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イースグレイ王国の幽霊王女  作者: しろ
一章 Aランク試験と信仰村コーリネ
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 無事にギルドまでやって来たナルとラウルの2人は、早速依頼が貼ってある場所を見に行く。

 もしかするとコーリネと言う村について書かれた依頼が出てるかもしれないからだ。しかし、そう言った内容のものはなかったので、直接受付の人に聞いてみる事にした。


 「こんにちは。仕事の依頼ですか?」


 受付のある机へ行き、背伸びして2人がピョコリと顔を出すと、受付のお姉さんはそれはそれはにこやかに挨拶してくれた。


 「少し聞きたい事があるんです。コーリネって言う村の事なんですけど、その村に関する依頼って出てますか?」

 「コーリネ…少々お待ち下さい」


 ナル達からは見えないが、お姉さんの手元で勢いよく紙が捲られる音がする。

 ナル達が少し待つとその音はピタリと止まった。


 「あ、ありました。コーリネの調査です。これは複数依頼なので受ける事も可能ですが…、Bランク以上の方を対象とした依頼になります。それに、既にユニバース支部で受けて下さっている方がいるようなのです」

 「「……」」


 ユニバースの名に2人が思わず沈黙してしまったのは仕方のない事だと思う。

 きっと、ついでだからとマスターが勝手にナル達の分の依頼を受けたのだろう。


 「それに、それより前に受けられている方々もいらっしゃるようなのですが……、まだ誰も達成されていらっしゃらないようですね」

 「そうなんですか」

 「お二人ともコーリネへ行く予定でもあるんですか?」

 「はい」

 「今行くのはやめといた方が身の為だと思いますよ。Bランク以上って事は危険な事に巻き込まれる可能性が高いですから。依頼を受けられたいのなら、薬草の採取なんていかがです?」


 そう言って見せてくれたのはDランクの依頼書だった。冒険者カードを見せてないので、きっとDランク以下だと思われてるんだろう。


 「いえ、大丈夫です。コーリネに関する依頼はそれだけですよね?」

 「そうですね。これだけになります」


 お礼を言ったナルはラウルと一緒にその場を後にした。



 その後も街で情報を集めたが、これと言ったものはなく、ただ日が過ぎていくばかりだった。


 3日目、2人の魔力は既に完全に回復している。マスターからは連絡もなく、もうこれ以上は待てないとギルドにいるガナサックさんを訪ね、この街を一旦出る事を伝える。


 「そうなのかい…。またこの街には戻って来るんだよね?」


 そのつもりですと頷くと、ガナサックさんはそれならまぁ良いかと渋々ではあったが了承してくれた。


 大した準備も必要ない2人は、その足で街の外へ出た。

 旅装に身を包んだ2人は、途中から道をそれ、あまり人が足を踏み入れない森の中へと入って行く。


 コーリネへはグランドアルス帝国の帝都、グランディから馬車で約1週間ほどの場所にあるらしい。けれどそれは普通の道を通り、普通の日程で行く場合の話だ。

 マスターにもらった地図を見れば、グネグネと曲がった道を行くよりも、森を突っ切って行く方が早いのは一目瞭然だった。

 それを他の人がしないのは、道がないので通りにくかったり、凶悪なモンスターが出たりするからだろう。


 「はぁ。大勢相手の隠れんぼは疲れるよな」

 「おかげでゆっくり休めなかったし」


 森に入ってすぐに走り出した2人。2人にとっては軽い運動程度の速度だが、一般人から見ると馬の走る速度を軽く凌駕する。その上で軽く会話を交わしながらも、スピードは変わらない。

 会話の内容は、この3日間、試験のダンジョンに一緒に入った人達にずっと追いかけ回されていた事だ。とは言っても向こうはナル達に気づいてないので、追いかけられていたと言うには御幣があるかもしれない。向こうは単純に探していただけなのだから。

 それを2人は上手く躱していた。何故なら、今までの経験から見つかれば面倒くさい事になるだろうという事を理解していたからである。

 お礼を言われるまでは、2人とも恥ずかしくはあるが、言われて嬉しくない事はない。ただ、この力についてどんどん言及され、最終的に一緒にパーティーを組んでやるとか、ナル達自身を買ってやろうとまで言われた事もあるのだ。2人を物のように扱う者に対し、アレスやマスター達は激怒してくれ、いつも追い払ってくれる。だが、今回は誰も側にいないので、何かが起こる前に逃げる事にしたのだ。


 「最終的に街の人達まで巻き込んでくるし」

 「あれは予想外だったな」


 どの宿に行っても2人が泊まって無い事を確認したのか、3日目の朝には市場の話好きのおばちゃん達にナルとラウルを捜しているという事を広めていたのだ。

 どの宿を捜しても、2人が見つからないのはある意味当然だった。何故なら2人は街の外で野宿をしていたのだから。


 そんな訳で、街を慌てて出た理由にはそういう事情も含まれていた。


 「そうだ、一応マスターに連絡入れとこうか」

 「そうだな」


 マスターと連絡を取りながらも速度を落とす事なく、2人は一直線にコーリネへと向かって行く。






* * *






 コーリネに着いた時、もう既に日は落ちかかっているにも関わらず、村の外にまで大勢の楽しげな声が聞こえてきていた。

 村の入り口へ向かうと、ナルとラウルを見つけた門番らしき人が、にこやかに歓迎してくれる。


 「やぁやぁやぁ、よく来たね!旅人さんかい?」

 「はい」

 「これまた小さくて可愛らしい旅人さんだねぇ。──親御さんや一緒に来た人はいないのかな?」

 「いません。──ですが、数週間前に知り合いがここに居ると聞いたので、ここまで来たんですけど…」


 知りませんか?とナルが問いかけると、一瞬ではあったが、門番の男性は困った顔を浮かべた。


 「そうなのかい。2人で大変だったろう。ささ、中に入りな」


 笑顔に戻った彼はナルの問いかけには答えず、2人に早く村の中へ入るように促した。

 どうやら案内してくれるらしく、彼も一緒について来てくれる。


 村の中心部へ向かうにつれ、笑顔で忙しく動き回る人が増え、村の中央では大きな焚き火をしているようだった。

 ナル達が何かあるのだろうかと内心で首を傾げていると、それを察したのか門番の人が教えてくれる。


 「前夜祭だよ」

 「前夜祭?」

 「そう。我らの神様が明日、姿を見せて下さるんだ。それのお祝いだね」

 「神…」


 神様が姿を見せてくれる。そんな事ってあるんだろうか…?ナルとラウルは顔を見合わせるが、そんな事は聞いたこともない。きっと5番隊隊長であるヴァンさんも知らないだろう。


 「あのー、それって俺達も見れますか?」

 「もちろんさ!っと、まずはその前に村長に挨拶だな。村長ー!!!」


 少し離れていたにも関わらず、その声で振り返った村長。その顔は輝かんばかりの笑みであった。余程神様に会えるのが嬉しいのだろうか。


 「どうした?おや、その子供達は…?」

 「旅人さんだそうですよ!」

 「そうかいそうかい。あんたら運が良いなぁ。今日は前夜祭だから遠慮せずにいっぱい食べなさい。泊まるところは…私の家でも良いかい?なんせ、宿がないもんでなぁ」

 「いえ、お構いなく。俺達は外でも充分寝れますので」

 「そんな事言いなさんな。子供を外で寝かしたとあっちゃ大人の恥だ。それに久々のお客さんだしなぁ」


 そう言われ、2人は村長さんの家で泊めてもらう事になった。









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