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偽装と盗聴

-49-《偽装と盗聴》


 会話の直ぐ後、L○NEを待たずして、神崎がやってきた。彼女は手に持った紫色のパッケージがついたグレープジュースのペットボトルを誠二に手渡すと、いつもと変わらない笑みを溢す。


「はい、先輩」


誠二は彼女からを受って、口をつける前に神崎にこれまでの説明をした。


「………ということなんだ。頼めるか? 」


勿論、神崎の返事は期待通りである。


「分かりました、制服に着替えますね」


彼女は素直に頷くと、更衣室に飛び込んで、2分としない内に黒ぶちメガネとピンクの制服姿で現れた。誠二はカウンターの上の壁にかかった時計を気にしてから、神崎に言う。


「店員に聞いたところ注文は俺が来てから3分後に入っている。そろそろ10分だ。不審がられる可能性もあるから気をつけて運んでくれ」


神崎はスタッフがキッチンから運んできた、パフェと赤ワインが注がれているワイングラスを2つずつ乗せたトレンチ(おぼん)を持って頷いた。


「分かってますよ。何かあったら助けて下さいね? 」


誠二は頭を掻いて笑う。


「運動不足の二人組くらい、俺が助けるまでもないと思うけどな。最悪なら蹴り飛ばして構わない」


神崎はそれに笑みを返すと、後ろ姿で片手を振って、白い壁と殆ど同化している扉の方へと歩いていった。



「大変お待たせして申し訳ありません、ご注文は以上でお揃いですか? 」


部屋に入った神崎は、トレンチからグラスとパフェを一つずつ下ろして持ち前の笑顔で森山と連れの男に聞く。森山は神崎の顔には気がついていないようで、満足げに頷いた。


「ああ、これで揃ったよ。ありがとう」


中々に質がいい客である。

神崎はそれにしっかりとお辞儀を返して、部屋を後にした。


出てきた神崎に誠二は聞く。


「ちゃんと仕掛けられたか? 」


神崎は指でOKサインを作って答えた。


「ええ、取っ手の影に仕掛けました。本当は机の裏とかに仕掛けたかったんですけどね。隙がありませんでしたよ」


どうやら、上手くいったようである。

神崎はポケットからイヤホンと小型ラジオのような物を取り出して誠二に渡すと、更衣室の中に消えていった。誠二はラジオにイヤホンを繋いで、早速音を聞く。


『…………が……か…………た、どうにかしてくれ! 』


イヤホンの向こうからは、暫くノイズが聞こえたあと、二人の会話が流れ始めた。真子は誠二に言う。


「お、兄貴盗聴? さっすが不良はやることが違うね」


誠二は人差し指を口の前で立てて真子を黙らせた。盗聴機は今度は別の声でまた会話を流す。


『私になんとかする義務なんてないと思うけど。そっちの額によっては依頼を受けてもいい』


そして、急に立ち上がったような音の後、森山の声。


『何を馬鹿なことを………! お前だって共犯だぞ! お前があの情報を流したんじゃないか! 』


もう一人は答えた。


『私は《情報を流しただけ》だろ。それも、あんた以外はそれを知らない。盗みに入って、殺しと付け火をしたのはお前らだ。私は金も貰ってない』


森山は大きな音を立てて、席に座り直す。


『………分かった。いくら欲しい? 』


相手はまた答えた。


『1000万、それ以下は駄目だ』


森山は一瞬躊躇ってから納得する。


『………わかった支払おう。ただし、約束は果たしてくれ』


会話はそれで途切れ、会話を終えた森山が部屋から出てきた。ただし、会話相手の男は出てこない。


神崎は誠二に聞く。


「私が見てきましょうか? 」


誠二は頷いて、手近にあった使い捨てのおしぼりを一つ神崎に投げた。


「おしぼりを忘れたとか適当な理由つけて覗いてこい」


しかし、おしぼりを受けとった神崎がまた部屋の扉を開くと、


「先輩! 居ません! 」


なぜかそこはもぬけの殻である。誠二は慌てて部屋の壁や床を叩き出した。そして、間もなく見つかる。


「………まじかよ」


カーペットの敷かれていた床には、床下に続く通路があった。



《つづく》

<次回予告>

大和「ようやく刑事ものっぽくなってきたな。そろそろちゃんと推理もするか?」

神崎「それはないでしょうね。ジャンルはファンタジーですし」

大和「ファンタジー要素あんまりない気もするけどね。悪魔も最近出てこないし」

神崎「まぁ、あくまでファンタジー要素はフレーバーですからね。でも、話も終盤ですしそろそろ出てくる頃だと思いますよ」

大和「ジャンル詐欺だねこりゃ」

神崎「でも、ファンタジーじゃなかったらなんてジャンルにするんですか?」

大和「無難に考えればミステリーとか、ヒューマンドラマかな?バトルでも割りとありかもしれない」

神崎「どれも王道刑事ものでも、異能力バトルでもないのが厄介ですよ。推理はしないし、登場人物は少なめだし、バトルなんてほぼ皆無、もうどのジャンルでも詐欺じゃないですか」

大和「難しいなぁ」

神崎「いっそ純文学にでもすれば良かったですかね?何しても許されるイメージがあります」

大和「それはちゃんと書いてらっしゃる方に失礼でしょ!」

神崎「書いてあるだけのジャンルに失礼だと騒ぎ立てる奴は大概相手にする必要の無い奴です。これ、いちおう18禁でもありませんし。目に留まること自体が失礼とはならないはずです」

大和「そういう考えもあるかー。次回、《二人の記者》。じゃ、僕も事件記者として動物の殺処分現状とか取り上げちゃってOK?」

神崎「新聞はよく分からないです」


<つづく>

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