必然の暴動
-17-《必然の暴動》
時は進んで篠田運送、社内。
薄く白煙を上げる神崎の銃の先には、腕を押さえて窓の外に逃げ出す二人の男と落ちたナイフ、そして目を大きく開いた篠田社長。社長は驚きつつも、すぐに笑みを戻して、神崎に話しかけた。
「おやおや、警察は威嚇発砲が基本じゃなかったのかね? 」
しかし、言われた神崎は銃を自分の腰のホルスターに戻して無表情に答える。
「………ええ、基本はそうですよ」
篠田は彼女にもう一度問いかけた。
「はは、今回は基本じゃないのか? 」
彼女は小さくため息をついてから、社長の後ろの窓の外に歩み寄り、窓から下を覗き込む。
「この状況がデフォルトだったら、本当に世も末でしょう」
そこにあったのは、何かを叫ぶ、黒山の人だかりと、ボロボロになった貨物の残骸。社長は表情を苦笑いに変えて神崎の意見に、
「それもそうだ。私も毎日これじゃあ気が滅入るよ」
と頷いて、続けた。
「神崎くん、なんとかならないかな? 」
神崎は自分の帽子と制服を少し整えてから、静かに社長に聞く。
「刑務所送りは後でいいんですか? 」
社長はそんな彼女の質問に、耐えきれず声を出して笑った。
「ははっ、別に構わないさ。これを解決出来たら報告も上げないし」
神崎はそんな社長の態度にやや戸惑ってから、最初の質問に返答する。
「なんとかしますよ」
そして、窓から身を乗り出すと、空に向かって二発発砲した。発砲音を聞くと、窓の下に集まっていた人間たちの殆どは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。神崎は背中を向けたまま、社長に聞いた。
「これの原因はなんですか? さっきの人たちはここの社員ですか? 」
社長は小さく頭を掻いて、彼女の質問に答える。
「暴動の原因は恐らく小暮出版の新聞記事だ。私が名指しされて、麻薬取引をしているとまで書かれたからね。それを批判する人達が集まったんだろう。さっきの二人も社員ではないよ」
神崎は彼の説明に一つ頷いて、身体の向きを社長の方へと動かした。
「なるほど、分かりました。変態の知り合いがいるので確認してみます」
そして、上着の内ポケットからスマホを取り出すと、いくつかの番号をフリックして、本体を耳に当てる。電話は直ぐに繋がった。
『はい、こちら松崎大和、首尾はいかがですか? 』
電話の先の男は、心春確保のために一緒に行動した松崎大和である。神崎は彼の言葉に、
「こちら神崎栞、物凄くフィーバーしております。今後の人生ではもう良いことが起こらなそうです」
と軽く返答してから、彼に質問を投げ掛けた。
「ところで松崎さん、小暮出版って知ってますか? 」
大和は聞かれたことに直ぐに答える。
『ん、ああ、知ってるよ。あそこが出す記事は高尚だとか、もっとも信頼性があるとか、何かと信者も多いしな』
彼いわく、小暮出版というのは格式ある出版社だが、常々不正だの汚職だの、そういう記事ばかりを書いているところらしい。神崎は大和に重ねて質問した。
「その出版社、最近変なところとかないですか? 例えば、ええと………急にある企業だけを攻撃しだしたりとか」
すると、大和は一瞬言葉に詰まって、真剣な声色で説明する。
『………篠田運送。最近は専らあそこばかりを攻撃しているよ。前はそんなこと、無かったんだが』
そして、渋い表情を浮かべる神崎に、今度は彼が質問をした。
『栞ちゃんは今どこにいるんだ? さっきから後ろが煩いんだけど、まさか、篠田運送にいたりしないよね? 』
神崎は電話越しに頷いて、大和に「現在地は篠田運送です」とだけ答える。すると大和は慌てた様子で神崎に言った。
『ちょっ! なんで!? なんでいるの!? 絶対ヤバイから! 怪我する前に直ぐ帰ってきなちゃい! 』
神崎は大和の動揺ぶりにため息をつく。
「無理ですよ、私はいちおう警察ですし。後、変態の助言は聞かない方がいいって私のじっちゃが言ってました」
『じっちゃ、この野郎!! 』
そして、大和を軽く牽制してから、
「とにかく、私は帰りません。ここの騒ぎを静めなくちゃいけませんから」
と自分の立場について説明した。
すると、大和は電話口でため息をついて言う。
『………分かったよ。呼び戻したりはしないから、ちょっとそこで待っててくれ』
神崎はその言葉の意図が分からず、彼に質問した。
「どうしてですか? 」
彼は少し呆れたような口調で、彼女の質問に答える。
『僕も今からそっちに行く。喧嘩はまぁ、からっきしだが………いちおう栞ちゃんより年上だしな。なんかの役には立てるだろうよ』
神崎は彼の言葉に頷いた。
「役に………そうですね、暴動に爆弾を抱いて突っ込むくらいはできますかね」
『あの、僕を積極的に殺そうとすんの止めてくれる? 』
電話が切れる前、最後に聞こえた大和の声は震えていたという。スマホを制服の内ポケットに戻した神崎は篠田に、会話の内容を説明した。
「今から変態がここにストーキングしに来るそうです」
「へんた…………そ、そうか」
まぁ、篠田にはいまいち伝わらなかったのだが。なんとなく空気を察して彼は頷く。神崎は続けて説明した。
「私はこの暴動の首謀者をさがします。これだけの騒ぎなら間違いなく居るでしょう」
相手が大きな新聞社なら、首謀者を探すのは容易ではない。だが、この会社で今まさに起こっている暴動の首謀者を見つけるのは簡単である。それは、どこかで声を大にして群衆に呼び掛けているに違いないから。
銃の弾数をチェックする神崎に、篠田は声をかけた。
「それならコンテナ置き場に行くといいよ。あそこが一番荒れてるから、首謀者が居るとしたらあそこだろう」
すると神崎はそれに頷いてから、
「そうですか。なら、一緒に行きましょう。ここに一人で居るのは危険ですよ」
と彼に提案する。
篠田は彼女の提案にすんなり頷いた。
「それもそうだね。ご一緒させてもらおうか」
《つづく》
<次回予告>
誠二「今回はちゃんと台本を平和的に貰ってきたぞ、だから大丈夫だ、問題ない。
ええと………次回はついに《囁き》と関わる話が登場。誠二と愛助はフラッシュモブを無事に終えることが出来るのか、そして、告白の結果は………って!なんだこれ!?ふざけすぎだろ!」
カンペ『ごめん、次回仕上がってないから、適当にかいちゃった☆』
誠二「死にたいようだな?」
《つづく》




