記者と女刑事
-19-《記者と女刑事》
誠二とその他が色々こちゃこちゃしてる頃、神崎と篠田は薄暗く埃っぽい場所にいた。
「くぐ、狭い………」
その広さは人一人がギリギリ通れる位で、目の前には先行する神崎の足が見える。つまり、ここは普通の通路ではなく、通気孔だ。
「地図を見た限り、そんなに遠くなさそうですから。我慢して下さい。」
神崎は後ろで苦しそうに体を前進させていく篠田に無感情な声で言う。篠田は思わずそれに苦笑いを浮かべながら、神崎に聞いた。
「刑事さん、ここ以外の、通り道は、ない、のかい? 」
神崎は進むうちに自分の真下に現れた金網部分から下を覗いて答える。
「他の所を通ってもいいですが、銃の弾数が限られている以上、下手な遭遇は避けたいんですよ」
そして、自分の現在地を確認し終えると、体を少し後ろに動かして金網を取り外し、後ろに続く篠田に指示を出した。
「篠田さん、ここがコンテナ置き場みたいです。見張りも居ませんし、ここから出ましょう」
「なんだか随分と手慣れてるね………」
篠田はその手際に思わず顔を歪める。
機動隊や軍隊ならともかく、こんな作業に慣れてる警官なんて、どう考えてもロクなもんじゃない。先に出た神崎は、不安そうな目を通気孔の中から向けてくる篠田にそれについて説明した。
「こういうのが得意な先輩がいるだけですよ。私がやったのは銃撃と恐喝、暴行だけなんで安心して下さい」
勿論、篠田は納得するどころか、恐怖心を増強されたんだけども。
(どうしよう、安心できない罪状がならんでる………! )
そんな時、不意に異質な叫び声がコンテナ置き場に響き渡った。
「何事だ!? 」
篠田が直ぐに反応してコンテナの上を移動し、下を見ると、そこは大変な事態になっている。
一人の男が武器を持った大人数に囲まれ、壁際に追い詰められているのだ。
篠田は慌てて神崎に報告した。
「刑事さん、大変だ。仲間内でもめているらしい。助けてやらないと」
しかし、神崎は様子を確認すると、途端に呆れ顔を浮かべて小さくため息をつき、つれない返事をする。
「………いや、あの人なら大丈夫ですよ。敵を引き付けてくれてるみたいですし、さっさと行きましょう」
「み、見捨てるのか!? 」
篠田は神崎に一歩踏み寄って、腕を左右に広げ、驚愕した。しかし、それもその瞬間までで、数秒後には神崎と同じ呆れ顔になっていたんだけど。追い詰められる男は叫んだ。
「マジ無理! 死ぬぅ! 死ぬ前に誰かパフパフしてぇえ! できればDカップ以上の子ぉ! 」
男は、変態だったのである。
そして、直後に響く銃声、倒れ込む大和。
銃を撃ったのは勿論、神崎だった。
彼女は銃口から昇る白煙を吹き消す仕草をして、低い声で言う。
「ふ、またつまらん変態を撃ってしまった………」
篠田は銃声で集まった視線の中で叫んだ。
「いや、ホントになんでこんなつまらないこと使ったの!? これ、まずいよね! 絶対にまずいよね!? 」
神崎は目を閉じて小さく笑う。
「………グッドラック、私」
それは完全に諦めたボイスだったという(篠田談)。
「うあああああ!!! 」
篠田は発狂同然に悲鳴を上げた。神崎はそんな彼に言う。
「安心してください。私が命を賭して貴方を護りますから」
「け、刑事さん………! 」
篠田は彼女に怒りたいような、感謝したいような複雑な気持ちになって、そして、次の台詞でどちらかを決めた。
「………まぁ、私が死んだあとは保証しませんけどね」
「うあああああ!!!(二度目)」
そう、やっぱり怒るべきだ。
するとそこに、先程倒れたはずの大和も乱入する。大和は立ち上がって叫んだ。
「栞ちゃん、無事だったんだね! 怖かっただろう! 僕の胸に飛び込んでおいでぇ! 」
まぁ、その直後に飛び込んできたのは暴動の人達だったけど。神崎は仕方ないとばかりに息を吐く。
「大将はちゃんと見つけてくれたんですか? 」
人間の波に押し潰され、口から血を吹きながらも、それに大和は答えた。
「勿論さ! 僕の持ちうる資料全部に検索を掛けて、小暮出版の事件記事を担当してる人間をピックアップしたら、案の定、篠田運送に恨みを持つ人間がいたよ! 月島栄作って男だ! つーか助けて! 」
答えを聞いた神崎は最後の二発を大和と他の人間を避けて撃つ。簡単に言えば威嚇射撃だ。威嚇射撃を受けて、蜘蛛の子を散らすように大和から離れる人間たち。大和は咳払いをして、その人間たちに笑いをぶつけた。
「はっはっはっ! 腰抜け共め! 僕の栞ちゃんはお前らなんかより強いんだよぉだ! 」
まぁ、その直ぐ後、
「え? 殴って欲しいって? いいですよ、骨格変える勢いで殴ってあげます」
と、狂気の目で神崎に睨まれたけど。
大和は反射的に土下座をした後、神崎に叫ぶ。
「月島は第3コンテナにいる! もたもたしてないで、はやく片付けよう! 」
しかし、そう順調には行かないようで、誰かの声がコンテナ倉庫全体に響き渡る。その声は不思議なことに大声ではなく、静かに話すような優しい声色だった。
「『そうだ、不毛な戦いは終わらせよう。凶行を働く支配者から、私たちの安寧を取り戻すんだ。さぁ、武器をとれ。 相手の弾は尽きている。勝利は私たちの元にある』」
そして、声に突き動かされるように、人々は再び武器をとる。
《つづく》
<次回予告>
誠二「あのさ、一つ聞いていい?なんで俺、毎回ボッチなの?神崎と大和がセットなら、俺と愛助セットでいいじゃん、なぁ?」
カンペ『愛助さんは野球で忙しいそうです』
誠二「それいったら俺だって忙しいぞ、新作 (ゲーム)まだ片付いてないし………というか神崎、お前もそんな下らないことしてないで、喋れよ」
カンペ『嫌です』
誠二「なぜなのか………」
カンペ『次回、絶対正義の英雄忌憚、《悪魔の取引》どうぞご期待下さい。そして友達になってください』
誠二「言わねぇよ!?」
《つづく》




