23
「ここまでありがとうございました」
「いえいえ。こちらこそありがとう。おかげで楽しいひと時を過ごせました。また会う事もあるでしょうから、さよならはなしにしましょう」
「はい!」
「Aランク試験、頑張ってね!!!」
「決して無理をするなよ」
「ありがとうございます!皆さんもお気をつけて」
「あはは!もう街の中に入ったんだから、そんなに心配する事ないわ!」
「それもそうですね」
グランドアルス帝国の帝都グランディ。帝都に入ってすぐにある広い広場でナル達はペインスハイムさん達と別れた。
「ここが帝都…。大っきいなぁ…」
「そうだな」
大きな建物がずらりと並び、今いる広場には沢山の人で賑わっている。
広場の一角で芸を披露している人もいれば、そこら辺で遊んでる子供達もいるし、物を販売したりしている人。どこを見ても、人、人、人。
帝都なので広いのもあるだろうけど、ユニバースの街より圧倒的に賑わっていた。
街のあちこちを見て回りたかったナルだったが、2人は相談して真っ先にギルド本部を目指す事にした。
Aランク試験がいつ行われるか分からなかったからだ。
ギルドは街の中心部にあった。流石に本部というだけあって、ものすごくでかいし綺麗だ。
2人が感心してギルドを見上げていると、ギルド前で楽しそうに雑談していた人の良さそうなお兄さんがおや?という顔をした。
革鎧に武器を装備しているところを見ると、どうやら冒険者のようだ。
「なんだなんだ。ここに興味があるのか?それともお使いか?」
「いいえ。俺達は冒険者なんです」
「そうなのか?──なら、危ない依頼はやめとけよ。俺らはそのくらいの歳で調子に乗って死んじまう奴らを何人も見てきた」
「そうなんですね、気をつけます。ご忠告ありがとうございます」
男の人は何か言いたげにしていたが、飲み込んだようで、
「まぁ、頑張れよ」
とだけ言ってさっきの人達の元へ戻って行った。
中は沢山の人でごった返していた。
天井は高く、広めに作られているようだが、こんなに多くの人々がいると狭くも感じる。
そこを通り抜けて受付まで行くが、その受付台がまた高い。
見る限り体格や背の高い人が多いので、高めに設計しているのだろう。
ナル達では頭の先くらいしか見えない高い受付だ。
背伸びして何やら書類仕事をしている女の人に話しかける。
「すみません」
「はい、どうされました?」
「Aランク試験を受けたいのですが」
「えッ!?」
こんな子供が!?という言葉が飛び出しそうになったのか、お姉さんは慌てて口元を押さえる。
「ギルドカードと紹介状はありますか?」
言われた通り渡すと、お姉さんが紹介状に目を通しだした。
「え、嘘…。あのユニバースから…?え、何、なんなの…?この子達2人を紹介…?──マジか」
読んでいくお姉さんの顔色がどんどん変わり、口調も変わっていく。本人はきっと独り言のつもりで、気づいてはいなさそうだ。
「しょっ、少々お待ち下さい!」
慌てて奥へ行ってしまったお姉さんを待つ事数分。
今度はまだ30代くらいの優しげなお兄さんを連れて戻って来た。
「やぁ。君達がユニバースから紹介されて来た子達?凄いねぇ。あのイーサン様から認められるなんて」
黒髪黒目で、優しげに細められた左の目の下には泣きぼくろがある。
いかにも優しそうな人ではあるが、何かを企んでいそうでもある。そんな笑顔だ。
「さぁさ、こんな所で話をするのもなんだからね、奥へどうぞ。ずっと背伸びしてるのも疲れるだろう?」
通された応接室のような部屋。ここにあるソファーの座り心地は、これまでにないくらいフッカフカだった。
「私はギルド本部、総本部長をしているガナサック。簡単に言うと、全てのギルドをまとめているんだ。よろしくね?」
「ナル・ホーリングです。よろしくお願いします」
「──ラウル・パルドラン」
「ナルくんにラウルくんだね。さて、Aランク試験だったね。君達は運が良い。ちょうど今月は明日で最終日だったんだ。その後はしばらく出来ないからね」
「そうなんですか?」
「試験会場がね、ちょっと危険になる時期に入るんだよ」
「危険?試験会場ってどこなんですか?」
「そうだね、それも含めて話そうか。まず、ギルド本部に併設されている訓練で軽くテストをした後、Aランク冒険者を伴った1週間の試験に入る。試験会場はギルド本部が保有している、ダンジョンだ」
ダンジョン。世界に数百ほど存在し、その実態は明らかになっていない。
ただ、モンスターが出てくる事、高価な鉱石や宝石があり、良質な武器が眠っている事があることから、死んでしまう可能性が高いのにも関わらず、一攫千金を狙った冒険者達がこぞって冒険するのだ。
基本、ダンジョンは出入り自由だが、稀にお金持ちや貴族などが有しているダンジョンもあるという。誰かに保有されたダンジョンは、入るのにお金を払ったりしないといけない場所や、入って獲得した物をその保有者に渡さないといけない決まりなどがあるのだそうだ。ちなみにナル達はダンジョンに一度も入った事はない。
「ダンジョン内でどれくらいの数のモンスターを倒せるか、何層まで降りられるかが試験の結果になる。ただ、どこまで進めば合格かとかは言えない」
「つまり、進めば進むほど良いって事ですね?」
「そうだね。その実力によってはSランクまで飛び級した人もいるよ。まぁ、ほぼいないんだけどね。先に言っとくとAランクになる人も少ないから。ちなみに筆記試験はないよ。1週間ダンジョンに潜る事になるけど、試験は明日からだ。テストは今日の内に終わらせてしまおう。準備を急いでしないといけないけれど、明日からで大丈夫かな?明日を逃すと最低でも一月は待ってもらわないといけない」
「明日で大丈夫です」
「よし、なら急いでテストしよう。何か他に質問は?」
少し考えたナルはハイと手を上げる。
「ラウルとは別々の行動ですか?」
「いいや、一緒で構わない。パーティーで挑む人がほとんどだからね。逆に単独で受ける人の方が少ないんじゃないかな?」
「そうですか、ありがとうございます」
「他には?」
「大丈夫です」
ナルとラウルは首を横に振る。
ガナサックさんは両腕を口の前で組み、真剣な表情でナル達を見た。
「じゃあ、最終確認をするよ。ユニバースのギルドマスターからの紹介だから大丈夫だとは思うけど、Aランク試験は本当に危険だ。裏金でここに来たとかなら今すぐやめた方がいい。実力が伴っていないのに受けたら死ぬだけだ。大怪我をして二度と冒険者に戻れない事もある。でもそれはまだマシな方だ。死ぬ事だって当たり前にある。それでも試験を受けるかい?」
「受けます」
「はい」
迷わず2人は返事を返す。
「なら、この契約書にサインしてくれるかい?ダンジョンだからね。危険に変わりはない。舐めてかかれば死ぬ。慎重に行動してても死ぬ事もある。だから自分の意思で入ったって事を証明するものなんだ」
2人がサインするとガナサックさんは立ち上がった。
「じゃあ、早速軽いテストをしよう。ついて来て。あ、言うの忘れたけど、これで落ちる事もあるから。落ちたら明日の試験はなしね」
彼は腹黒い笑顔でそう言った。




