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みそギ!~三十路で始めるギター教室~  作者: ボラ塚鬼丸
Bonus track ~思い出にもなれない~
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たとえばぼくが死んだら

「今日は本当に楽しいです。初めてのコトがいっぱいで……」


 リエコが寂しそうに笑うから、アタシは少し複雑な気持ちになった。


 それでも、一緒に学校を抜け出して、遠く離れた海まで来て良かったとは思ってる。


「思い切って学校サボって良かったでしょ? また一緒に来ようよ」


 アタシ達にとっての『また』が、いつになるのかはわからないけど、それでもそう言っておかなければ、この関係が失くなってしまうような気がした。


「はい。また来たいです。私、お二人ともっと早く出会ってたら……ううん、もっと身体が丈夫だったら、一緒に軽音部に入ってたかもしれませんね」


 これが最後かもしれないような含みを持たせているが、そのコトには誰も触れずに、いや、触れられずにいた。


「そうかもしれないね。っつっても、リエコは頭イイからウチみたいな底辺女子高じゃなくて、もっと偏差値高いトコ行ってたかもね?」


 少しでも重い空気を取り払いたくて、アタシはおどけて見せた。


「確かに! 品のイイお嬢様学校通ってて、ミチヨみたいなのとは絶対仲良くなってなさそう」


「あぁ? マキも大して変わんないでしょ? 同じ穴のなんとかだよ」


 アタシとマキのやり取りを見て、リエコはカラカラと笑っていた。


「じゃあ身体が弱くても、悪いコトばかりじゃなかったですね。お二人と仲良くなれたんですから」


「うん。転校前に仲良くなれて良かった。話し掛けてくれてありがとう」


 何だかどんどん悲しい話になってくのがツラい。


「あの……それで、お二人にお願いがあるんですが……」


 辛気臭い話の流れを断ち切るように、リエコが真剣な顔でアタシ達を見つめる。


「お! 今日は何でも聞いちゃうぜ?」


 精一杯明るく振る舞って、左手の親指を立てつつリエコの肩にポンと右手を乗せる。


「もし……この先、私と会うコトが無くても、お二人は一緒に音楽続けてくださいませんか?」


 言われた途端、リエコの肩に乗せた右手に力が入る。


「ちょ……ちょっと!! そんなコト言うなよ!」


 続けて『生きてればいつかは会えるだろ』と、いうコトを言い掛けてやめた。その可能性がゼロじゃないとは言い切れなかったから。


「私、これから遠い国に転校しちゃいますけど、お二人が音楽続けてたら……もしかしたら、そこまで届くかもしれないじゃないですか」


 メンバーも揃わないコピバンやってる女子高生が、数年で北欧まで名前を轟かせるなんて……簡単なコトじゃないのはわかってる。


 けど、今この場で『無理』なんて口が裂けても言えるハズが無い。


 胸を張った返事が出来ずに言い淀んでいると、アタシの隣でマキが先に口を開いた。


「イイよ! ボク、ずっとミチヨと音楽続けるよ。でもなぁ……ミチヨがこんなだからさぁ、ダメそうになるかもしれないけど、ボクが責任持って引っ張ってくから」


 ニヤニヤしてこっちを見てるマキにイラっとしつつも、売り言葉に買い言葉で勢いよくアタシも啖呵を切ってしまった。


「お、おうよ! やるよ! リエコが自慢出来るようなバンドになってやる!! マキが逃げ出したくなるぐらい本気でやってやるからな」


 自信なんて1ミリも無かったけど、それがリエコの生きる希望になれば、今はどんな嘘だってついてやる。


「その代わり、リエコも一つアタシ達と約束してよ」


 音楽を続けるという返事に安心して、どこか悟ったような笑顔だったリエコが、キョトンとしてこちらに向き直った。


「アタシらド田舎でコピーしかしたコトない女子高生で、今はまだ二人しか居ないし、メンバーもロクに揃ってないから何年掛かるかわかんないけど、絶対続けるから……いつかこっちに戻ってきたら」


 勢い良く言ってても、泣きそうなぐらいもどかしさだけが付きまとってくる。


「だからさ、必ず観に来てよ! それでヘタクソならアタシ達にダメ出ししてよ」


 リエコの両肩を掴んでそう言うと、少し困った顔をしたけど大きく頷いてくれた。


「……はい! 約束です」


 きっとツラいのを我慢しながら、アタシ達に音楽を続けろと言ってくれたんだろう。


 笑顔になったのも束の間、返事をした途端にボロボロと泣き出してしまった。


 転校する寂しさを紛らわして、励まそうと思ったのに、逆に励まされてしまった。


「もう……泣かなくたってイイじゃん」


 気付くと、マキとアタシはリエコを抱き締めて、三人で顔をグシャグシャにして泣いた。

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