裸足で行かざるを得ない
海無し県からでも、最近は沿線乗り入れで電車一本で海まで行けるようになったんだ。
駅の券売機で一万円札を溶かし、3人分の切符を買ってキオスクでお菓子も大量に買い込む。
「こんなにお金使わせてしまって……大丈夫ですか? あとでお返ししますから」
リエコが申し訳なさそうにしてるけど、正直そんなコトはどうだって良かった。
「そんなのお姉さんに任せとけばイイんだよ! ほら、もうすぐ電車出るよ」
平日の午前中は電車がガラガラに空いているので、アタシ達は四つ向きの座席に腰をおろした。
順調に走る電車内で、持ってたMP3プレイヤーのプレイリストをリエコに聴かせたり、買い込んだお菓子を貪りながら他愛もない話をしていたら、窓の外は田園風景から都会のビル群に変わっていた。
都内に入るとやや混み合ってきたので、アタシ達は暫し昼寝をしながらその場をやり過ごした。
「ミチヨ! 起きて起きて!!」
マキに肩をバシバシ叩かれて目を覚ますと、車窓から見える景色は街の向こう側に青い海が見えていた。
「おおー! 海だ!!」
テンションが上がって電車内だと言うのに大声を出してしまったが、周りを見回すといつの間にか乗客はアタシ達だけになってた。
市街地周辺を抜けて、幾つか先の海水浴場がある駅で電車を降りると、潮の香りが鼻先をくすぐった。
「長かったー! もう座りっぱなしでお尻痛い」
長時間座っていたので、3人とも夏服のスカートが少しシワになっていた。
海岸まで歩いて20分ぐらいだったけど、リエコの体調を考えて発車直前のバスに飛び乗る。
夏休み前のド平日の真っ昼間だったから、車内にはお婆ちゃんが2人だけしか乗ってなくて、停留所にして5つ過ぎると海岸の入り口に到着した。
「うおぉぉ!! 広いぜ! 海ぃ~」
昼過ぎの突き抜けるような青空の下で、既に海開き済みの海水浴場は、パラパラと幼児を連れた家族が居る程度だった。
「足だけ入っちゃおうよ!」
テンションの上がったマキが、荷物を砂浜に置いて、ローファーと靴下を脱ぎ捨てて、波打ち際に走って行く。
「実は私、海に入るの初めてなんです!」
そう言って、リエコも楽しそうに裸足になっていた。
「マジで? アタシそんな記念日に立ち会えてチョー嬉しいんだけど!」
無理してでも来て良かったと思いながら、焼けた砂浜で跳び跳ねながら2人でマキを追いかけた。




