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イースグレイ王国の幽霊王女  作者: しろ
二章 嵐の前の、大切な日々
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 マスターに散々説教され、結局、ユニバースの試験に誘われて受付を成り行きで済ませてしまった事も話してしまったナルとラウル。


 「ぎゃははははははは!!!!!!」

 「…ふむ」


 たまたま一緒に来たギルティさんは笑い転げているのに対し、マスターは顎に手を当てて考え込んでいる。


 「なぁ、2人とも。それ受けてみないか?」

 「「え?」」


 マスターの言葉にビックリする2人。


 「どうせ動き足りないくらい元気なんだろう。まだ子供だし回復力も高い。試験くらいなら余裕で動けるだろう?」


 ニヤリと笑いながら言われ、ナル達は縮こまる。実際、さっきその事で散々説教されたのだ。はい、余裕です、なんてとてもじゃないが言えるわけがない。

 だけどそんな事、マスターはお見通しなのだろう。「じゃあ、決まりな」と言って笑っている。

 ふと、疑問に思ってナルが首を傾げる。


 「試験を受けるんですか?」


 ラウルも考え込むようにマスターに問いかけた。


 「受かったら見習いから…?」


 一応、ナルもラウルもユニバース隊員として認められ活動しているのだ。それをまた見習いから始めるとなると少し複雑な気分になる。

 だけど、その方が良いのかもしれないとナルは思う。だって前回の魔物には苦戦……と言うよりも辛うじて勝てただけなのだから。まだまだ修行が足りなかった証拠だ。もう一度一から鍛え直した方が良いのかもしれない。

 そう考えていると、マスターは苦笑しながらも首を横に振った。


 「いいや、違うよ。2人には潜入審査員として中から審査してもらう。試験は受かる程度に動いてくれれば良い。まぁ、2人なら余裕だろう。それに──」


 マスターはニヤリと笑った。


 「引き受けてくれるなら、明日の夕方には退院出来るように手配しよう」

 「「やります!」」


 見事にハモったのは仕方ないだろう。

 入院して退屈していたのから、やっと解放されるのだから。






* * *






 翌朝。

 グランドアルス帝国のグランディから、わざわざギルドマスターであるガナサックさんが訪ねて来てくれた。

 優しいの笑みの上には綺麗な怒りが浮かんでおり、病院にある談話室にいたナルとラウルは思わず後ずさった。


 「なかなか来ないと思ってユニバースのマスターに連絡を取って見れば……入院してるって聞いてねー、お見舞いに来ちゃったんだ」

 「い、忙しいだろうにすみません…」

 「そうなんだよ。これでも忙しい身なんだよね。でね。わざわざ私がここへ来た理由。分かるかい?」

 「試験…の事ですか…?」

 「そう。どっかの誰かさん達は戻って来るって言ってたのにね〜」

 「すみません…」

 「ま、いいよ。君達も大変だったみたいだしね。何をしてたのかは知らないけど。まぁ、それで、君達のダンジョンでの活躍は他の冒険者達全員から聞いた。で、散々協議した結果…」


 スッと2人に差し出されたのは銀色のカードだった。


 「えっ!?」

 「!」


 目に飛び込んできたランクを見て、2人は固まった。そこにはSランクと書かれている。


 「なんで…。Aランク試験なんじゃ…」

 「いやー、そうだったんだけどね、適正試験でもバカみたいな結果だすし、Sランクのモンスターを軽々と倒しちゃって、おそらくそれ以上のランクだろうと思うものまで倒してくれたって聞いてね。Aランクでは低いと判断した。まぁ、これからの活躍に期待も込めてだから、頑張ってね。──おめでとう」

 「あれ、でも風船とか結構時間かかりましたよね?」

 「俺は紫のやつを割ってない」

 「あぁ、あれね。黄色を割った時点で大体Bランク程度なんだ。緑で大体Aランク、青でSランク。紫はね、昔ある人が面白半分で作ったものなんだよ。正直、あれをあんなに揺らしたり割ったりする人間なんていないから。いや…ここの対殲滅組織ユニバースに所属する人は論外だろうけどね。正直、僕だけの見解だと君達2人も……いや、何でもない。取り敢えず素直に受け取っときなよ」


 少し考えた2人は顔を見合わせて頷く。


 「ありがとうございます!」

 「また本部にも遊びに来てくれると嬉しいな」


 にっこり笑いながらも、その雰囲気から依頼を受けて欲しいんだなという事をヒシヒシと感じる。


 「行かせて頂きます…」


 ラウルも頷いたのを見ると、ガナサックさんは満足そうに頷いて帰って行った。


 そんなこんなで飛び級してSランクになった2人。


 「明後日はどっか飯でも食いに行こうか」

 「良いな。その前に依頼をこなしても良いし」

 「そうしよう!」


 ユニバース以外の場所へ食事に出掛けるのは、2人にとって珍しい事ではない。何か達成したり、落ち込んだりした時、お祝いや奮起する為に2人でよく出かけていた。ただし、任務が無い時に限るが。

 マスターも余程の事が無い限り、すぐにナル達を任務へ出す事はしないだろう。


 「ナル、ラウル、ちょっと良いか?」


 扉の方を振り返るとマスターがちょいちょいと手招きしていた。


 「退院手続きが済んだ。この後ユニバースで明日の事を話したいから、荷物を纏めたら来てくれ」

 「「はいっ!」」



 荷物という荷物はほとんど無いので、急いで部屋を綺麗に整えていると、コツ、と背後で音が鳴る。ナルが振り返ると、ナルの担当になってくれていたミーア先生が悲しげに立っていた。


 「…もう行ってしまわれるのですね」

 「はい。お世話になりました」


 コツコツとヒールを鳴らしながらナルに近付き、膝をつく。そしてナルの頰を両手で包み込んだ。


 「えっ」

 「無理をしてはいけませんよ。良いですか?辛かったらやめて良いんです。誰も責めたりしません」

 「はぁ…」

 「また会いたいですが……怪我をしてここへ来たら許しませんからね。普通に訪ねて来て下さい。必ずお力になりますから」


 何故こんなに優しくしてくれるのか。この人は他の人に対してもこうなんだろうか…。それに…何故ラティアの存在を知っているのか。聞きたい。物凄く聞きたい。ここで聞かなからったら絶対後悔する。


 「あの」

 「ナル、準備出来たか?」


 意を決して口を開いたのだが、間が悪くラウルが来てしまった。

 ミーア先生は優しく笑ってナルをギュッと抱きしめる。


 「お友達が来てしまいましたね。質問はまた今度、お元気でナル

 「…ありがとうございました」


 笑顔で手を振るミーア先生に、後ろ髪を引かれながらもその場を後にしたナルだった。






* * *






 「さて。2人には明日潜入審査員をやってもらうと言ったが、見てほしいのは力量じゃない。それはこっちでやるからね」

 「それじゃあ?」

 「2人に見てほしいのは、それぞれの性格だ」


 ユニバース本部。そのマスターの部屋でナル達はマスターから話を聞いていた。


 「性格?」

 「ああ、そうなんだ。試験は1日だけだから、そこまでは流石に私達だけじゃ見きれないからね。まぁ、あまり酷いのは見習い期間中に落とすつもりだけど、出来るだけそれは無くしておきたいんだ」

 「でも性格と言われても…」

 「無理だろ。俺達の好みになるじゃないか」


 困ったナルとキッパリと言い切るラウルにマスターは笑って言った。


 「うん、それで良いんだ。後々一緒に働く人達だからね。君達と相性が良いとなお良い」


 ちなみに、とマスターは続ける。


 「今回は潜入審査員としてディナンシェにも入ってもらうから、そのつもりで」







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