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イースグレイ王国の幽霊王女  作者: しろ
一章 Aランク試験と信仰村コーリネ
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 「いい?このご時世、良い人ばかりじゃないんだから、なんにも考えないで誰にでもポンポン自分達がBランクだとか言っちゃダメだよ?分かってる?不用心だからね?」

 「そうだぞ。Bランクは比較的多いとは言え、お前達のような子供達がBランクだと信じる者はほぼいないだろう。バカにされて終わりだ。ましてやAランク試験を受けに行くなど…」

 「そうそう。Bランクになるだけでも大変なのに…」

 「まぁ、中には金でランクを上げてる輩もいるようだがな」

 「とにかく!あなた達が強いんだとしても、バカな連中に喧嘩をふっかけられる事もあるんだから、あんまり言わない事!分かった?」


 クレアさんは、スプーンを持った手をビシッとナル達に突きつける。


 何故かナルとラウルはクレアさんとタンドリクスさんに説教を受けていた。


 パチパチッと弾ける焚き火を囲み、みんなで夕食を食べている。今日の夕飯は、ペインスハイムさんが持っていた長時間保存出来ない食料をご馳走になっていた。ナルとラウルは遠慮したのだが、「一緒に旅をしている仲ではありませんか。それに、私が子供2人食べさせてあげられないなんて不甲斐ない事をさせるんですか?」と言う言葉に甘えさせてもらったのだ。


 ポツリポツリとここ以外にも焚き火が見える。みんなが固まらないのは、モンスターの襲撃に備えての事だ。強い集団が固まってるなら何も問題はないのだが、力のない者達が集まると逆にモンスターに全滅させられる危険性がある。それを避けての事だった。


 ユニバースの街から最初の街まで辿り着くのに普通に行けば最低1週間はかかるのだ。

 なので転移魔法塔を使わない場合は、野営しながら旅を続ける。


 「でも…」

 「でもも何もないの!分かった!?」

 「は、はい!」

 

 クレアの気迫に押されて思わず頷くナル。


 「──あなた方は俺達が嘘を言ってるとは思わないんですね」


 ラウルの言葉にキョトンとした顔をするクウラさん。そしてにっこり微笑んだ。


 「あら。私、人を見る目だけはあるのよ!それにあなた達はユニバース所属でしょう?あそこは試験、厳しいので有名なのよ。田舎者は知らないでしょうけど」




 「食ったんならさっさと寝ると良い」とタンドリクスさん、それにペインスハイムさんに促されてナルとラウルは毛布を巻きつけ地面に横になる。

 2人とも訓練で気配には敏感になっているので寝てても平気なのだが、クレアさんとタンドリクスさんが交互で見張りをすると言う言葉に自分達もと手を上げたが、「子供はそんな事を気にしない!早く寝なさい!」と黒い笑顔の3人に即座に却下されてしまった。








* * *










 旅の途中で現れるモンスターは、クレアさんとタンドリクスさんが処理し、一行は無事に最初の街、コレアスに着いた。


 評判の良い宿を3部屋とり、食堂で夕食を食べる。部屋割りはペインスハイムさんとタンドリクスさん、クレアさん、ナルとラウルだ。ナル達の部屋の代金も出してくれようとしたのだが、ここは丁寧に断らせてもらった。そこまで甘えるわけにはいかない。


 「我々は明日の朝買い出しに行って来ます。昼過ぎに出発しましょう。その間、お暇でしょうから好きな所を観光して来て下さいね」

 「ありがとうございます」


 解散し、ナルとラウルは部屋で話し合う。


 「明日はどうする?」

 「うーん…美味いものでも買って食べ歩きでもするか?そのついでに転移魔法陣でも描ける場所を探して…」

 「それも良いかもな」


 その時だった。


 ビーッビーッビーッ


 耳のピアスから音が鳴り響く。2人からしたら大音量だが、例え人が真横にいてもその人には聞こえないようになっている。


 〈はい。ナルです〉

 〈…ラウル〉


 魔力を通し、通話可能な状態にし頭の中で返事をする。連絡はマスターからだった。


 〈2人とも、悪い。今どこにいる?〉

 〈コレアスの街の宿です〉

 〈そうか。ちょうどいい。今行けるか?ミニゲートが現れた。ちょうどコレアスから南東の方角だ。距離、魔物の数ともに不明だが複数体はいる。ゲートはすぐに消えるかもしれないが…消えなかったら厄介だ。ゲートごと潰してほしい。2人いれば余裕だろう〉

 〈はい!〉

 〈分かりました〉


 2人は即座に空間収納からフード付きのローブを取り出し、顔が見えないように深く被った。


 窓の外を見れば、焦った男達がバタバタと街の外へと走って行く。


 「モンスターだ!大量のモンスターが街の方向へ来る!」

 「冒険者を集めろ!」

 「女子供は家の中から出るな!」


 どうやら魔物から逃れようと逃げて来たモンスターが街まで下りて来たらしい。



 2人は顔を見合わせ、頷く。そしてナルとラウルは部屋の窓から躍り出た。






* * *






 「何やら外が騒がしいようです。少し様子を見てきます。もしもの時は…」

 「ええ。気をつけて下さい。私の事は気にせずに行ってきて下さいね。なに、大丈夫ですよ。私はここでジッとしておくので」


 一礼し、タンドリクスが部屋のドアを開けたところでクウラと鉢合わせる。


 「ちょうど良かった!外へ行くよね?」

 「ああ」

 「ペインスハイムさんは?」

 「ここで待機してもらう事になった」

 「ナル達を呼んで来ようか?」

 「いえいえ、それには及びませんよ。もう寝てるかもしれませんし、そっとしておいてあげて下さい」


 タンドリクスの後ろからペインスハイムがそう声をかける。


 「それもそうですね。分かりました」

 「貴女も気をつけて下さいね」

 「はい。ペインスハイムさんもお気をつけて。私達以外には絶対に扉を開けないで下さいね?」

 「分かっていますよ」




 宿の外に出た2人は、街の外へと向かっていく男を捕まえて事情を聞く。


 「すみません!何があったんですか?」

 「ああ、なんでかモンスターが大量にこっちへと向かって来てんだ。それも全方向からという訳じゃなく、南西の方からだ。人手が足りない、情報なら冒険者ギルドに行ってくれ。悪いが俺は行くぞ」


 タンドリクスとクレアは顔を見合わせた。


 「それなら俺達も手伝いましょう」

 「私達も冒険者なんです」

 「おお!あんたら冒険者か!それは助かる!」








 城門の外では多くの冒険者が戦っていた。

 既に負傷者も出ているようで、門の中へと退避する者もいる。


 「絶対にこの門を通すなぁっ!!!家族を守りたいなら命懸けで守れぇっ!!!」


 ごつい男が槍を振り回し、モンスターを次々倒しながら叫んでいる。


 モンスターはスライムからBランク冒険者が苦戦するような魔物まで様々だった。唯一の救いは、この辺にドラゴンなどの高ランクモンスターが住んでいなかった事だろうか。

 こんなに様々な種類の魔物が、一緒に街へ目指してる事をクレアは不可解に思った。


 「どうして…」

 「考えるのは後だ。行くぞ」

 「うんっ!」


 2人は強いモンスターへと自ら飛びがかかって行った。








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