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イースグレイ王国の幽霊王女  作者: しろ
一章 Aランク試験と信仰村コーリネ
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 翌日。

 ナルとラウルは時間よりも15分早く、ギルドに着いた。

 受付に行くと既にガナサックさんがいて、こちらに気付いたようでにっこり笑って手を振ってくれる。


 「ああ、おはよう。早いね」

 「おはようございます」


 ナル達の元へ来てくれたガナサックさんは、2人の格好を見て固まる。


 「…え?え、俺、昨日ちゃんと言ったよね?1週間ダンジョンに籠るって」

 「はい、聞きました」

 「荷物、少な過ぎない?」


 そう。ナル達の格好は昨日とほぼ変わっていなかったのだ。

 どう見ても、武装と言うよりも旅装のような格好に腰に剣を差し、荷物といえば剣と反対の腰に取り付けた小さな腰バッグのようなものだけである。


 「あー、実はこれ──」


 ナルが説明しようとした時だった。


 「おっはよーございま〜す!」


 ぞろぞろと沢山の人が、ガナサックさんの前へと集まりだした。

 その数、13人。

 急に大勢の人が集まって来たので、人があまり得意ではないラウルはそっとナルの背後へと隠れる。

 ナルもそれは理解しているので、何も言わない。


 「あ、昨日の」


 その中には、昨日、ギルドへ入る前に声をかけてくれた優しげなお兄さんもいた。


 「こんにちは」

 「もしかしてお前達も……?」


 「も」という事はお兄さん達も試験を受けるのだろうか。ナルが首を傾げると同時に「よし、揃ったね」とガナサックさんが声を上げた。


 「今日、Aランク試験を受けるのは2組だね。1組めはミンズパーティー。ここには、Aランクパーティー、高い花についてもらう」


 ミンズパーティーと呼ばれた5人がペコリと高い花と呼ばれた3人のパーティーに頭を下げる。


 「で、2組目の2人組…パーティー名は聞いてなかったね」


 視線でパーティー名を聞かれるが、別にパーティーという訳でもないのでそう言った名前はない。敢えて言うのなら、ユニバースだろうが…ここで言うのは違うだろう。それに、マスターには秘密にするよう言われているし。

 なので、ナルは首を横に振った。


「そうか。それじゃ、ナル君とラウル君についてもらうのはパーティー、セリオ」


 セリオと呼ばれたパーティーに向かってナルは軽く頭を下げる。優しげなお兄さんもそこにいた。3人とも何故か驚いているみたいだ。


 「えっ、少なっ!2人だけ?しかもお子ちゃま!ね〜ね〜、本当に大丈夫でちゅか?私達、お守りはしませんよぉ?」

 「おいっ!リリス!!!」

 「大丈夫です。心配ありません」


 お兄さんがお姉さんを諌めてくれるが、ムッとしたままナルが言い返すと、ガナサックさんが援護してくれた。


 「その子達の実力は確かだよ。──テストではね」


 テストではって事は、ガナサックさんも俺達の実力をあまり良くは思ってないらしい。やっぱり昨日のテストは、紫色の風船を一瞬で壊さなければダメだったのだろう。

 この試験で頑張って合格しなければ…。


 「Aランクの先輩達が実力を見て僕に報告しに来てくれるから、くれぐれも不正はしないように。あ、自己紹介は各自よろしくね」


 ガナサックさんはクルリとナル達を振り返る。


 「さっきの続きだけど…、今なら食料を買いに行くくらいは待ってあげるよ?」

 「いえ、大丈夫です。このバック、収納魔法が施されているんです」

 「なっ!?収納魔法!!?」


 ナルの言葉に反応したのは、試験を受けに来たパーティーの1人だ。


 収納魔法は空間魔法の一種で、使える人が少なく販売数も少ないので値段も高い。一冒険者じゃ、Dランクくらいがギリギリ買える値段なのだ。


 「めっちゃ高いやつじゃん!え、何ランクのやつ?」

 「…Sランクです」

 「私達のでもBランクのなのに…?」


 パーティー、高い花の1人が愕然と呟く。

 ラウルからは嘘をつけば良いものを、と視線で言われるが…。

 だってしょうがないじゃないか。これはアレス達がもしもの時の為にと、集まって作ってくれたものだから買ってはいない。そして、ナル達も空間魔法を使えるようになったので、下手にCランクとか言うと、物を入れる量が少なくなるのでやりにくいのだ。


 これについては適当に言葉を濁し、そして、案内されたのはギルドの中にある大きな庭園だった。真ん中に大きな木が立っている。

 そこまで行くと、ポッカリ穴が開いた場所がある。ここがダンジョンの入り口のようだ。


 「さぁ、始めようか。期間は1週間。今は誰も入れてないから、このダンジョンに入るのは君達だけだ。どっちから行く?」

 「それって先行だと不利ですよね?」


 ミンズパーティーの1人が聞くと、ガナサックさんはああ、と手を叩いた。


 「このダンジョン、降りる階段が沢山あるんだよ。だから、ずっと一緒って事はないよ、きっと。別にスピードが合うなら一緒に行っても構わないし」

 「いえ、それはいいです」


 ナル達を見て鼻で笑うミンズパーティー。

 なんだか物凄くユニバースに帰りたくなった。あそこにナル達をバカにする人達は1人もいないのだ。


 「坊ちゃん達から先に行くかい?」

 「どちらでも」

 「そうかい。なら、先に行かせてもらうよ」

 「どうぞ」


 先行したパーティーを見送った後、ナル達は30分後に出発する事にした。


 「──別に10分後から行って良いんだよ?」

 「良いんです」


 ガナサックさんの言葉に首を横に振るナル。


 「先に自己紹介だけしておきましょう。ナルです。よろしくお願い致します」


 ナルの言い方に、さっきのお姉さんに言われた言い方が相当腹を立てているようだとラウルは思う。


 「──ラウル」

 「ラウルです。よろしく」


 ナルに促されラウルも挨拶したが、ラウルの3人を見る目は冷たかった。

 それを見て苦笑しながらも1番に声を上げたのは、昨日声をかけて来てくれた優しげなお兄さんである。


 「ご丁寧にありがとう、俺はセドリック。よろしくな。いやぁ〜、驚いたよ。まさかAランク試験を受けに来てただなんて!言ってくれれば良かったのに!」

 「フン、どうせ金持ちのお坊ちゃん達のお遊びでしょ。すぐ終わるわ。安心して、死体はちゃんと持って帰ってあげるから」

 「リリスティア!滅多な事を言うんじゃない!──悪いな、ちょっと機嫌が悪いんだ。悪い奴じゃないんだが…」

 「いえ…」

 「彼女はリリスティアだ。んで、こっちが──」

 「オストダムだ。頑張れよ!最年少組!」

 「フン、お坊ちゃん達なんか応援してもどうせ落ちるわ。──私達の事は気にせず進んでくれて構わないから。ちゃんとついてくわ、これでも貴方達と違って、ちゃんとしたAランクだもの。ちゃんとした、ね!」

 「リリス!!!」

 「──では、遠慮なく」


 にっこり笑ったナルの笑みに、ラウルはナルが本気で行くつもりだ、と冷や汗を流した。









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