また何処かで
「う~わっ! 君たちブサイクだなぁ~。特にリエコは美少女が台無しだよ?」
散々泣きじゃくって、アタシも含め日野日出志のマンガのような、出目金みたいな目をしながら、3人並んで学校の正門を出た。
「まぁミチヨは普段と大して変わらないけど、やっぱボク達は泣き過ぎちゃったかもねー」
「ウフフ! ヒドい!! ……でも、最後に楽しい思い出が出来ました」
リエコは名残惜しそうに校舎を振り返って、深々と一礼した。
近くでクラクションが短く二回鳴ったので、そちらを向くと見覚えのある車がハザードランプを点滅させて停まっていた。
リエコの家の車だった。
リエコは小走りで車に駆け寄ると、制服のスカートをひらめかせてこちらに向き直った。
「ミチヨ! マキ! またね!!」
リエコの『またね』という言葉だけで、アタシ達はもう大丈夫だと思った。
「おー! またな!!」
マキと二人で大声で叫び、千切れるほど両手を大きく振った。
「アハハ……初めてボク達のコト呼び捨てにしてくれたね。出会えて良かったなぁ」
「うん。それじゃ、北欧までアタシらの音楽が届くように頑張るか!」
本当にそんな日が来るかわかんないけど、本気でやらなきゃ絶対に出来ないから、アタシ達はその夏、何かに取り憑かれたように練習をし始めたんだ。
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「……ヨ……チヨ………ミチヨ!……ちょっとミチヨさんってば!」
「んぁ? 何? 海着いた?」
「海なんて来てないよ! 楽屋で寝てると他のバンドに迷惑でしょうが」
テーブルに突っ伏したまま寝てたアタシの背中を、アミオさんが揺すって起こした。
「え? 楽屋? いま何時?」
「いま20時だよ! もうみんな舞台袖に楽器運んでるから」
そういやリハ終わって、みんながご飯行ってる間にうたた寝したんだったわ。
Tシャツの首回りを引き上げてヨダレっぽい口許を拭うと、プリントされたKISSのメンバーと目が合った気がした。
「あ、そうだ! 受付の置きチケってハケてた?」
そう。今日はアタシ達の大切な友達が、初めてライブを観に来てくれるんだ。
「さっきマキからも聞かれたけど、まだ残ってたよ?」
ゲストにしておこうと思ったら、初めての記念のライブは絶対にお金払って観たいって言うから、前売りチケットを受付に預けておいた。
「っつーかよく寝てたねぇ。もう二ヶ月ぐらい放置されてた気分だよ」
アミオさん……サクセスストーリーでもないようなオッサン予備軍の話なんて、もう誰も求めちゃいないんすよ。
「何? いま俺のコト憐れんだでしょ? ……そんなコトより早く準備だってば!」
パッとしない元主人公に急かされて、ベースとエフェクター、シールドを抱える。
一階の楽屋から外階段を登って、来場者と同じ受付前のドアから入り、フロアの脇にある壁側の通路を通ると、舞台袖の機材置き場で他のメンバーが揃って待ってた。
「遅い! これでライブが酷かったら許さないからね?」
明らかにサクラが怒ってる。
すると袖から前のバンドのライブを観てたマキが、目を見開いてアタシの肩をバシバシ叩いた。
「来た来た! ほら、あのドリンクカウンターのトコ!」
舞台上のアンプ越しに客席を覗き込むと、ライブハウスには完全に似つかわしくない、おっとりとした感じの美少女が立ってた。
「ちょ、ちょっとアミオさん! あのコ! そうそう、ライブ中にあのコがモッシュとかに巻き込まれないように守ってあげてくれない?」
放っておいたら、心配でライブどころじゃないってば!
舞台袖でやきもきしていると、前のバンドが終わってアタシ達の出番になった。




