歩いた果てに何もなくても
「熱っ! 熱っ!!」
裸足で歩く砂浜は、火が消えてないタバコの吸い殻でも踏み続けてるみたいに熱かった。
一足先に、波打ち際で海に足を浸しているマキに追い付く。
「キャっ! 冷たい!! 海の水ってこんなに冷たいんですね」
高校生が生まれて初めて海に入る瞬間を見た。
もしアタシがリエコの両親だったら、きっとビデオカメラを回してなかった事を心底悔やんだだろう。
「初海水浴記念日だな。っつっても足しか入ってないけど」
リエコとそんなやり取りをしていると、少し離れた所から、マキが海面を蹴ってアタシ達に水を掛けてきた。
「ちょっ! テメェゴルァ!!」
アタシもマキに水を蹴り返すと、水飛沫が太陽の光をキラキラと反射させた。
「リエコもやり返しなよ! アイツ沈めてやろうぜ!!」
女子高生3人が浅瀬でキャイキャイやってるのって、ハタから見ると結構青春っぽいんだろうな。
ひとしきり遊んで、疲れて砂浜に戻ると、置いていたカバンが熱くて持てないほどだった。
ここまで暑いと、さすがにリエコの体調も心配になったので、繁忙期前でヒマそうにしている海の家に入った。
「暑ぃ~何か食べようか……」
水道で足を洗わせてもらい、休憩してるだけでは申し訳ないので、出てきた途端に伸びきってるラーメンやら、かき氷やらで散財した。
来た時よりも日が陰ってきたので、海の家を後にして海沿いの堤防を歩く。
「やっぱ都会じゃないとは言え、海が近いとアタシらが住んでる田舎より、断然解放感あるなぁ」
右手には果てしない水平線がどこまでも続いてて、バケモノみたいな真っ白い入道雲が沸き立つ青空は、自分の存在がちっぽけに感じるほど大きかった。
何故か誰も言葉を発するコトなく、ただ空を見上げて堤防の上を歩き続ける。
「んーんんーんんーんんんんんーんんーんんー♪」
メロディはeastern youthの『青すぎる空』。鼻歌の主はアタシの前を歩くリエコだった。
「あの歌に出てくるのって、こんな空なのでしょうかね?」
ニコっと笑って振り返り、後ろ向きで歩きながら鼻歌を続けた。
「前見ないと危ないよ?」
リエコが歌うeastern youthは、か細いけど気持ちが乗ってて、心地良い感じがした。
アタシはリエコの両肩をガシッと掴んで半回転させ、前を向かせるとそのまま肩に手を乗せて歩いた。
鼻歌を続けるリエコのメロディを伴奏に、アタシも歌った。マキはアタックで太ももをダダダと叩いて参加してきた。
楽器も設備も何も無いけど、アタシ達3人は、初めてセッションしたんだ。




