片道切符の歌
あれからリエコは部室に遊びに来るようになっていたけど、ここ数日は浮かない様子だった。
「ねぇねぇリエコ! 夏休みどっか行かない?」
放課後に限らずリエコと会話するようになってたアタシは、もうすぐ始まる夏休みも当然遊び倒すつもりでいた。
「夏休み……ですか?」
いくら身体が弱くても、一ヶ月以上ある夏休みの数日ぐらいは遊べるだろうと思っていたから、あわよくば夏フェスにでも誘ってみようと考えていた。
「ミチヨさん、マキさん……実は私、言わなきゃいけないコトがあって……」
神妙な面持ちでそう言ったリエコに、アタシとマキは真正面から向き合った。
友達が直面している問題には、我がコトのように接するべきだと思ったからだ。
「うん。どうした?」
どうにも歯切れが悪く、言いづらいコトなんだろうと理解したアタシは、リエコの手を強く握った。もう気遣いなんて必要無い関係だと信じていたから。
「私、夏休みが明けたら……転校するんです」
予想だにしなかった展開に、アタシもマキも、ただただ驚くしかなかった。
「え? 転校……ってあの転校? 高校生なのに?」
高校で転校って、編入試験とかがあるんじゃないかって心配したけど、アタシ達と違ってリエコは頭が良いのか。
「ええ……高校生なのに、変ですよね? しかも日本国内じゃなくて縁もゆかりも無い北欧の学校なんです」
リエコは力無く笑っていたけど、すぐにそれが本人の望むコトじゃないってわかった。
「は? 何それ? リエコはどうしたいの?」
「行きたい……ワケないじゃないですか! やっと……お友達が……出来たのに」
アタシの聞き方が、リエコの辛い気持ちを更に浮き彫りにしてしまったコトに気付いた。
「でも、私……身体が弱くて……」
理由としては、リエコの体調不良が続いたコトが原因らしく、詳しくは聞かなかったけど、何とかっていう持病の権威が北欧の病院に居るんだとか。
持病を放っておいて悪化するぐらいなら、体力のある若いウチに治療に専念した方が良いという両親の判断だと、リエコは切々と話してくれた。
「それで、いつから行くの?」
アタシとしても、せっかく出来た友達と離れなきゃならないのはツラい。でも命に関わるコトなら引き留められるワケない。
「一学期の終業式の後に出発なんです。本当に、もう何日も残ってなくて……」
一学期の内にどっか出掛けるとか、何かしてあげるにはタイミング的にもう間に合わないだろう。ホントは旅行とかフェスとか行って、思い出作りたかったのになぁ……
「サボっちゃうか!」
窓の外には突き抜けるような青空で、そんなの見てたらあと数日しかリエコと一緒に居られないってのに、馬鹿馬鹿しくて授業なんて受けてられない。
「え……でも、私、そんなコト初めてで……家に電話しても良いでしょうか?」
「そんなのダメって言われるに決まってんじゃん! リエコの体調は、無理させないようにアタシが注意しておくから」
半ば無理矢理にリエコのカバンを引ったくり上げて、マキも誘って3人で教室を出る。
午前中の休み時間で廊下に生徒が溢れてたから、アタシ達は目立たず学校を抜け出せた。
「暑い……っつーか、ミチヨ! 学校サボってどこ行くつもり?」
炎天下を歩いて、駅までのバスに乗ると、マキが不安げに聞いてきた。学校を飛び出したはイイけど、正直ノープランだったアタシは、とりあえず財布を開いて所持金を確認。
ホントは放課後に、新しいエフェクターでも買おうと思ってバイト代おろしてあったけど、そんなのいつでも買えるじゃん。
「よし! 海まで行くか!!」
ビックリした二人の顔を見て、ニヤニヤしながらこの先の展開を想像した。




