判明する主犯
-54-《判明する主犯》
合流した二人は飲み物の缶を片手に公園のベンチに座って、子供の居ないブランコを眺めている。大和はコーヒーの缶を開いて、誠二に話しかけた。
「八代、似顔絵の男は前島だ。この町の記者クラブの取締役をしている」
誠二は缶のカフェオレに少し口をつけて言う。
「そうか。潰せそうか? 」
大和は缶を自分の横に置くと、両掌を上にして顔の横で持ち上げた。
「さぁな、だが、僕はやるぞ。アイツ以上の記事を出して、アイツを引きずり下ろす」
誠二はそんな大和を笑う。
「いい覚悟じゃないか、ネタならいくらでもあるぜ。腐った警察にはゴミ山だろう場所にな」
大和は置いたコーヒーをまた手にとって、それを一気に飲み干した。
「事件資料か。どうにかしてまともなのを手に入れてくれよ」
すると、誠二は大和の顔を見て言う。
「いや、何言ってんだよ。お前も探すんだよ。つーか、俺に資料探しなんて高等な技術あると思うのか? 」
大和は思わず缶を足元に落とした。
「ごめん、無いと思う」
誠二は鼻を鳴らして大和の落とした缶を拾うと、《缶》とかかれたゴミ箱へと全力投球する。投げられた缶は、迷いなく仲間たちの元へと吸い込まれていった。
「そんじゃ行くぞ。俺が警察からも見切りをつけられる前に」
誠二は頭を掻いて笑う。
大和は薄く笑いながら、ポケットからゴム製の何かを取り出して誠二に渡した。
「じゃあ、カフェオレはちょっとお預けだ。これで蓋しとけ」
誠二は受け取って缶の飲み口側にその蓋を取り付ける。
「悪くなる前に飲めるといいんだけど」
※
資料室。
前に爆破したのとは別の、大型の資料室に大和と誠二は来ていた。が、
「いや、マジ無理、無理だって」
ものの1時間で誠二はこんな台詞しか吐かなくなり脱落した。
きっと資料の量が多すぎたのだろう、うん、そういうことにしておこう。対して大和はその変態さに似合わず、黙々と資料のページをめくっていた。彼は一冊読みきると、
「お前はもう寝てろよ………。」
と誠二の頭をつつく。
どうやら最初から彼を戦力には数えていないようだ。すると、二人が座った机の前方、そこの扉が開いてちょうど神崎が入ってくる。
「あ、松崎さんも来てたんですね。って、先輩が一人で調べものなんて雪が降っちゃいそうだし、当たり前か」
神崎はマイペースに笑って、誠二の隣に座った。大和はそんな彼女には自分が探してきた資料の半分を渡す。
「来てくれて助かるよ。栞ちゃんはこっちを見てくれ」
神崎はそれを受け取って黙々と作業を始めた。しかし、三冊目に取りかかろうとしたとき、中から謎の白い煙が吹き出し、ラキアが飛び出してくる。
「呼ばれてなくても登場っ! 万能捜査システムラキアちゃんでぇす! 」
ラキアは机の上で身体の左側をこちらに向け、左手を右胸に当て、右手で銃の形を作って神崎を指差した。神崎は何度か瞬きをして聞く。
「ラキアちゃん資料探せるの? 」
ラキアは元気に頷いた。
「うん、勿論だよ! 見てて! 」
それから、右手の中指と親指をくっつけて、中指を掌の方へと弾く。ラキアの手からは心地のよい高い音が響いた。
途端に本棚から飛び出してくる大量の資料。資料はラキアの周囲を円を描くように回って、その殆どが元の本棚へと戻っていく。最後に残った三冊ほどをラキアは捕まえて神崎に手渡した。
「はい、これが前田って人が起こした事件の記録だよ! いやぁ、記者って記事の為ならなんでもするんだね! 」
資料に書かれていたのは、それまで彼が書いた記事にした衝撃的な事件。仮面を被った連続殺人犯の記録。
神崎は大和の目を見る。
大和は一瞬驚いたように目を開くが、慌てて首を振った。
《つづく》
<次回予告>
神崎「松崎さんは小説とか好きですか?」
大和「小説はあまり読まないな。メソッド本とかの方が見るよ、どうしてだい?」
神崎「仮面をつけた殺人鬼って聞いたら、小説を思い出しちゃって」
大和「ああ、なるほど。もしかしたら前田は小説好きかもしれないな」
神崎「この人はもっと明るい作品を読んだ方がいい気もしますけどね」
大和「まぁ、それは好みだから」
神崎「次回、絶対正義の英雄忌憚 《記事vs記事》。好みで殺されてたらわけありませんね」
<つづく>




