殺しの証拠
-42-《殺しの証拠》
寧々さんの家の玄関を開けると、そこには神崎と賢人の姿があった。神崎は急に開いた扉に驚きつつも、中から出てきた誠二の目を見つめる。誠二は神崎に言った。
「今から駅に移動する。神崎も来るよな? 」
理由説明が十分とはとても言えないが、それでも、神崎は何かを納得したように誠二の言葉に頷く。
「分かりました。行こう、賢人くん」
賢人は戸惑いから生まれる間の後、神崎の言葉に頷いた。
※
警察署の最寄りにある駅は、駅員も3人ほどしかいない小さな駅である。もう少し歩けば大きな駅もあるが、誠二は明が書き残した《駅》がこちらの駅だと確信していた。誠二はポケットから鍵を取り出して、200と掠れた白い文字で書かれた緑のロッカーの鍵穴に刺す。
かちゃり、小さな音が響いた。
神崎と賢人は開いたロッカーの中を覗き込んだ。するとそこには、
「DVD、なのか? 」
透明の袋に入っただけで放置された一枚のDVD。賢人はそれを直ぐに取り出して、二人に声を掛ける。
「俺の荷物の中にパソコンがある。それで見てみよう」
三人は車に移動した。
彼らはぎゅうぎゅう詰めで後部座席に座って、何かを引っ掻くような不快な音で呻くパソコンの画面に注目する。
暫くの後、液晶に映像が流れ始めた。ただ、それはなんの変哲もない、町中の防犯カメラ映像である。一時間、二時間、なに事もなく時間が経過していく。誠二は表情を曇らせた。
「なにかあると期待したんだがな」
しかし、次の瞬間、それは来る。
すれ違う男女、女の方は力なく倒れた。賢人はその女の顔を見て、唖然とする。
「この女、臼井白音だ! 」
誠二は男の方に注目した。
「こいつ、神酒じゃないか! 」
それは紛れもなく、殺人の確固たる証拠である。しかも、この町ではなく、隣町で起きた事件だ。明がなぜこんな映像を持っていたのかは分からない、でも、誠二は撮影日を見て、苦い顔をする。
「映像の日付は………12年前………」
明がどういう人間なのか、誠二も神崎もよく知っていた。いくら明確な証拠があっても、明ならすぐに神酒を警察に突きだしたりしないはずだ。彼ならきっと。
賢人は映像に釘付けになっている二人に声を掛ける。
「この映像があれば、外で裁判が出来る。俺が上に相談して訴えよう、これが通ればうちの未解決事件もなくなる」
誠二は頷いた。
「ああ、頼む」
※
車が自宅の前を通りすぎていく。
神崎も賢人も帰ってしまった。
「理不尽は、許される。分かってるさ、分かってるよ。明さん」
久々に戸棚から引きずり出した写真。
そこには、誰も敵とみなさない、憧れの警察官の姿がある。誠二が見つめると、ちいさな紙の上に閉じ込められた彼は、今も変わらぬ笑顔を誠二に向けた。
「でも俺は気にくわない。だから、理不尽を、終わらせるんだ」
ただ、何処かから聞こえた声は言う。
『そういう君も、理不尽じゃないか』
誠二には声の主が分かっていた。
《つづく》
<次回予告>
誠二「これで決着がつくといいんだが」
神崎「どうでしょうね。未来は私たちには分かりません」
誠二「そうだな、未来を予測する能力があったら株を買いまくってるよ」
神崎「うーん、私はどうしようかな?未来が見えても特に変わらない気もするんですよね」
誠二「まぁ、見てしまった時点で運命じゃなくなるって考えもあるしな。買ってみたら大損ってこともありうるかもな」
神崎「だったら私はきっと見ないことを選びますね。それで、きっと良いことがあるって信じます」
誠二「未来は明るい?」
神崎「勿論ですよ」
誠二「次回、絶対正義の英雄忌憚《壊れる想い》。俺にはそうは見えないけどな」
<つづく>




