじゃない、俺も……好き、だけど……急に言われても心の準備が……」
コイツもわかりやすく可愛いな。耳まで赤くしやがって!
「急にって言っても、俺らもう中学2年の3学期だぞ? 来年じゃ受験だ何だで恋愛どころじゃなくなるから、今しか無いだろ? 先伸ばしにしてフラれるか?」
ソファに座り込んでモジモジしていたイマイは、俺の言葉に真剣な表情になり、目を閉じて大きく息を吐く。
「わかった、俺、告白する」
キリっ! と目を見開き、こちらを向き直ったイマイは、男前過ぎて俺が恋に落ちそうだった。
「……あー! でも、どうしよう、スゲェ緊張する!!」
一瞬で崩れ落ちて、再びモジモジし始めるギャップ。これ見せたら大抵の女子は萌えるだろ。
「まぁ、イマイなりに想いを伝えりゃイイんだよ!」
そうこうしているウチに、キョロキョロしながらガラス扉を覗くアキが到着した。




