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みそギ!~三十路で始めるギター教室~  作者: ボラ塚鬼丸
Bonus track ~思い出にもなれない~
32/175

素晴らしい世界

 前のバンドと入れ替わりでステージに上がると、リエコは人混みを掻き分けて最前付近まで進んでいた。


 久々に会ったのに、ちゃんとした挨拶すら出来ないのがもどかしいが、セッティング前に笑って手を振った。


 ライブ中に揉みくちゃにされないか心配だけど、今はアミオさんに頼るしかないよなぁ。


 要人のSPみたいにマンマークしてるのに、相手が女の子だから密着し過ぎないようにしてるのが可笑しくて、声を出して笑いそうになった。


 うん。変に緊張してたけど適度に解れたわ。


 セッティングが済んで一旦ステージ袖にハケると、続いて他のメンバーも戻ってきた。


「あー緊張する! ずっとこのハコ出たかったんだよね」


 サクラはサクラで緊張の理由があるみたい。


 確かにここCircus(サーカス) Parade(パレード)ってハコは、ビッグネームのバンドが出演してた謂わば登竜門的なライブハウスで、しかも渋谷の駅前再開発で近々閉店が確定してるから尚更感慨深いんだろう。


「じゃあ緊張してるサクラは、フロアでアタシの友達の護衛してるアミオさん見て落ち着きなよ」


「何それ? あとで見なきゃ!」


 サクラはケラケラと笑いながら、スティックで腕のストレッチをしてる。


 たぶん今日は大丈夫。


 フロアの照明が暗転して、BGMがアタシ達のSEである

Dream Lover/The Rebel Pebbles

に変わる。


「ぃよし! んじゃ行こうか」


 最近は、対バン次第で前売りもボチボチ売れるようになってきたからか、ステージに出ると歓声が上がった。


 チラっとリエコを見ると、控えめに拍手をしている。


『お待たせ!』


 声を出さずに伝えようとして、大袈裟に口を動かすと、リエコがコクンと頷いた。



「リトルデイト! 始めます!!」



 サクラがそう言ってカウントを取る。セットリスト6曲、全力で()ってやる!


 リエコも含めて、アタシ達を初めて観る人に名刺代わりのアップテンポの曲を1曲目に持ってくると、馴染みの客の動きが徐々に波及して、フロアが全体が蠢いていく。



 っつーかヤバい……ムッチャクチャ楽しい!



 普段より確かにテンション高めだけど、特別な人に届ける演奏って、こんなにも違うモンなのか?


 楽し過ぎて、いつもよりテンポ走ってる気がしてサクラとマキにアイコンタクトを取ると、2人とも解ってる顔で苦笑い。


 でも、やっぱり楽しそうだし、エリカもテンポアップしてるのに、しっかりと歌を乗せてくる。


 爆音の中、体力を磨り減らしながら1曲1曲を終えていくと、疲れているからか、聞こえるハズのないメンバー3人の息遣いまでわかるような気がした。


 不思議な感覚だと思ったけど、ライブがただただ楽しくて、気付けばラストの曲。


 途中リエコのコトとか完全に忘れてたわ。


 あぁ寂しい……まだまだここに立ってぶっ倒れるまで演奏していたい。


 いつもライブでは、瞬間瞬間でピタッと合うコトは有っても、今日ほどメンバーと呼吸が合ったコトは無かった。


 今まで点でしかなかったのが線になったって感じ。


 アタシ以外の3人も、きっと気付いてるんだろうってのは、顔を見ればすぐわかった。


 そして最後の曲のイントロが鳴った。

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