続いてく
-57-《続いてく》
朝。
小鳥が窓を通りすぎた。
「兄貴~遅刻すんぞ~」
洗面所でパジャマのまま歯を磨いていた誠二は顔をしかめる。
「………いい、遅刻したら《こいつら》のせいだ」
後ろでは小春とラキアが口論をしていた。小春は声を荒らげる。
「だーかーら! 算数のプリントは全部終わらせたでしょ! 」
ラキアは笑った。
「ええ? あれでいいのぉ? さっき採点したら2問しか合ってなかったよぉ? 」
下手な更正施設に入れるよりも、自分が目を光らせた方がいいと思って一時預かりをはじめたものの、毎朝この調子である。誠二は口をゆすいで大声で怒鳴った。
「お前ら騒ぐな! 小春はさっさと学校に行け! ラキアは土に還れ! 」
小春はぽつりと呟く。
「いや、一番うるさいのは誠二だよ」
誠二は片手で小春の両頬をつまんだ。
「ああそうだよ、だから俺が騒がないようにお前はいい子にしろ。学校から帰ったら一緒に町内巡回だからな? 」
小春露骨に嫌な顔をするものの、反論はしない。誠二は続ける。
「真っ白、きれいな人間なんてこの世界にはいねぇんだ。だからお前が見回って《悪者》を退治するのは何の矛盾も起こらない」
ラキアはますます笑った。
「そりゃそうだね。むしろ良いことだらけだよよ、じっとしてたらプラスマイナスゼロだけど、これは皆にとってプラスになる可能性が高いんだから」
玄関の方で音がする。
「じゃ、兄貴お先~」
真子が家から出掛けたらしい。
その後、誠二も慌てて制服に着替えて飛び出していった。
二人になった家でラキアは小春に話しかける。
「また酷いことされちゃいそう? 」
小春は頷いた。
「うん、でも、仕方ないんだよね」
すると、ラキアは珍しくため息をついて小春の頭に手を添える。
「仕方なくなんてないよ。悪者は成敗されるべきだ、自分達でそれをやるべきだなんて幻想だよ。学校なんて狭い場所じゃ、君の罪なんて計れない。それに、犯罪者が苦しんだって、被害者の痛みは消えないんだ」
小春は微笑んだ。
「そうかな、だったら、私はどうしたらいいんだろう? 」
ラキアは言う。
「自分が奪ったものと同じだけ、人を助けようとすることだよ。それで、君も他の誰かも救われる」
彼は続けた。
「だから、今は僕が君を守るよ。君が、君や君が苦しめたものと同じく、苦しんでいる人を救えるように」
少女は空を見上げる。
その視線の先には、何処までも青い空が続いていた。
《おしまい》
こんな駄作に最後までお付き合い頂きありがとうございました。楽しんで頂けたでしょうか?つまらなかった?どちらにせよ、読んで感想をもって頂ければ私は嬉しいです。では、またいつか何処かでお会いしましょう。皆様に幸福と正義がありますように。




