悪魔からの挑戦状
-18-《悪魔からの挑戦状》
【拝啓 八代誠二様
貴方は私達のゲームの参加者に選ばれました。これからは、こちらの指示に従って貰うことになります。拒否しても良いですが、その時は代償を覚悟して下さい。
囁きの悪魔 ウィスィより】
「なんか、挑戦状ってよりは手紙って感じだな………」
隣にいた愛助が、血の零れる下腹部を押さえつつ呟く。誠二はその呟きに無表情で頷いた。
「それな。こっちの勝利条件も示されてないし、何で戦うのかも分からねぇし」
漏らした言葉もなんとも誠二らしい切り口である。愛助は小さく広角を上げて、
「まぁ、指示もあるみたいだし、条件はその時聞けるんじゃねぇの? 」
と誠二に紙を手渡した。誠二はそれを受けとるともう一度目線を紙の上から下に動かして、不満を溢す。
「いや、こういうもんは最初から条件示しとくもんだろ。マナーだろ」
愛助はその言葉に耐えきれず、声を上げて笑いだした。
「悪魔にマナーと通じんのかよ? 」
それはいつも通りの誠二の態度を見て、自分の不安が馬鹿らしくなったのかもしれないし、ただ単純に深刻な雰囲気に馴れていなかっただけかもしれない。確かなことは言えないが、少なくとも今訪れた恐怖は去った気がしたのだ。
後から考えれば、それは単なる思い違いだったのだろうが。
『ふふ、随分と盛り上がっているね』
二人の脳内、いや、もっと何処か深いところから、その声は響いてきた。
「ああっ! 誠二、これだよ! この声だよ、俺が聞いたのは! 」
それを聞いた愛助は途端に声をあげる。
だが、誠二は彼に冷たい目を向けて、
「だろうな」
と興味なさそうな言葉を返すだけだ。
「だろうなって………!」
愛助はその反応の理由が良く分からず、戸惑うが、不可思議な声は彼の意識が安定するのを待ってはくれない。
『八代、勝利条件が気になるんでしたか。なら今すぐ、示してあげましょう』
どころか声は、彼の次の言葉を抑制するように、微笑み掛けるような調子で、誠二に言う。言われた誠二は手のひらを上に右腕を伸ばして、四本の指を幾度か持ち上げた。
「ああ、ク◯クラでもス◯ブラでも◯PSでも何でも相手になってやるよ」
ただ、その言葉は真面目に言ってるのか、それともふざけているのか分からなかったが。愛助は、
「なぁ八代はん、なんで対戦ゲーム限定なん? 馬鹿なん? 」
と誠二の肩をたたく。
不思議な声は誠二の言葉に『ふふ』と小さく笑いをこぼして続けた。
『そちらも面白そうですが、こちらにも事情がありますからね。《彼》を納得させなければなりません』
誠二はその言葉に首を傾げる。
「彼? 誰のことだ? 」
当然、答えてはくれなかったのだが。
声は落ち着いた美しい言葉で、
『ふふ、それは又の機会に………。今は条件の説明をしましょう。あなたの勝利条件は《このゲーム終了まで、つまり一週間の間、人を殺さないこと》、ただそれだけです』
と宣言していた《ルール》を説明した。
誠二は聞かされた内容に、不敵な笑顔を浮かべる。
「そりゃまた、随分と簡単な条件じゃねぇか? それでいいのか? 」
声はその様子が見えていたのか、少々可笑しそうに笑って応えた。
『いいも何も、これは私ではなく《彼》が出した条件なのですよ。勝利すればいいこともありますから、頑張って』
「いいこと? 」
誠二はまた彼女に聞く。
すると今度はしっかりとそれに答えた。
『ええ、貴方には嬉しい景品ですよ。具体的には、そうですね………《私が利根明の無実を町の全員に囁き、私は此処に二度と戻らない》という感じでしょうか? 』
落ち着いた調子で放たれた言葉に、誠二は驚愕する。それは声も出ないほどに。
「!! 」
愛助はそんな誠二の代わりに、声に疑問を投げた。
「ま、まさかあの事件にもお前が絡んでたってのか!? 」
『絡んでいた? 違いますよ』
彼の質問に、声は不思議そうに語尾を上げて答える。
『あれは私が起こしたんです』
「なっ!? 」
これには愛助も思わず言葉を失った。
そして、二人が黙ってしまったのを見届けると、声はゆっくりと語り掛ける。
『質問はそれだけですか? ならば早速始めましょう。貴方の図太さ、見せて頂きますよ』
声の後ろでは、見上が何かを呟いていた。
「篠田…運………神崎…………」
《つづく》
<次回予告>
神崎「どうも神崎です」
大和「どうも松崎です」
二人「今回は宜しくお願います」
神崎「前回のことを反省し、私たちは今後厳かに予告を行っていこうと決めました。松崎さん、宜しくお願いします」
大和「はい、承りました、次回、多分正義の英雄忌憚、《記者と女刑事》、期待せずに待っていて下さい」
《つづく》




