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大きな敵

-52-《大きな敵》


 あそこで逃がしてしまったのはやはり大きかったようで、山本の手回しは恐ろしいほどに早かった。


「まじかよ」


朝一番、ベッドに座ってテレビをつけた八代は顔をしかめる。テレビに殺人犯の居所として映し出されているのは、紛れもなく大和と自分の自宅。後ろでカーテンを少しだけめくった真子は、寝巻きで歯ブラシを咥えて、またカーテンを閉めた。


「マジっぽいぞ兄貴。外が警察と野次馬で一杯だ。誰をやっちゃったんだ~このやんちゃ坊主め~」


当然、誠二は声を荒らげて窓際の妹に反論する。


「いや、誰も殺ってねぇよ!? つーか人殺しはやんちゃじゃ済まなくね? 」


するとそこに、今度は誠二のスマホに設定された機械音らしい着信音が鳴り響いた。画面に映し出された文字は《変態》、つまりかけてきたのは大和である。大和は開口一番、呑気な声を上げた。


『いやぁ、大変なことになっちゃったねぇ。まさか山本がこんなに早く仕掛けてくるとは予想外予想外、はっはっはっ! 』


誠二はそれが無性に(かん)(さわ)って、怒りのままにマイクを怒鳴り付ける。


「てめぇの特性は能天気か! こっちには家族がいるんだぞ! 巻き込んでんじゃねぇぞ、このハゲ! 」


大和は急に冷静になって誠二に言った。


『生憎だが、僕はフサフサだ。あと、僕にだっていちようプライベートってもんはあるから』


そして、こう続ける。


『………僕としても直接山本に接触したいところだけど、向こうは絶対にネタ元を明かさないし。正面衝突は避けた方がいいと思う。それより、昨日栞ちゃんが見たって男の素性を探る方が現実的だろうな』


どうやら、おふざけでは無いようだ。誠二も怒りを込めた空気を吐き出して、落ち着いた口調でそれに応える。


「分かった。神崎に連絡して、至急、似顔絵を用意してもらう。出来たらそっちに送るから、身元を調べてくれ。心当たりはあるんだろ? 」


大和は「ああ」とだけ答えた。

電話を切った大和は、自分の自宅から少し離れたカフェにいる。彼は設置されたテレビを見上げ、真っ黒なコーヒーを掻き回しながら、呟いた。


「………僕はクラブを敵に回すつもりなんてなかったんだけどな。こうなったら仕方ないか」


彼のスマホの画面に映っているのは、記者クラブのメンバー情報のコピーである。勿論、正当な手段で作られたものではなく、ネットを介した違法コピーだ。大和はその中のある名前をタッチして、情報を開く。


「徹底的に戦おうじゃないか、前島。僕が勿論勝つけどな」


大和はカップの中身を一気に飲み干して代金を机に置くと、足早に店を後にした。



電話をして3時間ほど経った頃、誠二のスマホにメールが届いた。ベッドに寝転がったままそれを確認すると、添付ファイルは男の似顔絵。誠二は電話帳を開いて、神崎に繋く。


「早かったな、助かるよ。今は何処にいるんだ? 」


神崎の背後には犬の鳴き声が聞こえる、もしかしたらドッグカフェか何かにいるのかもしれない。彼女は明るい声で誠二の言葉に答えた。


『似顔絵担当の子がすっごく上手に描いてくれたので、今はその子にケーキをご馳走してるところです。急ぐようなら会計だけしてそっちに向かいますが、どうしますか? 』


誠二は神崎には見えないだろうが、首を横に振って言う。


「いや、いい。わざわざ描いてくれたんだ。ついでに昼食でもつけてやれ、そっちは俺が奢るよ。一万以内な」


神崎は電話の向こうで、似顔絵を描いてくれた子に話しかけた。


『先輩がお昼ご馳走してくれるって!しかも、 一万までOKって言ってたから、焼き肉でも食べに行っちゃお! 』


小さな声でその子の返答も聞こえる。


『え、やった! ラッキー! 一万だったらアイスもセットで食べられるね。美味しいとこ知ってるから食べいこ! 』


誠二は自分の金を失うと言うのに、なんだか二人の会話を聞いて嬉しい気分になった。損をした気分はしない。盛り上がる神崎に誠二は言う。


「金は後払いでいいよな。俺はちょっと用事があるから」


神崎は『良いですよ~』と柔らかな声で答えた。誠二は電話を切って、代わりに映し出された写真に目を落とす。


(大和のあの言い方なら、こいつは記者クラブのメンバーか。それにしては………)


誠二には、その男の顔がどこか恐ろしげに、不自然に思えた。


(酷い悪人面だ)



《つづく》

<次回予告>

誠二「無条件に悪人に見える顔って言うのは間違いなくあるよな。まぁ、それで逮捕したり問い詰めたりはしない主義だが」

神崎「無条件に悪人に見える………先輩のことですね!」

誠二「なんで!?」

神崎「目付きが鋭い。威圧感がある。明らかに動きが喧嘩慣れしてる」

誠二「いやいやいや、俺の身長162よ?平均以下よ?威圧感とかあるわけないじゃん」

神崎「いつも帽子被ってるから悪の組織感が凄いんですよ」

誠二「それ警察の制服っ!」

神崎「次回、絶対正義の英雄忌憚 《ひとりぼっち》。着る人が着ればカッコいいんですけどね。先輩が着るとヤバイ人に見えます」

誠二「理不尽っ!」



<つづく>

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