桃色片想い/松浦亜弥
「えーカラオケ? 何でアタシがアンタ達と行かなきゃなんないワケ?」
アキはやや明るい色の髪を一束掴み、毛先の枝毛をちぎっては、時折横目で怪訝そうにこちらへ目をやる。
イマイとアキをくっ付ける作戦の第一段階として、昨晩必死に考えた『綿密な計画』が、既にピンチを迎えていた。
個人的なアイデアの中には、みんなで仮装大賞に出場するというモノもあったが、さすがに準備に時間が掛かる上に、合格出来なかった時に欽ちゃんから同情を買うインタビューのコトを考えると、とてもじゃないが恐ろし過ぎて却下した。
と、言うより、別にみんなの思い出を作るコトがメインではないので、簡単に二人を焚き付けて隔離してしまえば達成するのではという見解に至ったワケだ。
「あ、いや、ほら、もうすぐ俺らも中3になるワケじゃない? そうしたら、受験で遊んだりも出来なくなっちゃう……から?」
「つか何で疑問形? 怪しいなぁ……」
ここで断られるとすべてが台無しになってしまうが、我ながら好きな女子と友人を付き合わせようとしている時点で、大きなお世話であり怪しさも満載である。
「そりゃそうだよな。女子も何人か来る予定だけど……いきなりそんなコト言われても困るよなぁ? イマイにも中止っつっとくかなぁー」
チラリとアキを見ると、明らかに反応した様子が伺えた。
「べ、別に行かないとは言ってないじゃん! まぁ、ちょっとぐらいだったら……イイけど」
クソぅ、この恥じらいが俺に向けられたモノではないコトは解っているが……可愛いなコイツ!
くっきりとした二重瞼の切れ長な瞳は、一見性格がキツそうに見えるのに、ホントは友だち想いで頑張り屋さんっていうギャップ萌え。
絆創膏だらけの指で、手作りの弁当やらクッキーなんて渡された日にゃあもう……
「ちょっと! 聞いてる?」
いかん。つい可愛い過ぎて俺との恋物語を妄想してしまった。
「お、おう、じゃあ放課後に駅前のカラオケで。たぶん先に行ってるから受付で部屋聞いてよ」
今ならケータイで連絡すりゃイイじゃん、とか思うだろうけど、当時は打っては消してメールにスゲェ時間が掛かったモンだった。
とにかく、これでアキは抑えられたので、イマイとの交渉に取り掛かった。
「カラオケかぁ……最近部活ばっかで行ってなかったからなぁ……うん。行く行く!!」
イマイはこちらの心配を余所に二つ返事だ。
中学2年生で身長が172~3cmほどあり、化粧でもすればモデルのような顔立ちのイマイは、サッカー部レギュラーでクラスの中心人物。
ヒーロー戦隊モノで言えばレッドのポジションという感じである。
こんなヤツが、どうして俺なんかと仲良くしてくれるのかは謎であるが、そんな分け隔て無く人と接するコトが出来るから、アキもイマイに惹かれたんだろう。
アキには『女子も来る』と伝えてあるが、俺が声を掛けられる女子など居ないし、女子とのコミュニケーションなど屁とも思わないイノベにも、誰も誘わないよう釘を刺しておいた。
放課後、俺とイノベは一足先にカラオケ店の一室に到着。
最終的な段取り……と言っても、どのタイミングで二人にするかだけ話し合っていた。
「そんなんで上手く行くモンかねぇ?」
イノベが首を傾げてそう言うと、おもむろにタッチパッド式のリモコンを操作し始めた。
「大丈夫! とりあえず士気を高めるために一曲歌っておくか!」
俺はイノベからリモコンを引ったくり、当時好きだったアイドルの恋愛ソングを入力してマイクを握った。




