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イースグレイ王国の幽霊王女  作者: しろ
二章 嵐の前の、大切な日々
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 さて。捕まえた仮面の男と、寝ているメイクの男達をさっさとユニバースに連れて行きたい所だけど、さっきの爆発音も気になる。仮面の男が言ってた通りなら、まだ仲間が居るはずだ。


 「甘いな。拘束するだけか?」


 ギルティ隊長が居なくなってるので、何かと動いてくれてはいると思うが…。それに、この森にはラウルとディナンさんもいる。

 いざとなればアレスやマスターも出てくるだろう。


 「そいつらも放っておいて良いのか?ただ単に眠ってるだけじゃないかもしれないぞ?」


 そう言えばオルディスさんは大丈夫だろうか。

 彼なら余裕で合格しそうな勢いではあったけど、こう邪魔が入ればどうなるか分からない。受験者の安全を確保する方が先か…。


 「こんな拘束なんかすぐに解けるぞ?分かってるのか?それに仲間もどんどん増えるからな。俺以上に強い奴だっている。俺を拘束したくらいで図に乗らない事だ」

 「…ちょっと黙っててくれる?うるさい」


 色々と考えていたのに、考えが纏まらないじゃないか。

 イラッとして木に縛りつけた仮面の男を睨みつけると、奴はフンッと鼻を鳴らす。


 「だが、お前の正体を教えてくれるのなら、お前だけは生かしてやってもいい」

 「……それ、どの口で言ってんの?今、俺に捕まってるの分かってる?」

 「こんな拘束を解くくらい簡単だ」

 「じゃあさっさと解けば?」

 「このッ!!!言わせておけばッ!!!ふんッぬぅぅぅーーーーーッッッ!!!」

 「…………」


 まだまだ時間がかかりそうなので、ナルは取り敢えずメイクの男達を先に拘束する事にした。







* * *






 時間は遡り、二次試験が始まった頃。

 受験者が転移の魔法で酔って蹲る中、ラウルは転移するなり誰より早く駆け出した。

 もちろん、誰よりも早くユニバースの本部へ行く為ではない。様子を見る為だ。


 そして、気に入らないあいつを落とす為。潜入審査員としてそれはどうなのかという思いもあるが、ラウルは許せない気持ちの方が強かった。

 それにイーサンは、ラウル達と相性が良いならなおいいと言っていた。それは相性が悪いなら妨害、もとい試験を落とすように仕向けてもいいという事ではないのか。


 正直、ラウルはユニバースの戦闘員仲間以外に興味などない。

 誰が受かろうと知った事ではなかったが、あいつが受かるのだけはどうしても嫌だった。

 あいつ、つまりイーサンを侮辱した七三分け金髪男である。


 「……。なんだあれ」


 気配を消し、始めは大人しく金髪男がモンスターを倒すのを見学する事にしたラウル。


 ただ、見れば見るほど嫌気がさしてくる。

 あの金髪男、取り巻きばっかりを動かして自分は全く動いてないじゃないか。

 言い訳は常に、自分は優れたBランク冒険者だからそんな弱いモンスターを相手にはしてられない、とのこと。

 ただ周りはそれを一切疑ってない。奴の命令に忠実に動いている。


 それならば。


 「強いモンスターでも引っ張ってくるか」


 ユニバースからはまだ遠いのだ。特に急ぐ事もない。

 ラウルは強そうなモンスターの気配を辿って歩き出した。




 さっき金髪男達が相手にしていた奴よりも、少し強そうなモンスターを3体ほど怒らせる程度に斬りつけた後、怒ったモンスターから距離が離れすぎないように逃げるフリをしながら誘導していく。

 その間、他の受験者達と遭遇しないように気をつけながらも、ようやく金髪男がいる場所に到着したラウル。


 そこでは金髪男とその後ろについてる集団、それと何やらメイクをした男達の集団が何やら言い争っているようだ。

 

 ピタリと立ち止まり聞き耳をたてる。


 「君達も受験者だろう!?どうだろう?ここはお互いに協力するというのは?」

 「…話の通じないやつだな。何度言えば分かる。お前達には1人残らず死んでもらう」


 金髪の男が大きな身振りで説得しているようだが、相手が悪そうだ。

 どうしてこうなってるのか分からないが、これは好都合かもしれない。

 潰し合いでもしてくれればラウルの出番はなく、時間オーバーになれば両方とも試験に落ちてくれるはずなのだから。


 その時、後ろからガサガサッという音を立てながらラウル目掛けてモンスターが飛び込んで来た。


 「おっと」


 忘れてた。

 避けるために飛んで着地したのは、言い争っている2人の目の前だった。


 「君は…」


 金髪男が目を丸くしてこちらを見てくるが、ラウルはナルのように愛想笑いを浮かべるつもりは微塵もない。なので、そのまま2人の間を通り抜けた。


 急に現れたモンスターに対し、どう対処するか見たかっただけなので、通り抜けた所でくるりと振り返る。


 「モッ、モンスターだぞ!」

 「しかもBランクじゃないか!?」


 騒いでるのは意外にも金髪男の後ろについてる受験者達だ。


 森の中にモンスターがいるのは当たり前なのに、何を言ってるんだか。


 チラリと金髪男を見ると、なんだか少し青ざめてるような気がする。……気のせいだろうか。

 対してメイクをしている男達の表情は変わらないように見える。


 「きっ君っ!」


 ラウルが全員の様子を観察してると、勢いよくラウルの方を振り返った金髪男が睨みつけてきた。


 「──何?」


 返事をしてやる義理はないが、仕方なく返事をすると焦ったようにペラペラと喋り出した。


 「これは君が連れて来たんだろうっ!さっさと自分の始末は自分でつけないかっ!」

 「別に良いけど……。あんたBランクなんだろ?これくらい余裕だろ。それに……俺らがBランクだって信じられないんだったよな?なのにガキの俺を前に押し出そうってか?」


 ラウルがバカにしたように言うと、金髪の男は思い出したようだ。


 「お前っ、あの時の…!」

 「ユニバースのギルドでもそうだったけど、コレアスの時…あん時あんたユニバースの隊員みたいな………やっぱいい、めんどくさい」


 言いたい事はいっぱいあったが、口を噤むことにしたラウル。

 それよりも気になる事が出来たからだ。


 「あんたらはさっきから何してんだよ?」


 モンスターを止めるべく勇敢に戦いに挑んでいるのは、この金髪男とメイクをした男達以外の受験者達。

 そして、ラウルが話しかけたメイクの男達はと言うと、ぶつぶつとその場で何かを呟いている。

 おそらく魔法の呪文だろうが…。長すぎるし遅い。しかも展開してる魔法はモンスターを挑発するようなものだ。それも自分達に向けて怒るように作られたものではない。他の受験者達に怒りを向けるように作られている。


 「もちろん、モンスターを倒すためだが?」


 ラウルに答えたのは呪文を唱えてないメイクの男だった。


 「ハッ。挑発する魔法をわざわざかける意味があるのか?自分達が盾役をやるってんなら何も言わないけどな」

 「!」

 「まぁ、さっきも言ってたもんな?受験者には全員死んでもらうって」


 その時だった。大きな爆発音が聞こえてきたのは。受験者の男達が動揺する中、メイクの男達が嫌らしく笑う。


 「これでお前達は終わりだな」


 ラウルは笑った。


 「そんな事、俺達がさせるわけないだろ」


 瞬間、3体のモンスターは崩れ落ちた。

 メイクの男達の魔法が発動する前に、ラウルが炎の魔法で体内を焼いたのだ。

 金髪男が逃げ出して行くのを尻目にラウルはメイクの男達相手に不敵に笑った。


 「さて、時間はいっぱいある。相手はしてやるぜ?」






* * *



 



 「ごめん。俺は別行動で行くわ」

 「うっぷ……。俺らの事は気にすんな…。合格して会おうぜ」

 

 再び時間は巻き戻り、二次試験が始まった頃。

 ディナンシェは、転移酔いで蹲ってる一次試験の時の仲間に声をかけて森の中へ入った。


 「…………」


 周りの気配を感じながら、ユニバース近くの場所まで先回り…とは言っても急いで来たわけではないのでそれなりの時間は経過していた。

 ある程度ユニバースの近くまで来た所で、木の上を見上げ呼びかける。


 「ギルティ隊長」

 「よぅ、ディナン」

 「なんか…変なのが混じってるんスけど…。人数が一次試験より増えてるって……」

 「だな。ま、これはこれで面白いんじゃねーの?さっきナルに会ったからそっちはナルに任せて来た」

 「死人が出たら洒落にならないっスけどね」

 「そうはさせないだろ?」


 ギルティ隊長の挑戦的な笑みにディナンシェは頷いてみせる。


 「当たり前っス」

 「さぁて、まずは鼠達の駆除からだな」

 「それよりも先にコレの片付けっスよ」


 ディナンシェが指し示したのは地面に書かれている魔法陣だった。魔法陣を読み解くとおそらくそれは召喚魔法だ。


 「ったく。いつの間にこんなものを仕掛けやがったんだか。試験の場所は公表してねーってのに」


 話している間に魔法陣は輝き発動する。


 「仕方ねぇ。一撃で終わらせるぞ」

 「了解っス!」


 そして2人は現れたモンスターを見る事なく、強力な魔法を使って魔法陣もろとも一撃で消し去った。




 これがナル達が聞いた爆発の音であった。








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