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イースグレイ王国の幽霊王女  作者: しろ
一章 Aランク試験と信仰村コーリネ
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 真っ直ぐ進むか右か左に別れたダンジョンをモンスターを倒しながらひたすら歩き回る。そしてある所で、ナルとラウルはふと立ち止まった。


 「…また戻ったな」

 「迷路か、ここは」

 「行ってない場所は──」

 「2つ戻っての左は行ってない」

 「最初の左と、真ん中の真っ直ぐと左、その先と……」

 「他にも結構あるな…」


 取り敢えず、と2人は顔を見合わせる。


 「近いとこから潰して行くか」

 「だな」


 未だにダンジョン地下1階。この迷路のせいでナル達が思っているよりも全然進めていない。


 「マッピングしないでなんで道が分かるのよ…」


 リリスティアさんが呆れたように呟いている。どうやら独り言のようなので、ナル達はそんな彼女にはなんの反応も返さなかったが、2人だけで小さく首を傾げた。


 ──道は暗記して覚えるものじゃないのか?

 ──普通はそうだよな。違うのか?


 5番隊隊長のヴァンさんに鍛えられた2人は、暗記力が著しく成長していた。でも2人はそれに気がついていない。なぜなら競い合う相手が2人しかいなかった為である。


 「軽く走りながら行かないか?」

 「そうだな」


 ラウルの提案にナルは頷く。

 ダンジョンは初めてなので、どんな感じなのかゆっくり歩いていたのだが、出てくるモンスターはFランクばかりで罠だって大したことはない。いい加減ラウルも嫌気がさしてきたのだろう。けれどそれはナルも同じだった。


 このダンジョンが何層あるのか分からないし、合格ラインがどこかも分からない。時間も既に1時間は経っているので、出来るだけ進んで行きたいのが本心だ。


 ナルは後ろを振り返る。


 「今から軽く走って行きますが、大丈夫ですか?」

 「ああ、俺達の事は気にしなくていいよ」


 セドリックさんとオストダムさんは笑顔で頷いてくれる。けれど、リリスティアさんは「ハァッ!?バカなの、こいつら」とでも言いたそうな顔をしていたが、何も言ってはこなかった。

 ガナサックさんに、パーティーセリオの事は気にしないで良いと言われていたのに、いちいち確認したのが悪かったのかもしれない。


 ナルは反省しつつも、軽く準備運動を始める。横ではラウルも手を振ったり屈伸したりしていた。


 「よし、行くか!」

 「道の選択はナルに任せる」

 「分かった」








* * *










 軽く走り出して、2時間。

 ナル達は地下5階へと降りて来ていた。


 「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ……」

 「…ッ、さすが…、早いなぁ……」

 「2人とも、これで、息を切らさないのか…」


 リリスティアさんは座り込んで肩で息をしている。セドリックさんやオストダムさんは座り込む事は無かったが、どちらも辛そうである事は変わらない。オストダムさんは大きな荷物を背負ってる為、余計にしんどいのだろう。

 少し休憩を挟んだほうが良いだろうか。ナルとラウルは顔を見合わせる。


 「……」

 「……」


 軽いウォーミングアップのつもりだったのだが、ここまでバテてしまうとは正直思っていなかった。これからもっとスピードを上げていくつもりだったが、それも無理そうだ。


 「あの…大丈夫ですか…?」

 「ハァッ、ハァッ、大丈夫な訳ないでしょッ…!──なんなのよ、あんた達、子供のクセして…ぶっ続けで走るし……ハァッ、罠も、気にせず進むなんて……ハァッ、ハァッ、──バッカじゃないの!」


 そうは言われても…とナルは頰をかく。

 罠を見つけ出す方法も解除する方法も知らないナル達では、発動してしまった罠に対応するか回避するしか方法はない。なので、この2時間、走りながらも現れるモンスターを倒し、罠が発動して大量のモンスターが天井から降って来たのをラウルが魔法で一掃したり、地面にいきなりあいた穴を飛び越えたり(危うく落ちそうになったリリスティアさんはナルが助けた)、降り注ぐ矢の雨を走りながら潜り抜けたりして来たのだ。


 地下5階にもなると、ダンジョン内も様変わりし、しっかりした建物から洞窟のようなものへと様変わりしていた。

 モンスターも今までFランクだったものがCランク程まで上がっている。それでもナル達はまだまだ余裕だった。

 なんせ、戦いの経験が無かった頃からBランクモンスターの前へ放り出されていたのだから。




 リリスティアさんはだんだん息が整って来たのか、深く息を吐いてナル達を睨みつけた。


 「あんた達、ダンジョンを舐めてかかってるの?!いい!?ダンジョンはねぇ、走り抜けて攻略するもんじゃないのよ!どんな罠があるか分からないんだから、もっと慎重に行動すべきよ!!!私達まで道連れにするつもり!?自殺したいんなら他所でやってよね!」

 「リリスティア」


 セドリックさんが窘めるように彼女の名前を呼ぶが、リリスティアさんは止まらない。


 「罠をその都度対処出来るなんて普通ありえないから!しかも魔法は無詠唱だし……、もうっ、ほんっと、意味わかんない!!!あんた達が強いのは充分分かったからもう見せつけなくて良いわよっ!!!普通に行きなさいよっ!普通にっ!!!」


 だんだん怒り口調にはなっているが、その内容はナル達を称賛しているようで、ナルとラウルは反応に困ってしまう。


 「こら、リリスティア。この子達が凄いからってそれはちょっと喋り過ぎだ。一応試験中なんだぞ」

 「そんな事分かってるわよ!でもこんな進み方されたんじゃ私達が死んじゃうわ!この子達、まだ余力も残ってそうだしもっと早く進みたいって顔してるもの!それに考えてみなさいよ!ここまで私達、ついて行くだけで一度だって戦ってないのよ!2人して後衛のくせに!!!」


 2人とも剣は持っているのだが、ダンジョンに入ってからは魔法しか使っていなかったので後衛だと勘違いされたんだろう。ナルがラウルを見ると、彼はどう思われていようが関係ないとそっぽを向いていた。


 「そうだな。確かに、はっきり言ってついて行くだけでバテてる俺たちは足手まといだ。でも、だからと言って投げやりになって良いわけがないだろう」

 「ふん。ここまでは簡単に来る事が出来たけど、それもここまでよ」


 座り込んだままリリスティアさんはビシリとナルとラウルを指差す。


 「ここからはそう甘くはいかないんだから。あんた達がいくら強いからってそう簡単に進むもんですか!モンスターだってだんだんランクが上がって行くのよ!くれぐれも巻き添えにはしないでよね!」


 そのリリスティアさんの頭をセドリックさんが軽く叩く。


 「イッ!!!何すんのよ!」

 「バカ。いい加減にしろ。俺達は今、依頼を受けてここに居るんだ。役割が果たせないなら今すぐ1人で帰れ」


 セドリックさんの言葉にリリスティアさんは唇を噛んで詰まった。


 「そうだぞ、リリスティア。この2人のスピードが速いからって駄々をこねちゃいけない。お前もAランク冒険者だろう。簡単にへばってないで、彼らの足手まといにならないようにしないと。ほら、立って」


 オストダムさんに差し出された手を取り、渋々立ち上がるリリスティアさんだったが、ナル達にはもう見向きもしない。


 「悪いな。前はもっと──」


 その時だった。

 ガタンッと地面が一度大きく揺らぎ、ガタガタガタと続けて揺れる。まるでダンジョン全体が揺れてるようだ。

 そして、目の前の地面が徐々に形が変わっていく。それはだんだん階段へと様変わりしていった。


 「っ!?」

 「なっ、なによこれ!」


 そして、ナル達の目の前に通路いっぱいの階段が現れた。後ろは壁で既に塞がれている。


 「降りろって事か…?」

 「そうみたいだな」

 「ダンジョンってつくづく不思議な場所だなぁ」


 ラウルがコクリと頷いて同意したところで、セドリックさんは考え込むようにしながら声を発した。


 「…いや、今回はおかしい。普通ならこんな事は起こらない」

 「そうなんですか?」

 「ああ。でもここはもう、進むしかないみたいだな」


 先の見えない真っ暗な階段へとナル達は足を踏み入れた。













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