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壊れる想い

-43-《壊れる想い》


 朝一番、目覚ましよりも早く電話が鳴った。無理矢理に起こされた誠二は寝ぼけ眼で受話器を手に取る。


「はい、もしもし、八代ですが」


そして、こんな時間に連絡なんて、おそらく相手は知り合いだろうとたかを括っていた誠二は驚いた。電話の主は知らない男だったのである。彼は誠二に聞いた。


『すみません、八代誠二さんですか? 』


誠二は少し戸惑いながら、彼の質問に答える。


「はい、そうです。八代です。どちら様ですか? 」


通話相手は安心したように息を吐くと、簡単に名乗った。


『私は木下警部の部下の野田です。警部から貴方に伝えてくれと言われて、代わりにお電話させて頂きました』


誠二はその言葉に嫌な顔をする。


「あいつ、直接掛けてくればいいものを、部下にやらせるとは………」


しかし、野田は慌ててその言葉を遮った。


『い、いえ! そういうことではないんです! 警部は今入院されていて、電話をする訳にはいかないんですよ』


どうやら、向こうにも事情があるらしい。誠二は仕方なく野田に聞いた。


「何を伝えるように言われたんだ? 」


野田はそれに少し安堵したように息をついて、説明する。


『《大切な証拠品を壊された。済まなかった》って言ってました。ただ、それだけです』


部下も内容事態はよく知らないようだ。誠二は野田に感謝する。


「そうか、伝えてくれてありがとう。こっちからも伝言だ。《気にすんな》って言っといてくれ」


野田は「わかりました」とだけ言って、電話を切った。誠二は受話器を元に戻してため息をつく。


「………やられたな」


誠二はすぐにTシャツとジーパンに着替えて、朝食も食べずに家を後にした。



「神崎! 」


裁判所には既に神崎の姿がある。誠二には、彼女も野田からの連絡を受けたのだと直ぐに分かった。誠二の姿を見つけて、神崎も彼に声を掛ける。


「先輩、どうしましょう! 賢人くんは誰かに襲われちゃうし、外で裁判するための証拠も無くなっちゃいました」


誠二は渋い顔をした。


「どうしようも無いだろう。ここじゃどんな証拠も揉み消される」


神崎は顔を蒼白にする。


「じゃあ、諦めるしか………!? 」


誠二は首を振った。


「俺は捕まったって、裁かれたって諦めるつもりなんかない。そんなのムカつくからな」


そして、言う。


「だから、今回は負けておけ。その後は俺がなんとかする」


神崎は拳を固めて頷いた。



負け試合だと分かっていても、形を守るために裁判が始まる。主張なんて誰も聞いてはいない。神崎の知り合いである裁判官も、ここではどうにもできない。だって、判決は決まっているんだから。


誠二も神崎も、男泣きする救急隊員と共に、なりゆきをただ見守った。


しかし、


警備員が立っていて開かないはずの扉が勢いよく開かれる。そこから現れたのは、顔をマスクで隠した二人組の男だ。

彼らのうちの1人は、天井に向けて銃を撃つ。


「おやおや神酒さん、お支払がまだですよ。それとも、これっぽっちで終わりとでも思ったんですか? 」


人々は騒然とした。

勿論、その中で一番動揺していたのは、神酒であったが。彼は叫ぶ。


「約束の額は払っただろう! 契約は果たされたはずだ! 」


すると、マスクの男は神酒の肩に向けて銃弾を発射した。誠二は反射的に庇おうと走り寄ったが、間に合わない。神酒の立派なスーツを、彼自身の血が汚す。


「くっ! 」


銃を持った男は、マスクの下が笑顔であると明らかにわかる声で言った。


「契約ね、俺たちはそんなもんにカチカチ縛られないんだよ。なぜってほら、みてみろ、どうみたって俺たちの方が強いじゃないか」


小春は高い声で喚く。


「お父さん! 」


銃の次の標的は小春だ。誠二はそれを察知して走った。今度は間に合うように、誰も傷つかないように。そして、熱い銃弾が腹を貫く。


「くそっ! 」


いくら誠二でも、拳銃を持った二人組、それも、あれだけ扱いに馴れている二人に素手では敵わない。


二人組は小春に当たらなかったことを残念がるように舌打ちをしてから、こう要求した。


「死ねば保険金は俺たちに下ろしてくれるって店の奴らも言ってるぜ。大人しくこっちに来い、神酒」


誠二は迷う。

怪我をして顔を歪める神酒を見て、殆ど無意識に思ってしまったからだ。


(自業自得だ)


今まで散々人を虫けらのように殺してきた人間を守ることが正義なのか? 自分の命を捨ててまで?


彼は迷っていた。


自分が前に出て無謀でも戦って時間を稼ぐか、それとも。


神酒を見殺しにするか………。


(俺は………)



《つづく》

<次回予告>

誠二「ラスボスって大概二段構えだよな。倒したと思ったら、《ふふ、私はまだ50%の力しか出してなかったのさ》とか言って復活すんの」

神崎「確かによくあるパターンですよね。倒せそうだったのに悔しいっ!てなります」

誠二「神酒は何段構えなんだろうなぁ?」

神崎「二段であると信じたいですね」

誠二「次回、絶対正義の英雄忌憚《我欲の天秤》。もしかして5段構えくらいあるんじゃ………?」

神崎「不吉なこと言わないでくださいよ!?」


<つづく>

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