表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/47

追跡

-47-《追跡》


 夜の町、それは昼間よりも少し喧騒の収まった、静かな町。しかし、こんな時間こそ《そういう奴ら》にとっては至福の時間なのだろう。誠二は残された最後の一人、《森山秀樹(もりやまひでき)》を電柱の影から見張っていた。


すると、スマホにL○NEが来る。


『先輩! 飲み物買っていきますけど、ミカンとグレープならどっちがいいですか? 』


誠二は森山から極力目を離さないようにしながら返信した。しかし、それよりコンマ一秒早く、誰かの返信が入る。それはこんな感じ。


『僕はグレープが好き。出来れば濃厚って書いてある方ね』


誠二はなんとなくイラッとしたが、今は見張りの途中だ、そんな場合じゃない。ここは穏便に対処しよう。そう考えていると、神崎のコメントが来た。


『ええと、先輩も松崎さんもグレープでいいですか? 濃厚の方? 』


誠二は慌てて返信する。


『いや、俺はあっさりの方がいい。後、一応ストローもつけてもらって。この状況で直飲みすると目線が外れる』


神崎のコメントは早かった。


『了解です。位置はスマホで共有されてる奴ですよね? 』


これには大和が返信した。


『そうそう。僕の位置、栞ちゃんからちょっと遠いけど、来れる? こっちから移動しようか? 』


神崎はこれにこう返答する。


『いいえ大丈夫ですよ。一応エレベーターもありますし』


誠二は確認していないが、どうやら大和はビルの屋上か何かにいるらしい。会話が途切れると、今度はこんなコメントが大和から来た。


『八代、動いたぞ! 追いかけられそうか? 可能なら追いかけてくれ、こっちからは見えない位置に行きそうだ。不可能なら僕が移動する』


誠二は素早く返信する。


『問題ない、追いかける。お前はそこで待機してろ』


大和からは美少女系のキャラクタースタンプで「OK」と送られてきた。

相変わらずふざけた奴だが、指示はまともである。それから、ちょっと思うのは、


(あいつ、返信めっちゃ早いけど、ちゃんと見張ってるのな)


画面を凝視してそうな速度で送ってくるのに、自分以上に大和が相手をよく見ているということ。流石はストーカーが本業の男だ。誠二は追跡対象が店に入ったところで、折角なのでその理由を聞いてみる。


『お前返信早いよな。どうやって見張ってるんだ? 』


大和からの返信はやっぱり早かった。


『追跡対象からはかなり距離があるからな、来たコメントは自動読み上げさせてイヤホンで聞いてる。返信はブラインドタッチでやるし画面を見る必要もない。ちゃんと見張ってるぞ』


流石はプロ、慣れというのは恐ろしいものである。誠二は尊敬なのか呆れなのかよく分からないため息を漏らして、服装を正すと、店に潜入した。



店の中は若者が多いバーのようで、誠二は目を見張る。


「森山は、こんなとこに一体何しに来てんだ? 若者漁り? 」


ここがとても50代後半の森山に似つかわしい場所とは思えない。むしろ、誠二でさえここにいるのが気まずいくらいだ。男達はピアスだらけだし、女のスカートは下着が見えそうな位に短い。本当に不良どもが集まる場のようである。誠二もそれなりに荒れた人生を送ってきたが、こういう場所に縁がある程じゃない。


「早く森山を見つけよう………」


誠二は頭を抱えた。

すると次の瞬間、後ろから訪れる衝撃、と遅れて飛んでくる怒鳴り声。

誠二は反射的に後ろを振り向く。誠二の背後にはガラの悪そうな屈強な男が立っていた。


「おい、あんちゃん、ここはおめぇみたいな地味野郎が来るとこじゃねぇぞ? 分かってんのか? あん? 」


誠二はため息をつく。


「空気に合ってないのは重々分かってるよ。だが、こっちも仕事なんでね。邪魔するなら腕ずくで黙らせるぞ」


彼の瞳には再び獣が宿っていた。

踏んできた場数なら、そんじょそこらの不良には負けない。勿論、続けてきた訓練だって。その自信が彼を気だるげな警官から、危険な大熊へと変える。男は一瞬怖じ気づいたように後ずさるが、周りの目を気にするように周囲を見渡すと、再び足を前へと踏み出した。


一瞬のラグ。


二人は衝突する。


大男が相手でも関係ない、柔術はその為にある技だ。誠二は体格で負けている相手を、その技術で冷たい床へと叩きつけた。


「次はどいつだ? 」


それから、恐ろしい瞳を周囲に向ける。

それだけで、先程まで喧嘩腰だった不良たちの血の気は急速に引いていった。


そんな最中、人混みの向こうから、誠二を呼ぶ声がする。


「おーい、兄貴ぃ! 」



《つづく》

<次回予告>

大和「やったぜぇ!僕大活躍!」

誠二「そうかそうか、偉いな」

神崎「良かったですね」

大和「………え!?なんで普通に誉められてんの!?どういうこと!?」

誠二「お前が頑張ったから」

神崎「頑張りましたからね」

大和「ええーー!?どうしよう素直に受け取れないっ!」

誠二「ひねくれものは損をするぞ、素直に誉められておけ。つーかいちよう前回もお礼言ったよな?」

神崎「言ってた気がします」

大和「そういえばそうか。次回、《裏にあるもの》。言葉の深読みは駄目だな」


<つづく>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ