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記事vs記事

-55-《記事vs記事》


 大和はこの町ではなく、隣町の新聞社に訴えて、情報を売り込んだ。そして、翌朝にはそれが紙面に並ぶ。


《連続殺人は記事を作るため》


事件記事から人が反応しそうな情報を切り抜いて、大和が作った記事は瞬く間に《夜喰町》にもやってきた。誠二はカフェでそれを開いてうなり声を上げる。


「うぐ、くっそ小さいな! 」


その理由は簡単だ。

これだけ衝撃的な記事であるのに、《夜喰町》ではとてつもなく小さい扱いである。それこそ、目を凝らさないと見えないくらい。


対して、山本の記事は一面を飾っていた。タイトルはこう。


《これが殺人の瞬間だ》


そして、貼られている写真は目を覆いたくなるようなグロテスクなものである。突き刺さるナイフ、飛び散る血液、首を絞められ苦しむ姿。この町の人間が求めているのは、きっとこういう記事なのだ。大和はコーヒーカップの中をティースプーンでかき回す。


「まさか翌日に仕掛けてくるとはな。ここで篠田と神酒の殺人現場を出してきたのは想定外だ。あれは隠し玉だと思ってたんだが」


そんな呟きに答えたのは斜め向かいに座った神崎だった。


「向こうにはこれ以上の特ダネがあるってことですよ。反吐が出ますね」


神崎は粗っぽく自分の前に置かれたイチゴのショートケーキにフォークを刺す。誠二は少し頭を掻いて、言葉の明るさとは裏腹に、暗い表情の大和に言う。


「そうじゃないだろ。あいつらはこれ以上の特ダネを《用意する》んだよ」


その言葉に誠二が目覚めた。


「………やべぇ」


そして、何かを悟ったように部屋の外へと走り出していく。神崎は慌ててその後を追いかけた。


「どこか行くんですか、先輩! 車で送りますよ! 」


誠二は彼女の言葉に頷く。


「ああ、頼む」


歩いて行けない距離ではないが、今は時間が惜しい。二人が乗り込むと、滑り込むように資料を持った大和も車に飛び込んだ。


「おい、どこ行くんだよ! 」


誠二は言う。


「あいつらの特ダネを俺たちのネタにしに行くんだよ」


その目は真っ直ぐに、高台の公園を見つめていた。



高台の公園からは、ビルが立ち並ぶ汚れた町が見下ろせる。丸太を象った角のない手すりから身体を乗り出して、少女はため息をついた。


「《正しい》なんて大嫌い」


彼女の後ろには息を殺して近づく男。

時間制限は迫る。



《つづく》

<次回予告>

誠二「どうしてこの町の連中はグロテスクなのが好きなのかね」

神崎「多分感覚が麻痺してるんですよ。ショッキングな状態を日常的に見てるから、それくらいじゃ満足できないんです」

誠二「まるで麻薬だな」

神崎「そうですね。麻薬だと自覚してない人が多い方が問題だと思いますけど」

誠二「次回、絶対正義の英雄忌憚 《不変と決意》。自覚するのは難しいもんだ、空気で察しろなんて自分勝手な常識が蔓延したこの世界じゃ、誰も間違いを教えてくれないからな」



<つづく>

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