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訪問者と炎上(以降編集中……)

-16-《訪問者と炎上》


時は少し遡って、拘置所内。


「うぉおおお! 」


愛助に突き飛ばされた警官は、鉄格子に強く頭を叩きつけられ昏倒する。


「………やった、のか? 」


その様子を背後で見ていた誠二は、小さな声をあげた。愛助は彼の疑問に答えるように背を見せたまま頷く。


「多分な」


誠二は安堵した。


「そうか、良かった」


これで危機は去ったはずである。誠二はその心情から、愛助に冗談っぽく笑いかけた。


「その傷、早く医務に見せろよ」


すると愛助は、


「いや、誰のせいだと思ってんだよ」


と同じように笑う。緊張の糸が切れた誠二は、床に勢いよく尻餅をついた。


「全面的にお前のせいだろ」


不思議と流れる和やかな空気。誠二も愛助も、後々の報告など考えず、単純にこの一時の平穏を喜んでいる。


ただ、そう考えるの二人くらいらしく、その時歩いてきた人物はその光景に言葉を失い、目を見開いて、手に持っていた紙を足元に落としてしまった。


「そんな………」


人物の正体は署長直属の部下、見上(みかみ)理恵(りえ)である。しかし動揺は一瞬で、彼女は何歩か後ずさった後、なぜか急に目の色を変えて、誠二達の方へと駆け出した。そして、気がついた誠二が向けた声を無視し、火のついたライターを警官の方へと投げつける。


「あづ、あづぃいい!! 」


突然の事態。気絶していた警官も驚いたように目を覚まして暴れだした。だが、ライターの小さな火は瞬く間に勢いを増して、彼の体を包んでいく。


「なっ!? 」


尋常ではない事態を察知した愛助は、いち早く上着を脱いで、それを警官の身体に何度も叩きつけ、火を消そうとした。

そんな彼の横で、同じく危機を感じた誠二も鉄格子の間から、見上の胸ぐらを掴んで怒鳴る。


「お前、何してんだ! 」


しかし、見上の目は虚ろで、彼女はぽつりぽつり、脈絡の無い言葉をこぼすばかり。


「不祥………給………蔽………」


まるで会話にならない。

そして、誠二は見上の体を前に突き飛ばして愛助に声を掛けようとしたとき、既に警官は丸焦げだった。


(おかしい、こんなに早く火が回るなんて………! )


誠二は理解の追い付かない頭を左右に大きくふるって、放心する愛助に声を飛ばす。


「愛助! そこの鍵束よこせ! 見上を拘束する! 」


愛助は誠二の言葉にハッとして、黒こげの遺体の腰から鍵束を引きちぎり、誠二の方に投げつけた。受け取った誠二はその束の中から自分の檻の鍵を見つけ出し

素早く解錠すると、愛助に、


「愛助、手伝え! 」


と指示をして、ぺたりと床に座り込む見上の腕を掴む。その時、見上が小さな声で呟いた。


「………囁き」


それは先程の脈絡無い単語の続きのようで、どこか違和感のある言葉。しかし、その違和感の理由にたどり着くより前に、今度は愛助が指示をする。


「八代、早くしろ! 」


そうして、見上は男二人がかりでようやく牢の中へと押し込められた。


「まったく、なんだってんだよ………」


苦しそうに息を漏らす愛助の言葉。誠二はそんな彼に問いかける。


「なぁ、愛助。工場爆破は本当にお前《一人》で計画したのか? 」


愛助は目を丸くした。


「………なんでそんなこと聞くんだ? 」


誠二は彼に言う。


「爆破してもお前には得がないし、何より、仕事嫌いのお前が爆弾魔の依頼に来るなんて不自然だろ。誰かにそそのかされたんじゃないか? 」


言われた愛助は目線を落として、質問に答えた。


「………《声》を聞いたんだよ」


「声? 」


誠二は身に覚えがありながらも、彼の言葉を繰り返す。愛助は何かを決心したように頷いて、説明した。


「中々ホームランが打てなくて悩んでたら、変な声に『飛距離が伸びる、いいボールがある』って言われたんだよ。そんで、そのボールは明日手にはいるって………」


深刻そうに息をつく愛助。しかし直後、彼を誠二の拳と大声が襲う。


「いや、そんなんで騙されたのかよ! 真性の馬鹿なのかお前は!? 」


頬を思い切り殴られた愛助は悲痛な叫びをあげた。


「馬鹿ってなによ! あんたにだけは言われたくないのよ! 留年野郎! 」


だがそこに救済はなく、むしろ誠二は愛助の負傷した腹にぐりぐりと拳を押し付けて怒りを露にする。


「なんでメロドラ風!? 俺はお前の元カレでも何でもねぇぞ! 」


愛助は声を更に高くして言った。


「ばっか、ちげーよ! お前はヒロインに一目惚れしたけど彼女に興味を持って貰えず、色々拗らせたストーカーだよ! 」


「なんだその複雑な設定のキャラ!? 」


誠二はそんな愛助からようやく拳を外してため息をつくと、今度は死体だけになった鉄格子の中に目を移す。


「囁き、か」


線路の前で聞いたあの言葉。


『いいのかい? 』


不可思議な声は、何度も頭の中で巡って、ただ消えてくだけだ。すると、そこに愛助の声が響く。


「おい誠二、あいつなんかドロップしてんぞ? 」


彼が指差したのは、見上が最初に立っていた場所の床だ。誠二は言われて、そちらの方に首を動かす。


「え? ドロ品? 捕獲なのに? 」


愛助は落ちていた紙を拾い上げ、内容に目を通すると、驚いたように言った。


「捕獲でも部位狙いとかでドロするゲームなんだろ。つーかこれ、めっちゃレアドロやん」


誠二は言われて愛助の方に駆け寄って、彼の手元を覗き込む。


「まじで? どれくらいレア? 」


愛助は誠二に見えるように紙を動かして誠二の質問に答えた。


「さぁ? SR(エスレア)は下らないんじゃねぇの? 」


そして、目の前に見えた紙を見て、誠二はその意味を理解する。


「…………なるほど」


紙の正体は、洒落た文字で綴られた、《悪魔からの挑戦状》だった。



《つづく》

<次回予告>

神崎「神崎とぉ!」

大和「松崎のぉ!」

神崎&大和「崎々予告のコーナー!」

神崎「さて、今週は料理をしようと思います!」

大和「なんで!?予告は!?」

神崎「はぁい、まずは食材を用意します。材料はご覧の通りです」

大和「無視!? いや!これ音声だから!見えないから!」

神崎「そして、出来上がったものがこちらです!」

大和「しかも料理しねぇのかよ!」

神崎「次回、絶対正義 (?)の英雄忌憚、《必然の暴動》!お楽しみに!」

大和「暴れるだけ暴れて締めたぁ!?」


《つづく》

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