小さな友人
「す、凄い! 凄いです!! お二人が作った曲ですか?」
そんな才能あったらとっくにライブぐらいやってるわ! そりゃこんな大人しそうなコがエモいバンドなんて聴くワケ無いけど。
「いや、eastern youthってバンドの曲だよ。ちなみに箕浦さんて音楽どんなの聴く人?」
「私……ですか? 子どもの頃にバイオリンを習ってたので、クラシックは少し聴きますけど……」
「おー楽器出来るんじゃん! じゃあ今度アタシらと一緒に演ろうよ!!」
ジャンルなんて正直どうでも良かった。一緒に演奏出来たら楽しいだろうなってコトしか考えてなかったから。
「いえ……申し訳ありませんが、私、身体が弱くて今は楽器の演奏も儘ならないんです。ゴメンなさい」
改めて箕浦は申し訳なさそうに謝った。何もこんな遊びに付き合えないからって、そこまで落ち込む必要ないだろうけど。
「あー……いや、こっちこそゴメン。そういう事情も知らないのに勝手なコト言って」
一年の頃に休みがちだったってマキが言ってたのを思い出した。そんなコに爆音浴びせて良かったのかな?
「まぁ、アタシらってこんな感じなのよ。だから箕浦さんとは……」
『住む世界が違う』と言い掛けて言葉を飲み込んだ。
このコ、ホントは誰かと仲良くしたいんじゃないか? でもその方法を知らなくて、アタシに変な絡み方をしちゃっただけなんじゃないか?
って、そんなコトを思ったら、突き放しちゃダメなんじゃなかろうか、と。
「だから……箕浦さんとは、もっと仲良くなりたいと思う……んだけど」
自分ではファインプレーな誤魔化し方が出来たつもりだったけど、よく考えたら当の本人が仲良くしたいと思ってないかもしれないじゃん。
「あ、いや別に無理にとは言わないけ……ど」
気を遣わせないように逃げ道を作ってあげようとしたら、箕浦がボロボロと泣きはじめた。
「あ、あれ? ゴメン! 何か傷付けちゃった? アタシ人付き合い苦手でさ……あー、マキさん助けて!」
「はぁ……ミチヨはホントに人の気持ちがわかんないなぁ……そうじゃないよねぇ?」
泣いてる箕浦を諭し、やれやれ顔でアタシを残念そうに見るマキに言われた言葉の意味も解らず、あたふたしたまま箕浦に視線を戻す。
「……はい。宮山さんの言う通りです。そうじゃないんです」
あ、これアタシだけが理解してない感じだわ。そうじゃないならどうだってのよ!
「私、嬉しくて……仲良くなりたいなんて……今まで生きてきて、言われたコト……一度も無かったから」
可哀想、なんて思ったら失礼なんだろうけど、これまで自分の気持ちが報われなかった箕浦のコトを考えたら、仲良くなるのがアタシらなんかでホントにイイのか? と逆に不安になる。
「あは! 箕浦さんさえ良かったら、いつでも部室遊びに来てよ。もう友達なんだから」
「そうそう。箕浦さん、ボクたちの最初のお客さんなんだよ? 誰かに聴かせたのって今日が初めてなんだから」
コクコクと頷いているが、相変わらず箕浦は泣きじゃくってる。
しかし嬉しくて泣く人初めて見たわ。そんな人、ホントに居るんだね。
……っつーか危ねぇ~! 住む世界が違うとか口走ってたら、完全に地雷踏んでたヤツじゃんか!
「箕浦さん……て呼ぶの面倒臭いから、これからはリエコでイイよね? アタシらのコトはミチヨとマキでイイから」
「はい! 宜しくお願いします」
リエコはかしこまって頭を深々と下げた。
「もー! 友達なんだから、そんなにペコペコ頭下げないでよ。対等だよ? 上下関係なんて無いんだし」
リエコにとって、友達との関係性なんてアタシらが初めてなんだろうから、いくらでもリアクションを間違えたらイイじゃん。
アタシだって、マキっていう理解者が居なかったら、きっとリエコと同じだったんだろうし。なんだか親近感を通り越して、抱き締めてあげたくなった。
それからアタシ達は、その日は練習そっちのけで外が暗くなるまで他愛も無い話をし続けた。




